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5話 修行
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会社には、体調不良ということにした。溜め込んだ有給休暇を消化しつつ、今後の自分の進退を考えていた。
俺はもう、あの会社にはいられない。築き上げてきた信頼も、地位も、魔法少女に変身したあの瞬間に失ったんだ。
受付嬢が俺をみる軽蔑の眼差しが、瞼の裏に焦げ付いている。
だが、この問題は一生付きまとうものかもしれない。仮に今の会社をやめて新しい場所で働き始めても、また敵が攻めてきて魔法少女に変身したら同じことになる。
俺は魔法少女として、いつ戦いにかり出されるか分からないのだ。職場に正体がバレるリスクは、常にある。
かと言って、俺にも生活があるから、働かないわけにもいかない。
リスクをどう回避するかが悩みものだ。
「えぇー、そんなこと僕に聞かれてもなー。人間社会のことはよく分からないよ」
淫獣に聞いたのが馬鹿だった。
こいつらは俺の生活がどうなろうと関係ない。ただ宇宙の敵――悪魔どもを倒し、エネルギーを回収して、正常な宇宙の循環を取り戻したいだけだ。
その後に残される俺のことなんて、どうも思っていないだろう。
「これからどうしようかなぁ」
「どうするって、大二郎は魔法少女なんだから、僕としてはガンガン敵の討伐をお願いしたいな」
「俺は部長と違って、武器も持ってないんだけど。拳で戦う魔法少女とか聞いたことないんだけど」
そもそも少女ではないし、魔法さえも使えないなら、それはもうただのおっさんだ。
俺のどこが魔法少女なのか教えてほしい。
「魔法は心の力だから、大二郎の心象が素手で戦うことだったんだろうね」
さんざん魔法少女がマジカルアイテムを手に戦う姿を見てきたのに、いざ我が身となってみて、肝心なときに思い浮かんだのは素手での戦闘だったのか。
「でも、それが弱いわけじゃない。どんな魔法だって強みがあるはずさ。大二郎は大二郎なりの強さを見つければいいんだよ」
「素手で戦う魔法ねぇ……」
「大二郎の魔法は接近タイプなのかも。肉体強化とか、攻撃が当たってから効果が出るとか」
「それって敵の攻撃を受けるリスクも相当じゃん」
絶対に遠距離攻撃のほうが強い。わざわざ強力な敵に接近する必要があるのは、かなりの弱点と言える。
「当たらなかったらいいんじゃない?」
「こいつ……」
俺の受けた痛みと恐怖を味わえば、こんなことは言えなくなるだろう。もっとも、人間でないこいつに、俺の気持ちが理解できるわけもないか。
言い合いは不毛と理解して、言葉を飲み込む。
「だって、そのための魔法だし」
魔法があっても、人間自体はそう変わらない。
無敵のつもりで挑んだ初戦が、一撃でノックダウンだったんだ。次戦に期待できるはずがない。こいつは魔法があれば何でもできると思っていやがる。
……って、待てよ?
「魔法は俺の心象を云々って、それはつまり、気の持ちようなのか?」
「そうとも言うね。君の纏うマジカル・ジャケットも、扱う魔力も、すべて君の心の力が源だ」
「じゃあ、俺が素手以外を望めば……」
「他の魔法だって扱えるかもね」
「無敵のマジカル・ジャケットをイメージすれば……」
「あんなことにはならなかっただろうね」
「もし俺が、女の子になりたいと、もっと強く望んでいたら……」
「前例はないけど、可能性は否定できないね。魔法には無限の可能性がある」
そういうことか。
全ては俺の心の弱さが招いていることだったのか。それは逆に、心の持ちようによっては、俺は無敵で可愛い美少女にもなれるってことだ。
思い返せば、なぜ部長はあんだけ強かったのか。ボスキャラを一撃で屠れたのか。
もともと部長は、部長なだけあって、自分にいつも自信があって、自己肯定感も高かった。ハゲた俺とは違って、俺よりも年上なのに、女性からの評判も良かった。
「……そういうことかよ」
部長はもともと自分に自信がある。そのうえ、魔法少女になったことにも抵抗がなさそうだった。それどころか、魔法少女である自分こそが本当だと言わんばかりに、魔法少女としての自信もあるように見えた。
部長にあって俺にないもの。それは、魔法少女としての
でも、俺はどうしたら部長のように、自分を受け入れることができるのか。人間、そんなすぐに性格を変えることなんてできない。昨日まで自分を信じれなかった自分が、明日から信じれるようになれるものか。何より、俺にとっての魔法少女は部長と違う。魔法少女は女の子だから魔法少女なわけで、俺が俺のまま魔法少女になることではない。
「大二郎の場合、なんだか卑屈なような気がする。オタクやニートにあるらしいけど、そういう人はまず見た目からこだわったほうがいいらしいよ。美容室にいったり、ダイエットしたりね」
「この頭で美容室いっても意味ないし、ダイエットしてもハゲが残るだけだろ。……あっ」
しゃべってて気がついた。
そう、俺は見た目が悪いんだ。自分を信じれないのは、こんな見た目で、自信がないからだ。
俺とは違って部長は身綺麗だ。着ているスーツだって、なんだか高級に見える。部長は部長なりに、求める自分の姿を日々追求していたのだ。だからこそ、その努力が自信に繋がっているのかもしれない。
俺も、今の俺を認めることができるなら……魔法少女として、自信が持てるようになったら……。
そうと分かれば、俺のやるべきことはただ1つだ。
「ありがとうよ。俺、変わってみせるよ」
初めて、淫獣に礼を言った気がした。
●
まず、俺は見た目から入るべきだったんだ。
魔力の強さは自己肯定感。どんな姿になっても失わない自信なのだ。
部長は魔法少女のコスプレ姿でも自信を失わない。むしろ、そういう風になることに慣れている。恥ずかしい気持ちになって、自信を失うなんてこともない。
なら俺も、そうなるべきなんだ。
俺が求める俺は、あの時から決まっている。
そう、舞ちゃんを見た時から、俺のあこがれはそこにあったんだ。
「んー、前よりも見た目が悪化している気がするけど……」
「黙ってみていろ。俺は……舞ちゃんになるんだ」
俺は真剣だった。
舞ちゃんが来ていそうな服や下着を探した。そして、それを部屋着として着ることから始めた。
次に、女の子が持っていそうなリップやカバン、靴といった小物も身につけた。筆記用具やノート、メモ帳なんかも可愛らしいものにした。
朝起きてから寝るまで、食べるものや食器まで、女の子を意識した。
俺は女子中学生、女子中学生なんだ。
「部長と同類と思われても仕方ないね」
「ある意味、そうかもしれない。だが、自分を騙せないやつが本物になれるはずがないんだ」
どうして俺が魔力を強めたいのか、この淫獣にはわかるまい。
ただ敵を倒すことが目的ではないのだ。
こいつの言葉は信用ならないが、質問して嘘の答えを寄越すわけではない。こいつは俺に、魔法の力があれば女の子にもなれると言った。
それが分かれば、俺は俺の夢に向かうまでだ。
「確かに、それは一理ある。現に、なんでか大二郎の魔力も以前に比べて増している気がする」
やはりか。この行いは正解だったらしい。
このまま魔力を高めていって、俺は本当の魔法“少女”になるんだ。
「でも、まだ足りない。次はこれで外に出てやる。そうしたら、俺は俺に、もっと自信を持てる気がするんだ」
なんでそうしたら良いと思ったのかは分からない。根拠のない自信だった。
いや、それはもう確信に近かった。俺は、今よりももっと魔法少女に近づける。そんな気がした。
「大二郎がそう言うなら、僕も付き合うよ」
俺の魔力アップは、こいつの目で見ても明らからしい。効果が見えてきたから、こいつは俺の俺なりの修行に疑問を呈さなくなった。
むしろ魔力アップのために応援までしてくれるようになった。
「臆するな! 俺は、魔法少女だ!」
まずは人気のない夜中を狙った。近所の公園まで言って、次第に距離を延ばしていった。必然的に、通行人と遭遇する頻度も増えた。
最初は緊張したが、数をこなせば何てことなくなった。俺に向けられる奇異の眼差しも、俺の夢が叶うまでのプロセスと思えば怖くはなかった。
そうして俺は、いつしか昼間に出歩くようになった。
「君、その格好で何してるの?」
すっかり警察の職質も慣れたものだ。
俺は何の罪も犯していない。堂々としていればいいのだ。向けられた質問には真摯に、すべて真実を話す。
「普段着です」
「どこで手に入れたの?」
「近場のお店で買いました」
「本当? 盗ってきたりしてない? 最近そういう被害が多いらしいんだよね」
「いえ、そんなリスクは犯せません。私はただ魔法少女になるために頑張っているんです。そんなつまらない事をやってる暇はありません」
それなのに、何回も交番に連れて行かれては、この日どこにいた等のアリバイを調べられたりする。
真面目に働いているだけの警察には悪いが、修行の邪魔だ。善良な市民の俺ではなく、もっと悪いやつを捕まえろ。
「私が本気を出せば、どんな悪いやつでも魔法で一撃です。何か困ったことがあったら教えてください。私も協力します」
「僕らとしては、あなたがそんな格好で出歩くことが困ってるんだよね」
「なんでです? 私は悪いことはしていません」
「娘さんを持つ親御さんとかがねぇ、何かされるんじゃないかって不安がってるんだよ。子どもだって、君を見たら怯えている」
「それは気の毒ですが、今は多様性が尊重される時代です。いつも皆と同じでないといけない、なんてことはないんですよ。自分とは違った人を認められる大人にならなければ……。今は令和です。私としては、逆に皆さんへ考える場を与えていて、良い影響を及ぼしていると思いますよ」
本心だった。人間よりも高次元生物のはずの淫獣も言っていた。現代は多様化社会だと。
もっとも、俺が本物になる日は近いから、本物にさえなれば、皆も俺を認めざるを得ないだろう。多様もクソもない。
「すごいよ大二郎。以前とは比べものにならない。このままいけば、君の魔力はエントロピーを凌駕するかもしれない」
「奇跡でも魔法でも何でもいい。進み続ける。これまでの努力に、想いに、報いる日まで。進み続けるんだ。今行くよ……舞ちゃん?!」
お母さんへ。
世間から見たら、僕はホンモノなのかもしれません。
しかし、俺が思う本当は、ホンモノとは違う。
今に見ていてください。
娘が欲しい、と昔言ってたことを忘れていません。
お母さんの願いのためにも、僕は頑張ります。
俺はもう、あの会社にはいられない。築き上げてきた信頼も、地位も、魔法少女に変身したあの瞬間に失ったんだ。
受付嬢が俺をみる軽蔑の眼差しが、瞼の裏に焦げ付いている。
だが、この問題は一生付きまとうものかもしれない。仮に今の会社をやめて新しい場所で働き始めても、また敵が攻めてきて魔法少女に変身したら同じことになる。
俺は魔法少女として、いつ戦いにかり出されるか分からないのだ。職場に正体がバレるリスクは、常にある。
かと言って、俺にも生活があるから、働かないわけにもいかない。
リスクをどう回避するかが悩みものだ。
「えぇー、そんなこと僕に聞かれてもなー。人間社会のことはよく分からないよ」
淫獣に聞いたのが馬鹿だった。
こいつらは俺の生活がどうなろうと関係ない。ただ宇宙の敵――悪魔どもを倒し、エネルギーを回収して、正常な宇宙の循環を取り戻したいだけだ。
その後に残される俺のことなんて、どうも思っていないだろう。
「これからどうしようかなぁ」
「どうするって、大二郎は魔法少女なんだから、僕としてはガンガン敵の討伐をお願いしたいな」
「俺は部長と違って、武器も持ってないんだけど。拳で戦う魔法少女とか聞いたことないんだけど」
そもそも少女ではないし、魔法さえも使えないなら、それはもうただのおっさんだ。
俺のどこが魔法少女なのか教えてほしい。
「魔法は心の力だから、大二郎の心象が素手で戦うことだったんだろうね」
さんざん魔法少女がマジカルアイテムを手に戦う姿を見てきたのに、いざ我が身となってみて、肝心なときに思い浮かんだのは素手での戦闘だったのか。
「でも、それが弱いわけじゃない。どんな魔法だって強みがあるはずさ。大二郎は大二郎なりの強さを見つければいいんだよ」
「素手で戦う魔法ねぇ……」
「大二郎の魔法は接近タイプなのかも。肉体強化とか、攻撃が当たってから効果が出るとか」
「それって敵の攻撃を受けるリスクも相当じゃん」
絶対に遠距離攻撃のほうが強い。わざわざ強力な敵に接近する必要があるのは、かなりの弱点と言える。
「当たらなかったらいいんじゃない?」
「こいつ……」
俺の受けた痛みと恐怖を味わえば、こんなことは言えなくなるだろう。もっとも、人間でないこいつに、俺の気持ちが理解できるわけもないか。
言い合いは不毛と理解して、言葉を飲み込む。
「だって、そのための魔法だし」
魔法があっても、人間自体はそう変わらない。
無敵のつもりで挑んだ初戦が、一撃でノックダウンだったんだ。次戦に期待できるはずがない。こいつは魔法があれば何でもできると思っていやがる。
……って、待てよ?
「魔法は俺の心象を云々って、それはつまり、気の持ちようなのか?」
「そうとも言うね。君の纏うマジカル・ジャケットも、扱う魔力も、すべて君の心の力が源だ」
「じゃあ、俺が素手以外を望めば……」
「他の魔法だって扱えるかもね」
「無敵のマジカル・ジャケットをイメージすれば……」
「あんなことにはならなかっただろうね」
「もし俺が、女の子になりたいと、もっと強く望んでいたら……」
「前例はないけど、可能性は否定できないね。魔法には無限の可能性がある」
そういうことか。
全ては俺の心の弱さが招いていることだったのか。それは逆に、心の持ちようによっては、俺は無敵で可愛い美少女にもなれるってことだ。
思い返せば、なぜ部長はあんだけ強かったのか。ボスキャラを一撃で屠れたのか。
もともと部長は、部長なだけあって、自分にいつも自信があって、自己肯定感も高かった。ハゲた俺とは違って、俺よりも年上なのに、女性からの評判も良かった。
「……そういうことかよ」
部長はもともと自分に自信がある。そのうえ、魔法少女になったことにも抵抗がなさそうだった。それどころか、魔法少女である自分こそが本当だと言わんばかりに、魔法少女としての自信もあるように見えた。
部長にあって俺にないもの。それは、魔法少女としての
でも、俺はどうしたら部長のように、自分を受け入れることができるのか。人間、そんなすぐに性格を変えることなんてできない。昨日まで自分を信じれなかった自分が、明日から信じれるようになれるものか。何より、俺にとっての魔法少女は部長と違う。魔法少女は女の子だから魔法少女なわけで、俺が俺のまま魔法少女になることではない。
「大二郎の場合、なんだか卑屈なような気がする。オタクやニートにあるらしいけど、そういう人はまず見た目からこだわったほうがいいらしいよ。美容室にいったり、ダイエットしたりね」
「この頭で美容室いっても意味ないし、ダイエットしてもハゲが残るだけだろ。……あっ」
しゃべってて気がついた。
そう、俺は見た目が悪いんだ。自分を信じれないのは、こんな見た目で、自信がないからだ。
俺とは違って部長は身綺麗だ。着ているスーツだって、なんだか高級に見える。部長は部長なりに、求める自分の姿を日々追求していたのだ。だからこそ、その努力が自信に繋がっているのかもしれない。
俺も、今の俺を認めることができるなら……魔法少女として、自信が持てるようになったら……。
そうと分かれば、俺のやるべきことはただ1つだ。
「ありがとうよ。俺、変わってみせるよ」
初めて、淫獣に礼を言った気がした。
●
まず、俺は見た目から入るべきだったんだ。
魔力の強さは自己肯定感。どんな姿になっても失わない自信なのだ。
部長は魔法少女のコスプレ姿でも自信を失わない。むしろ、そういう風になることに慣れている。恥ずかしい気持ちになって、自信を失うなんてこともない。
なら俺も、そうなるべきなんだ。
俺が求める俺は、あの時から決まっている。
そう、舞ちゃんを見た時から、俺のあこがれはそこにあったんだ。
「んー、前よりも見た目が悪化している気がするけど……」
「黙ってみていろ。俺は……舞ちゃんになるんだ」
俺は真剣だった。
舞ちゃんが来ていそうな服や下着を探した。そして、それを部屋着として着ることから始めた。
次に、女の子が持っていそうなリップやカバン、靴といった小物も身につけた。筆記用具やノート、メモ帳なんかも可愛らしいものにした。
朝起きてから寝るまで、食べるものや食器まで、女の子を意識した。
俺は女子中学生、女子中学生なんだ。
「部長と同類と思われても仕方ないね」
「ある意味、そうかもしれない。だが、自分を騙せないやつが本物になれるはずがないんだ」
どうして俺が魔力を強めたいのか、この淫獣にはわかるまい。
ただ敵を倒すことが目的ではないのだ。
こいつの言葉は信用ならないが、質問して嘘の答えを寄越すわけではない。こいつは俺に、魔法の力があれば女の子にもなれると言った。
それが分かれば、俺は俺の夢に向かうまでだ。
「確かに、それは一理ある。現に、なんでか大二郎の魔力も以前に比べて増している気がする」
やはりか。この行いは正解だったらしい。
このまま魔力を高めていって、俺は本当の魔法“少女”になるんだ。
「でも、まだ足りない。次はこれで外に出てやる。そうしたら、俺は俺に、もっと自信を持てる気がするんだ」
なんでそうしたら良いと思ったのかは分からない。根拠のない自信だった。
いや、それはもう確信に近かった。俺は、今よりももっと魔法少女に近づける。そんな気がした。
「大二郎がそう言うなら、僕も付き合うよ」
俺の魔力アップは、こいつの目で見ても明らからしい。効果が見えてきたから、こいつは俺の俺なりの修行に疑問を呈さなくなった。
むしろ魔力アップのために応援までしてくれるようになった。
「臆するな! 俺は、魔法少女だ!」
まずは人気のない夜中を狙った。近所の公園まで言って、次第に距離を延ばしていった。必然的に、通行人と遭遇する頻度も増えた。
最初は緊張したが、数をこなせば何てことなくなった。俺に向けられる奇異の眼差しも、俺の夢が叶うまでのプロセスと思えば怖くはなかった。
そうして俺は、いつしか昼間に出歩くようになった。
「君、その格好で何してるの?」
すっかり警察の職質も慣れたものだ。
俺は何の罪も犯していない。堂々としていればいいのだ。向けられた質問には真摯に、すべて真実を話す。
「普段着です」
「どこで手に入れたの?」
「近場のお店で買いました」
「本当? 盗ってきたりしてない? 最近そういう被害が多いらしいんだよね」
「いえ、そんなリスクは犯せません。私はただ魔法少女になるために頑張っているんです。そんなつまらない事をやってる暇はありません」
それなのに、何回も交番に連れて行かれては、この日どこにいた等のアリバイを調べられたりする。
真面目に働いているだけの警察には悪いが、修行の邪魔だ。善良な市民の俺ではなく、もっと悪いやつを捕まえろ。
「私が本気を出せば、どんな悪いやつでも魔法で一撃です。何か困ったことがあったら教えてください。私も協力します」
「僕らとしては、あなたがそんな格好で出歩くことが困ってるんだよね」
「なんでです? 私は悪いことはしていません」
「娘さんを持つ親御さんとかがねぇ、何かされるんじゃないかって不安がってるんだよ。子どもだって、君を見たら怯えている」
「それは気の毒ですが、今は多様性が尊重される時代です。いつも皆と同じでないといけない、なんてことはないんですよ。自分とは違った人を認められる大人にならなければ……。今は令和です。私としては、逆に皆さんへ考える場を与えていて、良い影響を及ぼしていると思いますよ」
本心だった。人間よりも高次元生物のはずの淫獣も言っていた。現代は多様化社会だと。
もっとも、俺が本物になる日は近いから、本物にさえなれば、皆も俺を認めざるを得ないだろう。多様もクソもない。
「すごいよ大二郎。以前とは比べものにならない。このままいけば、君の魔力はエントロピーを凌駕するかもしれない」
「奇跡でも魔法でも何でもいい。進み続ける。これまでの努力に、想いに、報いる日まで。進み続けるんだ。今行くよ……舞ちゃん?!」
お母さんへ。
世間から見たら、僕はホンモノなのかもしれません。
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