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第1話
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それから2時間かけて到着したのは、海からほど近い森のなかにあるカレー屋である。
タクシーの料金メーターを見ると、既に2万円近い。
鶴田は絶望的な気分だった。もちろんそんな金は持ち合わせていないのである。
「どうするよ。このまま店から出てくるのを待つかい?」
「あ、ああ……それで、お願いします」
「それで、追ってる奴らは何者なんだ?」
「ええと……まあその、詐欺師かな?」
「オレオレ詐欺か! そいつは許せねえ。この前、婆ちゃんが騙されたばかりなんだ。おい、俺がやつらをとっ捕まえてきてやるっ!!」
「そ、それだけは、やめて……」
拳を振り上げ今にもタクシーから降りようとする運転手を、鶴田は必死に引き留めた。
その後、カレー屋を出た東雲たちは、海へ行ったり水族館へ行ったり。
まる一日の間、タクシーはずっと追跡を続けたのである。
夕方になって、ふたりが海鮮丼屋に入ると、鶴田は美希に電話を入れた。
「東雲は、いまどこ!? なんでもっとまめに連絡しないのよっ!!」
電話が繋がるなり、いきなり怒鳴りつけてくる。
はあ~なんでワタシは、いつも女に怒られてるんですかね~。
「す、すみません……海に来てます。これから、ホテルに行くんじゃないかと」
「海ねっ! なら、向かうのはサウスオーシャンホテルに間違いないっ!」
「なんで、わかるんですか?」
「だって、前に東雲が私を連れて行ったところだもの! 部屋は、最上階のプレミアムオーシャンスイートよ! とにかくこれからクルマぶっ飛ばしてそっちに向かうから、ホテルで待ってて!」
「そ、それで、あのう……ひとつお願いがありまして」
「なによ!」
「タクシー代が5万円を超えちゃいまして……手持ちがないんで代わりに払ってもらえませんか?」
「断るっ!」
唐突に電話は切れて、鶴田は呆然とする。
ふと、運転手が振り返って、鶴田を鬼のような目で睨み付けた。
「おいっ。話を聞いてたけど、おまえカネ持ってないんだって!?」
「いや、その……」
「どうするつもりなんだ! こらあっ!!」
鶴田は慌ててポケットを探る。
すると、怪しげな外人に千円で買わされた、テファニーの指輪が出てきた。
必死の思いで、それを運転手に震える手で差し出す。
「こ、これでどうでしょう……おそらく10万円くらいの値打ちはあると思いますが……」
運転手は乱雑に指輪を奪い取ると、それをじっと見つめた。
「ふん、テファニーか。コレ、ホンモノなんだろうな!」
「も、もちろんですとも」
「嫁が前から欲しがっていたやつだ。しょうがねえ、これで手を打ってやるか」
世の中、なにが役に立つかわからないものである。
やがて、海鮮丼屋を出た東雲のクルマは、美希の予想通りにサウスオーシャンホテルへと向かった。
ふたりがホテルへと入って行ったあと暫くして……美希のクルマが到着。
「どんなクソ女か、見届けてやるっ!」
クルマから降りるなり美希はそう怒鳴り、般若の如き目つきでホテルを見上げた。
それから2時間かけて到着したのは、海からほど近い森のなかにあるカレー屋である。
タクシーの料金メーターを見ると、既に2万円近い。
鶴田は絶望的な気分だった。もちろんそんな金は持ち合わせていないのである。
「どうするよ。このまま店から出てくるのを待つかい?」
「あ、ああ……それで、お願いします」
「それで、追ってる奴らは何者なんだ?」
「ええと……まあその、詐欺師かな?」
「オレオレ詐欺か! そいつは許せねえ。この前、婆ちゃんが騙されたばかりなんだ。おい、俺がやつらをとっ捕まえてきてやるっ!!」
「そ、それだけは、やめて……」
拳を振り上げ今にもタクシーから降りようとする運転手を、鶴田は必死に引き留めた。
その後、カレー屋を出た東雲たちは、海へ行ったり水族館へ行ったり。
まる一日の間、タクシーはずっと追跡を続けたのである。
夕方になって、ふたりが海鮮丼屋に入ると、鶴田は美希に電話を入れた。
「東雲は、いまどこ!? なんでもっとまめに連絡しないのよっ!!」
電話が繋がるなり、いきなり怒鳴りつけてくる。
はあ~なんでワタシは、いつも女に怒られてるんですかね~。
「す、すみません……海に来てます。これから、ホテルに行くんじゃないかと」
「海ねっ! なら、向かうのはサウスオーシャンホテルに間違いないっ!」
「なんで、わかるんですか?」
「だって、前に東雲が私を連れて行ったところだもの! 部屋は、最上階のプレミアムオーシャンスイートよ! とにかくこれからクルマぶっ飛ばしてそっちに向かうから、ホテルで待ってて!」
「そ、それで、あのう……ひとつお願いがありまして」
「なによ!」
「タクシー代が5万円を超えちゃいまして……手持ちがないんで代わりに払ってもらえませんか?」
「断るっ!」
唐突に電話は切れて、鶴田は呆然とする。
ふと、運転手が振り返って、鶴田を鬼のような目で睨み付けた。
「おいっ。話を聞いてたけど、おまえカネ持ってないんだって!?」
「いや、その……」
「どうするつもりなんだ! こらあっ!!」
鶴田は慌ててポケットを探る。
すると、怪しげな外人に千円で買わされた、テファニーの指輪が出てきた。
必死の思いで、それを運転手に震える手で差し出す。
「こ、これでどうでしょう……おそらく10万円くらいの値打ちはあると思いますが……」
運転手は乱雑に指輪を奪い取ると、それをじっと見つめた。
「ふん、テファニーか。コレ、ホンモノなんだろうな!」
「も、もちろんですとも」
「嫁が前から欲しがっていたやつだ。しょうがねえ、これで手を打ってやるか」
世の中、なにが役に立つかわからないものである。
やがて、海鮮丼屋を出た東雲のクルマは、美希の予想通りにサウスオーシャンホテルへと向かった。
ふたりがホテルへと入って行ったあと暫くして……美希のクルマが到着。
「どんなクソ女か、見届けてやるっ!」
クルマから降りるなり美希はそう怒鳴り、般若の如き目つきでホテルを見上げた。
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