ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第2話

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「はい、もしもし」
『どうだ、様子は』

聞こえてきたのは、令子のだみ声である。

「ええと。とりあえず冥府さんとは合流しました」
『そうか。で、これからどこへ向かうんだ』
「それがどうにも思い付かなくて。かあちゃん、デートって何をすればいいんでしたっけ」
『バカだな、おまえは。映画館とか美術館とかいろいろあるだろうが』
「二千円で入れますか?」

現在の亀吉の全財産は、二千円である。

『無理だな。だったら喫茶店でも行ったらどうだ』
「喫茶店ですね、わかりました」
『いいか、なるべく危険な場所には近づくな。例えばビル建設中の工事現場とかだ。鉄骨が落ちてくるかもしれんぞ』
「はあ。気をつけます」

通話を切ると、亀吉は改めて背筋が寒くなった。
そう、あたりに念入りに注意を払うのだ。いつどこでどんな死の危機が降りかかるかわからないのである。

と、突然。
亀吉の目前に男がぬっと顔を寄せた。

「ひえっ!!」
「シャッチョーサン、ヒサシブリネ」

見ると、これまで何度も偽造品(亀吉本人は気づいていないが)を買わされた、東南アジア系の若い男である。

「な、なんだ君か。びっくりして心臓発作で死ぬかと思ったぞ」
「ホシイモノ、ナイカ?」
「い、いや。今は特にない。強いて言えば、身の安全を図るモノだが……」
「ナラ、オマモリ、アルヨ」

そう言って男は、人目を憚るように自分の上着をそっとはだけて鶴田に見せる。
すると上着の内側には、全国各地のお寺や神社のお守りが吊されていた。

「こ、これは……! 伊勢神宮に出雲大社、有名どころばかりじゃないか。い、いくらだ?」
「ゼンブアワセテ、センエンデイイヨ」

1000円か……安いな。
確かに怪しげなオットセイ神のカチューシャでは心もとない。
ここは神や仏のパワーを結集して、守ってもらうしかないであろう。

「よし、買った」
「マイド~」

亀吉が金を払うと、怪しげな男はすぐさまお守りを手渡し、あっという間にその場から立ち去って行った。

手の上に山のように盛られたお守りを、亀吉が改めて見やると……。
そこに書かれていたのは、どれも「安産御守」の4文字。

「ち、違うんだ……」

ひとり頭を掻きむしる亀吉だった。

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