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第2話
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しおりを挟む数日後。
秋の始まりを告げるような、爽やかな青空が広がるその日。
ヤケクソ結婚相談所に、菊奈が訪れていた。
「……そうだったんですか」
令子から事の顛末を告げられた菊奈は、信じられないといった表情で目を丸くさせた。
そんな菊奈の様子を見て、令子は苦虫を噛み潰したような顔となる。
「おまえは、すっかり騙されていたんだ。最初っから呪われてなんかいなかったんだよ。バカバカしい」
「でも……仲良くなった友達は、みんな怪我をしたり病気になったり……」
「そりゃ、たまたまそうなっただけだろ。大抵のやつは生きてりゃ病気や怪我に見舞われるさ。あたしだって、ずっと腰が悪いし、亀吉に至っては、そもそも頭が悪い」
ぽかんとしながら、私は頭の病気なんでしょうか?と尋ねる亀吉のその頭を、令子は思いっきり引っ叩いた。
「では、これまで付き合った方が、みんな行方不明になったのは?」
「おまえ、男慣れしてないだろう」
「は、はい」
「そりゃあな、バカ男どもに単に遊ばれただけだよ! 世間知らずのおまえを騙して遊んだ挙句、とっととトンズラしたのさ!」
「そんな……」
「思い出してみろ。消えたのは一度寝た後だったんじゃねえか?」
そう令子に言われて、菊奈ははっとしたようだ。
「……全く。バカな子だねえ、呪いを信じたばっかりに」
「す、すみません……」
どうやら令子の推察は確かのようであった。
だが亀吉は、いまだ納得しきれていない。
「でも、かあちゃん……私は冥府さんとデートした時は、本当に死にかけたんですよ?」
「そりゃあ単に、もともとおまえに運がないだけだろ」
「はあ、そうですか……」
そう答えながらも、どうも合点がいかないと亀吉は首を捻る。
「そんなことより、これから高宮とどうするんだ?」
「はい……ふたりでじっくり話し合っていこうと思います」
「いやいや。じっくりされたら、こちらも困るんだけどね!」
早く成婚実績が欲しい令子は、苛立った表情を浮かべた。
だが脇で、亀吉はうんうんと頷く。
「それが良いと思いますよ。結婚なんて急げばいいってもんじゃありませんからね。あとで後悔しないように、まずはおふたりでじっくりと愛を育みましょう。じゃないと、私みたいに……」
言いかけて、亀吉ははっとする。
恐る恐る令子の顔色を伺うと、意外にもその表情がすっかりと消えていた。
まるで能面のようである。だが亀吉は知っていた。
かあちゃんがこんな顔をする時は、かつてないほどの怒りを秘めていることに。
「おいっ。私みたいに、なんだって?」
「いいいいえ、ななななんでもないです……」
「そのど頭かち割って、腐ったキムチみたいな脳ミソを猫に食わせてやろうか!!」
令子が拳を振り上げたその時、とっさに菊奈が叫んだ。
「おふたりとも、喧嘩はやめて!」
その直後。
突然、応接室の蛍光灯がぱちんと激しい音を立てて割れ、あたり一面にガラスの破片が降り注いだのである。
しばし呆然とする、令子と亀吉。
固まったまま令子がぼそっと呟いた。
「……まあ、ちっとは呪われているのかもしれん」
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