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世界が秋色に染まろうとあの人は空で遊んでいる。

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俺の名は眩魏(くらぎ)。中学1年生の学生だ。身長は百七十センチと少し高めで、黒縁メガネを愛用しているごくごく普通の学生だ。親には、
「文化部でもいいけど運動部の方がもっといいな~(チラっ)それもマイナーな物じゃなくてメジャーなの(チラっ)。」
と、運動部でかつメジャーな部活を強調して紹介された。しかし
「父さん、母さんすんません‥‥!」
文化部なのはまだしも、どちらかといえばマイナーでしかも部室が無印イナ○レの部室と同等のボロさの部室を持ち、さらに俺の通う学校、兎温(とおん)中学校の全生徒から、軽蔑の目で見られる兎温中学校クラシックギター部に入部しようとしているのだから!
「懺悔してもしかたない!ここまできたんや!よし、いくぞ~!!」
…とは言ったものの、やはり足が進まない。
(クソ…ここまできて何で足が進まない!あのおじさんのような演奏が出来るようになるためじゃねえか!)
そう、眩魏は憧れていたのだ。ギターの老人に、そうだなるんだ。そう決心すると自然に肩の荷が下りたような何ともいえない解放感に見まわれた。
「そこで何しているんだい!そこの君!」
「うおぁ!」
急に声をかけられ、びっくりして変な声を出してしまった眩魏は、顔全体を赤く染めてゆっくり振り返った。そこには、
自分よりも五センチ程小さく、目に子供のような無邪気さを宿らせた青年が、眩魏を指差していた。
「えっと…『そこの君!』とは僕の事ですか?」
「そうだよ!そこの君だよ!てかそこの君の他に誰がいるんだい!?」
言われてみればそうだ。ここに眩魏以外の人など居ない。
「そうか!成る程そういうことか!」
「何が!?」
「ふっふん!隠しても無駄だよ!俺の眼は全てを見通せる『邪眼』だもの!」
「邪眼ってなに!?なにこれ俺、今とんでもなく面倒くさい展開になってるんやけど!誰か、誰でも良いからこの状態の打開策を教えてくれ!!!!!」
「どうして君はそんなにブチブチブチブチ言ってるんだい?君はアナウンサー志望かい?」
と、眩魏よりも高い声で早口に、一回も噛まずに言ってのけた。
「だったらここじゃなくてアナウンサー部にいるわ!てかそんな事言うあんたの方がアナウンサーに向いてるわ!」
「そんなことどうでもいい!取り敢えず君はこのクラシックギター部に入部しようとしているのだね?」
「何でわかったんや?!」
「ふっふん!なんせ私は『邪g…」
「その話さっきも聞いたんやけど!」
相手の話は最後まで聞くのが礼儀。しかし、こんな事なら別にいいよね!?
「取り敢えず自己紹介といこう!」
「唐突だな!」
「俺の名前は『秋空遊(あきぞら ゆう)』クラシックギター部の2年生だよ~!」
「へ?」
(こんな事ってあるんだ…)
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