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第2話
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しおりを挟む「嫌いな人と、お見合いするってことでしょうか?」
「そうだ。おまえに残された道はそれしかない」
「は、はあ……」
令子の強烈な威圧感に、菊奈はすっかり押されていた。
もはや思考回路がダウンしていると言ってもおかしくない。
「それで、嫌いなタイプは?」
「と、特に……結婚して幸せにしてくれるならお相手は、誰でもいいんですが……」
「結婚に幸せなんぞ求めんな! 留三が言った通り、そんなもん好きな相手だって結婚すればいずれ愛情とともに消えちまうさ!」
横でやりとりを聞いていた亀吉は愕然とする。
あの、かあちゃん……ここに俺がいるんですけど。
俺のことなんざ、もうかあちゃんにとっては虫ケラ以下ってことなんでしょうかねえ~。
うすうす感じてはいましたけど。そりゃあ俺だって傷つきますよ……。
「好きじゃ無くても結婚してみろ。そうすりゃあ、おまえの求める幸せの扉が見つかることだってあるかもしれん。だが、ここで諦めたらそんな扉は一生開かねえ。まずは一歩、足を踏み出すことだ」
至極名言ぽいけど、なんか違うんじゃないかと亀吉は首を捻る。
だが菊奈は、なんとなく納得したように頷いた。
「わかりました……苦手なタイプは、ええっと……あえて言えば、すごく自己中な人はちょっと」
「つまり、俺様系ってことか」
「そうです、ね……」
令子は腕を組んで天井を見上げ、なにやら考えに耽った。
いつもの奸計タイムである。
本気で親身になって結婚相手を探そうとしているわけがない。ただ、会員を増やすために成婚の実績を作りたいだけなのだ。
やがて令子は、頭を振って首をポキポキ鳴らすと、視線をゆっくりと菊奈に戻した。
そうして、新しいタバコを一本手に取ると火をつけて、ぷかーと煙を吐き出す。
何度も言うが、ここは病室である。
「……ひとり、心当たりがある」
「はあ」
「最近、アメリカから帰ってきた近所の八百屋の倅だ」
「アメリカで、何をなさっていたのですか?」
「いきなりハリウッドスターになるって日本を飛び出したのはいいが、全くの泣かず飛ばずさ。もともとがダメ人間なんだよ、あいつは。思い立ったらすぐ行動するが、努力は全くしやしねえ。そのくせプライドだけは人一番高くて全てを見下す。極端な俺様系のどうしようもないクズだ」
「最低じゃないですか……」
「だからいいんじゃないか。お前が好きになるはずがない。だからそいつも死なずに結婚できる可能性がある」
令子は有無を言わせぬ眼力で、引き気味の菊奈を睨みつけた。
「とにかくだ。そいつとまずは見合いしろ」
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