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第1話
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◇
息を切らせながら彩が総務部の扉を開けると、部屋はけたたましい電話のベルの音で溢れていた。
「す、杉崎しゃん……!」
竹下が驚いたような、そして泣きそうな目で彩を見つめる。
彩は、入口に仁王立ちすると、声を張り上げた。
「話はあとよ! 竹下くん、どんな状況なの!?」
「各部署きゃらクレームの電話が殺到しれいれ、いったいどうしゅればいいか……」
「じゃあ、部長と竹下くんで電話対応をお願いするね。データは2時間で復旧すると伝えてちょうだい!」
「に、2時間て……しょんなの、絶対無理れすよ……」
「いえ、やるからっ!」
彩は分厚いバインダーを手に取ると、自分のデスクにつかつかと歩み寄る。
そして椅子に座るやいなや、鬼の形相となって猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた───。
*
「お、終わった……」
彩は血走った目でモニターを見つめたまま、安堵の声を漏らした。
かかった時間は、ぴったり2時間。
自ら明言した約束を果たしたのである。
「おお、杉崎くん! ありがとう!」
「杉崎しゃん、すごいれす!」
彩の後ろで、固唾を飲んで作業を見守っていた部長と竹下が拍手を贈る。
ふっと気が抜けると同時に、猛烈な空腹感が襲ってきた。
「ちょっと、お手洗いに行ってきます」
彩は大量のあんぱんが詰め込まれたポーチを手にすると、あたふたと立ち上がる。
ドアを開けてがらんとした廊下に出ると、急に達成感が波のように押し寄せてきた。
同時に、久々に猛烈な勢いで頭を働かせたせいなのか、いろんな感情が頭の中で混ざり合った結果、いつしか全てのパズルがぴたりと収まっていた。
これからどうするべきか、わかった気がする。
それは、とっても爽快な気分だった。
「よしっ!」
ガッツポーズして、いつものように給湯室へあんぱんを食べに行こうとすると、後ろから声を掛けられた。
「杉崎しゃん!」
振り返ると廊下に、おどおどした様子の竹下が立ちすくんでいる。
「なに? 竹下くん」
「こ、この前は、すみましぇんでした! みなしゃんの前で嘘をついてしゅまって……」
そう。
ホテルで竹下くんが私と一晩中愛し合ったなどといったせいで、その場の空気が凍り付き、翔さんもアズサもそそくさと帰ってしまったのだ。
ふたりとも、それっきりである。
「まあ、もういいよ」
「……れも、杉崎しゃんが好きな気持ちは変わりましぇん! しょれらけは、わかってくらしゃい!」
竹下は真剣な表情で、必死に声を絞り出す。
うん。竹下くんの気持ちは十分伝わっているよ。
「こ、今度にょ休日、一緒にどこか行きましぇんか?……例えば、遊園地とか……」
「遊園地かあ。もう何年も行ってないな」
「だめでしょうか……」
顔を曇らせる竹下に、彩はにっこりと微笑みかけた。
「行こうよ、遊園地。楽しみだね」
息を切らせながら彩が総務部の扉を開けると、部屋はけたたましい電話のベルの音で溢れていた。
「す、杉崎しゃん……!」
竹下が驚いたような、そして泣きそうな目で彩を見つめる。
彩は、入口に仁王立ちすると、声を張り上げた。
「話はあとよ! 竹下くん、どんな状況なの!?」
「各部署きゃらクレームの電話が殺到しれいれ、いったいどうしゅればいいか……」
「じゃあ、部長と竹下くんで電話対応をお願いするね。データは2時間で復旧すると伝えてちょうだい!」
「に、2時間て……しょんなの、絶対無理れすよ……」
「いえ、やるからっ!」
彩は分厚いバインダーを手に取ると、自分のデスクにつかつかと歩み寄る。
そして椅子に座るやいなや、鬼の形相となって猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた───。
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「お、終わった……」
彩は血走った目でモニターを見つめたまま、安堵の声を漏らした。
かかった時間は、ぴったり2時間。
自ら明言した約束を果たしたのである。
「おお、杉崎くん! ありがとう!」
「杉崎しゃん、すごいれす!」
彩の後ろで、固唾を飲んで作業を見守っていた部長と竹下が拍手を贈る。
ふっと気が抜けると同時に、猛烈な空腹感が襲ってきた。
「ちょっと、お手洗いに行ってきます」
彩は大量のあんぱんが詰め込まれたポーチを手にすると、あたふたと立ち上がる。
ドアを開けてがらんとした廊下に出ると、急に達成感が波のように押し寄せてきた。
同時に、久々に猛烈な勢いで頭を働かせたせいなのか、いろんな感情が頭の中で混ざり合った結果、いつしか全てのパズルがぴたりと収まっていた。
これからどうするべきか、わかった気がする。
それは、とっても爽快な気分だった。
「よしっ!」
ガッツポーズして、いつものように給湯室へあんぱんを食べに行こうとすると、後ろから声を掛けられた。
「杉崎しゃん!」
振り返ると廊下に、おどおどした様子の竹下が立ちすくんでいる。
「なに? 竹下くん」
「こ、この前は、すみましぇんでした! みなしゃんの前で嘘をついてしゅまって……」
そう。
ホテルで竹下くんが私と一晩中愛し合ったなどといったせいで、その場の空気が凍り付き、翔さんもアズサもそそくさと帰ってしまったのだ。
ふたりとも、それっきりである。
「まあ、もういいよ」
「……れも、杉崎しゃんが好きな気持ちは変わりましぇん! しょれらけは、わかってくらしゃい!」
竹下は真剣な表情で、必死に声を絞り出す。
うん。竹下くんの気持ちは十分伝わっているよ。
「こ、今度にょ休日、一緒にどこか行きましぇんか?……例えば、遊園地とか……」
「遊園地かあ。もう何年も行ってないな」
「だめでしょうか……」
顔を曇らせる竹下に、彩はにっこりと微笑みかけた。
「行こうよ、遊園地。楽しみだね」
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