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第2話
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「鶴田さん、いつまで歩くのでしょうか?」
菊奈が少し不安げに、ぽつりと話しかけてくる。
駅で合流してから、すでに1時間近く街の中をうろうろと歩き回っていた。
亀吉といえば、あたりに細心の注意を払い、緊張のピークがずっと続いた状態ゆえに時間の感覚すら失っている。
いつ何時、目の前に刃物を手にした狂人が現れたり、暴力団の抗争に巻き込まれて流れ弾が飛んできたりするかもしれないですから。
そうそう、突然カラスの群れに襲われたりすることだって、絶対ないとも言えません。
奴らは雑食ですからね。私の脳みそだって食うでしょう。ああ、いやだ。
とにかく一刻も早く喫茶店に入りたい。
喫茶店なら、そうそう危険に遭うことも無いでしょうに。
その一心だったが、繁華街をいくら歩いてもどこにも見当たらない。
「……いえ、ずっと喫茶店を探してるんですが」
「あの、スタパやターリーズとか、何軒も通り過ぎましたけど……」
「それって、なんでしょう?」
おしゃれなカフェなど、亀吉が知るはずもなかった。
時代遅れの亀吉が探しているのは、いかにも昭和な純喫茶である。
だが今の時代、そんな店は稀だった。
「あ、あそこにコマダがありますよ?」
「はあ、コマダって喫茶店なんでしょうか」
「ええ、有名なチェーン店ですけど」
チェーンと聞いて、店内で鎖(チェーン)をあたり構わずぶん回すイカれた男のイメージが湧き起こり、亀吉は思わず身震いした。
すべてが、マイナス思考へと繋がっていく。
だけど、死神に狙われている可能性がある以上、それはやむを得ないことであった。
ともあれ、二人はコマダに向かったのである。
ーーその様子を、少し離れた場所からじっと見つめる怪しげな男がいたことを、亀吉が知るはずもない。
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