ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

文字の大きさ
60 / 114
第1話

15

しおりを挟む
あれ……わたし、寝ちゃってた?

ぼんやりとした頭で、彩はうとうとと夢心地である。
ああ、朝日が眩しい。会社行かなきゃ……。

ん?
なんだかベッドがいつもより広く感じるな~。シーツもこんなにパリッとしてたっけ。

うーんと伸びをすると、手が何かに当たった。
それは、なんだか柔らかい感触。まるで人のからだのような……。
えっ……これって……!

急にはっと目が覚めて、上体を起こした。
そこは見知らぬホテルの一室である。
そして彩の隣で体を丸めて眠っているのは……竹下くん!?

慌てて彩は、竹下の体を力ずくで無理矢理引き起こす。
そして、両肩をつかんで、その体を激しくゆさゆさと揺らした。

「た、竹下くん!!」

揺らすたびに、竹下の頭は前後にがくがくする。
それでやっと、目を覚ましたようだ。

「ほにゃ? あれ、杉崎しゃん……ろうしましたか……?」

だめだ。
夜の魔法が解けて、すっかりいつもの竹下くんである。

「ななななんでっ! 私、竹下くんとホテルにいるのお~!?」

彩の悲痛な叫びにも、竹下は眠そうに目をごしごしとこすっている。

「昨夜のこと、覚えてないんれすか?」

彩は必死に記憶を探った。

ええと、竹下くんに誘われてオリーブの森へ行って……。
話をしているうちに、なんだかテンションが上がってしまい……。

ああ、それで。竹下くんに勧められるがままに、我を忘れて食べ始めたんだっけ。
おそらく、メニューに載ってる料理の全てを食べ尽くした気がする。
無意識に食べているうちに、いつものように幽体離脱をしてしまい……その後はまるで記憶がない。

「彩しゃん、フォークを手にしたまま急に電池が切れたように、動かなくなっれしまったんれす。それで仕方がないから、僕が担いれ近くのホテルに運びこんだんれすよ」
「マ、マジで……!」
「運ぶの、めっちゃ大変れした。からだじゅう、筋肉痛れす」
「そ、それは申し訳なかったけど、そんなことよりっ!!」

彩はテンパって、自分のからだに目を向ける。
うん、ちゃんと服は着ている。竹下くんもだ。
だけどさ……!

「……竹下くん、わたしたち、何もなかったよね!?」





その頃───。

アズサは顔をしかめて頭を押さえながら、ベッドから起き上がった。

あーあ。また飲み過ぎちゃった。頭がずきずきする。
あれ、なんで私、ハダカなんだろう。
てか、ここはどこ。ホテル?

辺りを見渡して……ぎくっとした。
ベッドの隣に、東雲が寝ていたのである。しかも彼もハダカのままで。

「ちょ、ちょっと! 起きて!!」

その金切り声に、東雲はうーんと唸りながら顔をしかめる。

「ほらっ、ちゃんと目を覚ましなさいってばっ!!」

肩を揺すると東雲は、はっとしたように飛び起きた。

「えっ!!」

お互い素っ裸のまま、ベッドの上で正座して呆然と顔を見合わせるふたりだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...