7 / 20
海外旅行は大変だ
しおりを挟む
赤い絨毯に、アンティーク物であろう机。壁には、アメリカ海軍の軍艦や、空母の写真の写真が掛けてあった。ちなみにクーラーはギンギンだ。
全く、どこの国もお偉いさんはこんな部屋にしたいのか?と内心疑ってしまう。そう思わせるような部屋に、俺と永久保はいた。
「は、はろー!」
俺がガクガクで言ったカタコト英語を聞いて、これまたふかふかな社長椅子に腰掛けたおっちゃん…司令官のハリソンが笑った。
「は、は、は!そう緊張しなくて大丈夫だから」
「あら、日本語がお上手なんですね」
「なーに。海上自衛隊の方々がよく来るからいつの間にか覚えていたよ」
と、永久保を軽くあしらった。この老人、デキる!
「ともあれ、ご苦労様だったな。とても暑い場所だが、ゆっくりしていってくれ」
「はい、そうさせていただきますね」
「失礼しました」
ガシャン!と、重そうな扉を閉めた後だった。扉の向こうでひそひそと声が聞こえた。
『…良い青年じゃないか。それでも貴女は辞めさせたいのですか?Ms.…』
「ほら、早くして!」
「おお、すまんすまん!」
永久保に急かされて、恐らく、俺にとって大事な話を聞き逃した。
「すげー!」
超弩級に大きなハンバーガーが、そこにはあった。
「本当、大きいね!」
短めの白のスカートに、これまた白の半袖の上に青のパーカーと言う汚れたら大変そうな服を着ている柳原も目をキラキラさせている。
「けど、こんなデカいの食ってたら太るだろうな~。ただでさえ運動が少ない海上勤務なのに…」
『うぅ…』
柳原が呻いた。…あれ、俺失礼な事言った?!
扉の件の翌日、俺達はオワフ島のセブン、なんたら、バーガーという店に来ている。というのも、今日は燃料補給を補給艦ましゅうからしてもらう予定なので、殆ど何もしなくてよくなり、自分達に出来る事は何かと尋ねた時に、
『だったら、遊んできなよ!うん!学生の本業は遊ぶ事だからな!』
と、ましゅうの艦長に言われて今にいたる。発表すると、瞬時にみんなどっかに行ったのがちょっとショックだった。
「しかし、どうやって食うんだろうな」
アメリカンサイズのハンバーガーは、それこそうちの高校の誇る戦艦水戸型の艦橋をそのまま縮めたような大きさだった。
「うん、ナイフもフォークも無いしね」
二人して辺りをキョロキョロと見回す。本場の食べ方を学ぶためだ。
「…。いや多種多様すぎるだろ!」
かぶりつく人、ナイフとフォークで切って分ける人など、まさに多種多様だ。
「…どうする?」
「どうするったって、ジャパニーズな方法で行くしかねえだろ!」
そう言って、俺は両手でガッ!とハンバーガーを掴み、口元へと運んだ。
「いただきます!」
大きな口を開け、かぶりついた。この後、本場の人に笑われながら食べ方を教わったのは言うまでもない。
後ろをつけられている。気づいたのはさっきのハンバーガー屋の時だった。変な白髪のおばさん。どこかで会った気がするが、気のせいだろう。
「ガオガオ!」
目の前に変なお面をつけた変な幼なじみが現れた。
「…はぁ」
「ガオ…がお…がお?」
「はやく戻してこい。あそこの店のだろ?」
「…はーい」
ショボーンとしながら柳原はてくてくと棚にお面を戻しに行った。
「…さて、そこにいるのは誰だ?話でもあんのか?あるんだったら出てこいよ。俺、こう見えても聞き上手だぜ?」
そう言うと、まず先に視線がなくなり、次に気配がなくなった。本当になんだったんだろうか。
「どうしたの?」
柳原が心配そうな目で俺を見ていた。
「いや、なんでもない。で、なんだ?」
「あのね、あそこのパンケーキ屋さんが気になるんだけど…」
といって指を指した店から、生クリームたっぷりのパンケーキを持った客が出て来た。
「まだ食うのか!?お前本当に太るぞ!?」
うぅ…とまた呻いた。どうやら少し気にしているらしい。
「だ、大丈夫だよ…その分こうやった歩いてるし!」
「えらい強きだな。感心感心」
「もう!からかわないでよ!いいから行きましょう!両舷強速赤黒なーし!針路、あのパンケーキ屋さんへ、よーそろー!」
と言って俺の手を引いて駆けた。
結局、初めての海外旅行はグルメに埋め尽くされて終わった。
朝早くに俺は甲板にいた。理由はベットに置いてあった手紙だった。
『0500に後甲板に来なさい』
カツカツカツと鉄板を歩く音が辺りに響く。後甲板に着くとそこに人がいた。
「不思議なものね。航大(こうだい)の乗っていた船もこの船と同じ物らしいわね。確か泡雪(あわゆき)だったかしら?」
白髪で、少し老けた…俺の後ろをつけてきたおばさんが振り向いた。
「どうして兄ちゃんの名前を知ってんだ?」
「あら、私の事忘れたの?まぁ、仕方ないわね。あの時以来だもの」
はぁ、と大きくため息をついた。
「私の名前は菜月真夏(まなつ)。いや、今は岡部真夏かしら?どっちでもいいわ。あなたのお母さんであるのは変わらないし」
…今この女はなんて言ったんだ?
「おいおい、嘘だろう?」
「嘘じゃないわ。あなたを連れ戻しに来たのよ」
そのためにハワイに来たらしい。そこまでして俺を連れ戻したいのか。
確かに、親に何も言わず、ましてや葬式の日に飛び出して戻って来なかった…つまり二人の息子がいなくなったのだ。それなりに心に傷を負うだろうし、連れ戻したくもなる。
しかし、俺にだってやりたいことはあるんだ!
「いや、俺は戻らないね。俺はこの職に就きたい。海を守るこの仕事が、したい!兄ちゃんが死んで、俺が飛び出して。確かにその事は謝るよ。けど、それとこれとは別だ!俺はお前についていかない。俺は兄ちゃんみたいな事にならない!約束する!だから、俺は帰らない」
気がつけば涙がこぼれていた。
「まぁまぁ、そこまでにしなさい」
パンパンと手を叩いて来たのは、ハリソンだった。
「!ハリソン」
母さんは驚いた顔をしていた。
「これでわかったでしょう?Ms.マナツ。彼の意志は尊重されるべき未来へ向けた物だ。その未来に伸びる『芽』を摘み取ってなんとする。君は彼の未来へ伸びる芽を育てるのが役割だ。違うかい?」
ギギギと奥歯が擦れる嫌な音が聞こえた。
母さんは、始めこそは怒りや悲しみの表情を浮かべていたが、やがてハリソンの言葉が効いたのか、諦めたような顔を浮かべた。
「…海人」
喉から必死に絞り出された声は、しっかりと俺の耳に届いた。
「たまには家に帰りなさい。ご飯作っとくから」
「ご飯でつられるほどもう子供じゃないよ」
そういうと、母さんは笑った。あの時以来の笑顔は、悲しそうなそれでいて嬉しそうだった。
「そうね。けど、本当に帰ってきてね」
「あぁ、帰るよ」
その言葉を聞くと、母さんは真っ直ぐ進んで艦を後にした。
長崎の田舎に、俺の実家はあった。
コンコンと扉を叩いてみる。
『はーい』
と言う声が家の中から聞こえてきた。
アメリカから帰ってすぐだったから迷惑かなとも思ったが、ここで来なければ、多分来ないだろうと思った。
「…いらっしゃい」
「おう」
ぎこちなく、俺は返事をした。
全く、どこの国もお偉いさんはこんな部屋にしたいのか?と内心疑ってしまう。そう思わせるような部屋に、俺と永久保はいた。
「は、はろー!」
俺がガクガクで言ったカタコト英語を聞いて、これまたふかふかな社長椅子に腰掛けたおっちゃん…司令官のハリソンが笑った。
「は、は、は!そう緊張しなくて大丈夫だから」
「あら、日本語がお上手なんですね」
「なーに。海上自衛隊の方々がよく来るからいつの間にか覚えていたよ」
と、永久保を軽くあしらった。この老人、デキる!
「ともあれ、ご苦労様だったな。とても暑い場所だが、ゆっくりしていってくれ」
「はい、そうさせていただきますね」
「失礼しました」
ガシャン!と、重そうな扉を閉めた後だった。扉の向こうでひそひそと声が聞こえた。
『…良い青年じゃないか。それでも貴女は辞めさせたいのですか?Ms.…』
「ほら、早くして!」
「おお、すまんすまん!」
永久保に急かされて、恐らく、俺にとって大事な話を聞き逃した。
「すげー!」
超弩級に大きなハンバーガーが、そこにはあった。
「本当、大きいね!」
短めの白のスカートに、これまた白の半袖の上に青のパーカーと言う汚れたら大変そうな服を着ている柳原も目をキラキラさせている。
「けど、こんなデカいの食ってたら太るだろうな~。ただでさえ運動が少ない海上勤務なのに…」
『うぅ…』
柳原が呻いた。…あれ、俺失礼な事言った?!
扉の件の翌日、俺達はオワフ島のセブン、なんたら、バーガーという店に来ている。というのも、今日は燃料補給を補給艦ましゅうからしてもらう予定なので、殆ど何もしなくてよくなり、自分達に出来る事は何かと尋ねた時に、
『だったら、遊んできなよ!うん!学生の本業は遊ぶ事だからな!』
と、ましゅうの艦長に言われて今にいたる。発表すると、瞬時にみんなどっかに行ったのがちょっとショックだった。
「しかし、どうやって食うんだろうな」
アメリカンサイズのハンバーガーは、それこそうちの高校の誇る戦艦水戸型の艦橋をそのまま縮めたような大きさだった。
「うん、ナイフもフォークも無いしね」
二人して辺りをキョロキョロと見回す。本場の食べ方を学ぶためだ。
「…。いや多種多様すぎるだろ!」
かぶりつく人、ナイフとフォークで切って分ける人など、まさに多種多様だ。
「…どうする?」
「どうするったって、ジャパニーズな方法で行くしかねえだろ!」
そう言って、俺は両手でガッ!とハンバーガーを掴み、口元へと運んだ。
「いただきます!」
大きな口を開け、かぶりついた。この後、本場の人に笑われながら食べ方を教わったのは言うまでもない。
後ろをつけられている。気づいたのはさっきのハンバーガー屋の時だった。変な白髪のおばさん。どこかで会った気がするが、気のせいだろう。
「ガオガオ!」
目の前に変なお面をつけた変な幼なじみが現れた。
「…はぁ」
「ガオ…がお…がお?」
「はやく戻してこい。あそこの店のだろ?」
「…はーい」
ショボーンとしながら柳原はてくてくと棚にお面を戻しに行った。
「…さて、そこにいるのは誰だ?話でもあんのか?あるんだったら出てこいよ。俺、こう見えても聞き上手だぜ?」
そう言うと、まず先に視線がなくなり、次に気配がなくなった。本当になんだったんだろうか。
「どうしたの?」
柳原が心配そうな目で俺を見ていた。
「いや、なんでもない。で、なんだ?」
「あのね、あそこのパンケーキ屋さんが気になるんだけど…」
といって指を指した店から、生クリームたっぷりのパンケーキを持った客が出て来た。
「まだ食うのか!?お前本当に太るぞ!?」
うぅ…とまた呻いた。どうやら少し気にしているらしい。
「だ、大丈夫だよ…その分こうやった歩いてるし!」
「えらい強きだな。感心感心」
「もう!からかわないでよ!いいから行きましょう!両舷強速赤黒なーし!針路、あのパンケーキ屋さんへ、よーそろー!」
と言って俺の手を引いて駆けた。
結局、初めての海外旅行はグルメに埋め尽くされて終わった。
朝早くに俺は甲板にいた。理由はベットに置いてあった手紙だった。
『0500に後甲板に来なさい』
カツカツカツと鉄板を歩く音が辺りに響く。後甲板に着くとそこに人がいた。
「不思議なものね。航大(こうだい)の乗っていた船もこの船と同じ物らしいわね。確か泡雪(あわゆき)だったかしら?」
白髪で、少し老けた…俺の後ろをつけてきたおばさんが振り向いた。
「どうして兄ちゃんの名前を知ってんだ?」
「あら、私の事忘れたの?まぁ、仕方ないわね。あの時以来だもの」
はぁ、と大きくため息をついた。
「私の名前は菜月真夏(まなつ)。いや、今は岡部真夏かしら?どっちでもいいわ。あなたのお母さんであるのは変わらないし」
…今この女はなんて言ったんだ?
「おいおい、嘘だろう?」
「嘘じゃないわ。あなたを連れ戻しに来たのよ」
そのためにハワイに来たらしい。そこまでして俺を連れ戻したいのか。
確かに、親に何も言わず、ましてや葬式の日に飛び出して戻って来なかった…つまり二人の息子がいなくなったのだ。それなりに心に傷を負うだろうし、連れ戻したくもなる。
しかし、俺にだってやりたいことはあるんだ!
「いや、俺は戻らないね。俺はこの職に就きたい。海を守るこの仕事が、したい!兄ちゃんが死んで、俺が飛び出して。確かにその事は謝るよ。けど、それとこれとは別だ!俺はお前についていかない。俺は兄ちゃんみたいな事にならない!約束する!だから、俺は帰らない」
気がつけば涙がこぼれていた。
「まぁまぁ、そこまでにしなさい」
パンパンと手を叩いて来たのは、ハリソンだった。
「!ハリソン」
母さんは驚いた顔をしていた。
「これでわかったでしょう?Ms.マナツ。彼の意志は尊重されるべき未来へ向けた物だ。その未来に伸びる『芽』を摘み取ってなんとする。君は彼の未来へ伸びる芽を育てるのが役割だ。違うかい?」
ギギギと奥歯が擦れる嫌な音が聞こえた。
母さんは、始めこそは怒りや悲しみの表情を浮かべていたが、やがてハリソンの言葉が効いたのか、諦めたような顔を浮かべた。
「…海人」
喉から必死に絞り出された声は、しっかりと俺の耳に届いた。
「たまには家に帰りなさい。ご飯作っとくから」
「ご飯でつられるほどもう子供じゃないよ」
そういうと、母さんは笑った。あの時以来の笑顔は、悲しそうなそれでいて嬉しそうだった。
「そうね。けど、本当に帰ってきてね」
「あぁ、帰るよ」
その言葉を聞くと、母さんは真っ直ぐ進んで艦を後にした。
長崎の田舎に、俺の実家はあった。
コンコンと扉を叩いてみる。
『はーい』
と言う声が家の中から聞こえてきた。
アメリカから帰ってすぐだったから迷惑かなとも思ったが、ここで来なければ、多分来ないだろうと思った。
「…いらっしゃい」
「おう」
ぎこちなく、俺は返事をした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる