ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第2話

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「おい。なんで今日の昼飯も、サバの味噌煮なんだい?」

ちゃぶ台に置かれた皿を一目見るなり、令子は亀吉を睨みつける。
向かい側に座った亀吉は、おろおろしながら答えた。

「き、近所のスーパーで、賞味期限切れのサバの味噌煮缶詰が、50缶1000円で売ってましたので」
「50缶だと!? じゃあ、これからずーっと飯のおかずはサバの味噌煮かい!!」
「だってかあちゃん、ホントにお金がないんですよ……」

令子はちっと舌打ちすると、不満そうにサバの味噌煮に箸を付けた。
ちなみに三毛猫もサバの味噌煮を食べている。いいんだろうか、それで。

「……ところで、おまえ」
「はい、なんでしょう」
「冥府が高宮と交際を始めて、もう3週間だ。どんな具合なんだ、あいつらは」

それは亀吉も、とても気になっていた。
何度か菊奈に連絡したが、なぜか言葉を濁すばかり。

「いえ……どうなんでしょうねえ……」
「バカかおまえはっ!! もっとしっかり監視しろっての!!」

令子が箸を亀吉に突きつけたとたん、箸の先にくっついていたサバの味噌煮の切れ端が飛んで、亀吉の額にぴたっと貼りついた。

「……まあ、高宮の身に何も起きていないから、当初の計画通りに進んでいるとも言える。つまり、冥府が好きじゃなくても着実に結婚へと向かいつつあるわけだ」
「そう、なんでしょうか……」
「このまま行けば、うちもついに成婚実績ができるはず」
「はあ」
「おまえ、冥府の気が変わらないうちに、とっととあいつらを結婚させちまえ!」

その時、応接室で扉の開く音がした。

「あっ、客ですね」

亀吉は慌てて立ち上がると、即座にパジャマからスーツへと着替える。
その間、わずか30秒。さすがにもう、慣れたものである。

応接室への扉を開けると、そこにはいかつい顔をしたスーツ姿の中年男が立っていた。
見たことのない顔だ。

「い、いらっしゃいませ」

挨拶すると、男は鋭い目で亀吉を見つめた。

「あなたが、ヤケクソ結婚相談所の鶴田さん?」
「は、はい。そうですが」
「私、はっぴい株式会社管理本部の岸田と申します」

差し出された名刺には、確かにそう書かれてある。
岸田宗理きしだそうり、役職は部長だ。
亀吉は、部長とか偉い人にはめっぽう弱い。
頭をぺこぺこと下げた。

「は、はっぴいの部長様ともあろう方が、なんでこんなとこまで……」
「しかし、ここは。とても結婚相談所とは思えませんなあ」

岸田は、汚く狭い部屋を見渡すと顔をしかめた。

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