海洋高校駆逐艦、『瑞雪』艦内報告!

たらしゅー放送局

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帽振れ帽やってみたい。そう思う日々

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 イスタンブールから出航し、俺達は最後の寄港地、シンガポールへと向かっていた。
「艦長、ソマリア沖に入りました」
と警戒感マックスで永久保が伝えてきた。
 ソマリア沖と言えば、今も昔も海賊が有名だ。今でも海上自衛隊が海賊対処に奮闘している。そんな危険海域を通行しているので、永久保が緊張するのも無理はない。
「ん、りょーかい」
 それでも俺はいつもの調子で言った。
「ちょっと。少しは警戒してくださいよ!」
と檄を飛ばす。
「そんな事言われてもねぇ。うちの船、海上保安庁の人乗せてないから逮捕とかも出来ないし。向こうから攻撃されたからってこちらから簡単に手も出せない。つまり八方塞がりなんだよ」
 と永久保を諭した。横に未来の海上保安官がいるが、あくまで『未来』の話だ。逮捕出来る権限はない。と思う。
「けど…」
「けどじゃない。まぁ、確かに危ないっちゃ危ないな。見張り員、対艦見張りを厳となせ!」
『了解!』
 と俺とは違い、はきはきした返事を松井は返してくれた。
「しかしまぁ、」
と俺は窓の外を見た。
 海賊船と思われる船はどこにも見当たらない。前は海保の船の白色、それ以外は海の青ばかり。たまにちらっと貨物船や、石油を運ぶための船が見える程度だった。
「海ってなんで青いのか知ってるか?」
 暇すぎて意味不明な問題を出した。
「知りませんよ、そんな事」
 とうとう諦めたのか、素っ気なく永久保は言った。
「うーん、底が深いから?」
と柳原は真剣に考えている。
「海水が青の光だけを跳ね返しやすいからだろ?」
 川村も考えてくれていた。
「せーかい」
 といかにも暇そうに俺は言った。事実、暇だし。
 そんな海を見ていると、前方から見えにくいが灰色の船が見えてきた。地味に艦橋に白いはんぺんみたいなのがついている。
 SPY-1レーダー。つまりイージス艦の目の役割をするレーダーだ。どこの国の艦かが解らない以上、少し警戒したい所だ。
 松井から国籍不明の艦の報告が来たのはそう思った瞬間だった。
『前方、反航に国籍不明の艦を視認!』
「了解」
 どんどんとお互いに近づいて行くうちに、舷側に白い数字が見えた。
『艦番号視認!173』
 と、言われても国籍が分からないと何かが分からない。
『艦長、こじまから通信です。反航の艦船は海上自衛隊の『こんごう』だと判明!』
 と尾賀の声が伝声管を震わせた。
「了解」
 といって、俺は双眼鏡を覗いた。
 確かに艦首には日の丸がはためいていた。
「海賊対処か。まぁ、あの艦にとってはいい最期の思い出作りになるだろうな」
「?どういう事ですか?」
 と俺の言葉に永久保が首を傾げる。
「知らなかったのか?こんごうは来年の春に引退するんだ」
 えぇ!と艦橋内に驚きの声があがった。どうやら、知っていたのは俺だけらしい。
 …なんだろう。この背徳感。
「出航前にニュースでやってたぞ?」
「そうなんですか…」
 と一気に艦橋がお通夜ムードになった。
 いくら違う組織とは言え、海上自衛隊も海上保安庁も海上護衛隊もやっていることは日本の領海の防衛であることには違いない。
 その任務についていた、いわば先輩が引退すると言うことだ。なんというか、少し寂しく思ってしまう。
「さぁ、お通夜ムードは終わりにしてだ。見張り員、セーラーの船は見えるか?」
『セーラーの船ですか?えぇっと…。あ、確認しました!後方に一隻護衛しています』
「了解。艦名とかわかる?」
『そうですね…わかりした!地球型駆逐艦、地球です!』
 地球型駆逐艦とは、陽炎型駆逐艦の設計図を元にして造られた駆逐艦だ。全国海洋高校実力合戦の時に瑞雪を引いてくれた太球、水球も地球型駆逐艦の姉妹艦だったりする。
「よっしゃ、手の空いてる奴らは全員左舷の通路へ!登舷礼よーい!」
 だだだだだ、とラッタルを駆け上がる声が伝声管から聞こえてくる。やがて左舷の通路にずらーっとセーラー服姿の男女が並んだ。
「航海員、UWの信号旗を上げてくれ。それと発光信号も!」
『了解!』
「地球、後少しで横切ります!」
「よし、総員、敬礼!」
 と言った直後だった。
『こちら地球艦長、米津です。瑞雪の皆さん、元気ですか~!』
 とメガホンで声をかけられた。
『長い船旅ご苦労様です!残す寄港地もあと一つらしいですね!我々も護衛頑張るので皆さんも頑張ってください!』
 というアナウンスの後、地球の左舷に人が集まってきて、敬礼をしてくれた。
『あ、そうそう』
とすれ違ったあたりでもう一度アナウンスが入った。
『シンガポールの飯はめっちゃうまいぞー!あと部隊配属の時に土産話待ってるからなー!』
 と言うアナウンスに、全員が笑った。

 飯の時間に俺は乗組員を見渡した。
 後少しでこいつらともお別れと思うと少し寂しくなる。
「おう、どうした?」
 と砲術員達が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「いや、なんもねぇよ。ほら、一緒に飯食おうぜ!」
 といって俺は笑顔を作った。


*遅れてすみません
*因みに、あと二話ぐらいで最終回です。最後まで菜月達の航海?航跡?をどうぞよろしくお願いします。
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