ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第2話

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その時、再び亀吉のガラケーが鳴り響く。
亀吉はあたふたと、ガラケーを耳に当てながら大量のお守りをポケットに押し込んだ。

「はい、もしもし」
「どうだ、なんか起きたかい?」

再び令子からである。

「いや……さっきの電話からまだ10分も経ってませんが……」
「だからなんだ。こっちは気になって仕方がないんだよ!」

前の電話といい、令子の口調がいつもと違うことに、鈍感な亀吉もさすがに気がついた。
あれ、これって……。

「かあちゃん、も、もしかして俺のことを心配してくれてます?」

いっとき、令子は黙りこくる。
だが、すぐにがなり声を上げた。それはすっかりいつもの令子である。

「バ、バカ言ってんじゃねえよっ! てめえのことなんざ、これっぽちも心配してないさ! 死神女の呪いが本当かどうか早く知りたいだけなんだよ、こっちは!」
「は、はあ……」

やっぱり、そうですよね~。
ちょっとでもかあちゃんの愛を感じてしまった私が間抜けでした~。

「いいか、よく聞け」
「はい……」
「その女と一緒にいて何も起きないってのは、死神がデートだと認識してない可能性がある」
「はあ」
「だから、もっとデートらしく振る舞うんだ」
「デートらしく……ってのは、どうするんでしょうか?」

亀吉はふと、菊奈を見やった。
菊奈は路上に落ちていた安産のお守りを拾い上げると、それをじっと見つめている。
すると、亀吉の脳裏にとある禁断のイメージが湧き起こった。

安産、つまり、そういった行為。
まさか……ホテルに行くとかですか!?

「このアホンダラっ!! なに良からぬ想像してるんだいっ!!」

令子の怒声で、はっと我に帰る。

「か、かあちゃん、いつから人の心が読めるように……」
「ふん、おまえの浅はかな考えは全てお見通しなんだよっ! いいか、冗談はそのど間抜けな顔だけにしとけっ!」
「す、すいません……!」

ガラケーに向かって、ペコペコと頭を下げる亀吉である。

「話を戻して……どうやってデートらしく振る舞いましょうか?」
「そうだな。とりあえず手でも繋いでみろ」
「は、はあ。わかりました。でも、冥府さん、こんなオヤジと手なんか繋いでくれますでしょうか?」
「知るかい!!」

電話が切れると、仕方なく亀吉はおずおずと菊奈に話しかけた。
滝のように流れた汗のせいで、その顔はまるで風呂上りのようである。

「め、冥府さん……デートなんで、手なんか繋いでもらえちゃったり……しますでしょうか……」

菊奈は、沈んだ表情を全く変えずに亀吉を見つめた。
その顔は改めて見てもやっぱり美形で、そのまっすぐな視線にどきどきしてしまう。

「……わかりました。いいですよ」

意外にも、菊奈は躊躇なく白く小さな手をすっと差し出した。
亀吉は慌てて汗だくの手をズボンでごしごし拭くと、ぶるぶる震えながら菊奈の手をそっと握りしめる。

ああ……柔らかい。そして、なんて冷たいんでしょう……。

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