ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第2話

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令子は顔を歪ませた。

「おい、そりゃなんだ」
「なにって、お見舞いのお花ですが……」
「菊は死人に手向ける花だろうが。こいつはまだ生きてるぞ」
「すみません……私、菊の花が好きでしたので……」

菊奈はうなだれながらも、持っていた花瓶をどうすればいいかわからず、ひとまず亀吉のベッドの上の棚に置く。
すると突然、一斉に全ての菊の花がポトポト落ちて、枕に散らばった。

「ひいいいっ! なんて不吉なんでしょう!!」

亀吉は悲鳴をあげて飛び上がる。

「がたがた騒ぐな! それはそうと。冥府さん、あんたに聞きたいことがある」

令子は鋭い目で菊奈を睨むと、タバコの煙をぷかーと吐き出した。
菊奈はそのどっしりとした威圧感に、おどおどと身をすくめる。

「なんでしょうか……?」
「デート中は何事もなかったのに、最後の最後となって突然厄災に襲われた。どういう弾みでこうなったのか、それを聞きたい」

すると菊奈は、気まずそうに目を伏せた。

「……それはたぶん、あの時、私が鶴田さんに好意を抱いたからだと思います」
「こんなドアホに、好意だと!?」
「はい……デート中は全く意識することもなかったのですが、最後、落ち込んでいる私に素敵な言葉を投げかけてくれて……それで、鶴田さんのことがなんだか好きになっちゃって……」

そこにいた菊奈を除く全員が、ぽかんとした。
亀吉がこんな美女に好かれるなんて、クジラが空を飛ぶくらいありえないことである。
凍りついた空気を察した菊奈は、あわてて手を振った。

「違います違います! もちろん本当に好きになったわけじゃないです。ほんの一瞬、そういった気持ちが湧いたいうか。今では鶴田さんに、これっぽちの感情もありません!」

令子はふん、と鼻を鳴らす。

「当然だ。こんなショボくれた脳なしジジイが好かれる要素なんざひとつもないわ!」
「今思うと、そうですね」

令子と菊奈がお互いに頷くのを見て、どこか亀吉はやるせない気持ちになる。
まあそれは、そうですけどもね……はっきり言われると傷つきますよ、俺だって。

「とにかくだ。今の話を聞いて、わかったことがある」

令子は、亀吉や留三、そして菊奈をぎろりと見渡した。

「この女は間違いなく呪われている。死神女なのは間違いない。好意を抱いた相手を、死に至らせるんだ」

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