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14話 2回目
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「田中君! 我々は魔法少女だ! 宇宙を守る使命があるんだ! そんな意識では困るよ!!」
気がつくと、俺はまた部長室にいた。
またここからなのか。
「君が彼女を呼ばないのなら、私が迎えにいく! どこの学校なのかも分かっているからね!」
それは部長を掴もうと手を伸ばした。ここで取り押さえておけば、後のようなことにはならない。
「あぁ! くそ!!」
しかし、後少し届かなかった。
悪態をつきながら、俺は変身して中学校に向かった。
今度は前に比べてスタートが早い。ここまで迷いがなければ間に合うだろう。
そう思ったが……
「2人目の変態だ!」
ダメだったらしい。
飛行と地上ダッシュでは、速度でも距離でも負ける。
こうなったら1秒でも早く倉庫に向かうしかない。
「やぁ、大二郎。大変なことになったね」
走る俺に、淫獣が並んできた。
そして、また同じ提案をしてきた。
「わかった。それで頼む」
前回の俺は、見るに堪えない光景と感覚から逃れようとして、最後まで見続けることができなかった。だが、今回は違う。耐えて、最後まで見ようと思った。
あの倉庫で、いったい何が起きたのか。
俺は、抱いた疑問の答えが気になった。
●
黄色い魔法少女のコスプレをしたおっさんが、目前に迫ってくる。それを必死に拒絶しようと細い手を払うが、簡単に掴まれる。
「さぁ、可愛がってくれ……魔法少女として、魔法少女してくれ……」
「は? え?」
荒い息で囁いてくる部長の言葉を、舞ちゃんは理解できないようだ。
無理もない。俺もよく分からない。
「とりあえず、今日はこのままでいこうか」
部長の手が舞ちゃんのブレザーに触れる。引っ張られ、ボタンが弾け飛んだ。
「ちょっと……やめてくださいっ」
必死でブレザーを押さえる舞ちゃんを見て、余計に部長は嬉しがった。強引にブレザーを引っ張るほど、舞ちゃんの反応も強くなる。それに伴って、部長の鼻息も荒くなった。
こいつ、こっちの趣味もあったのか……。
「いいぞ、いいよ! 早く本気にならないと、おじさんがお手つきしちゃうよ!」
舞ちゃんは部長の目的が分からず、涙目になる。
何となく、自分の身にとんでもない事が起きようとしていると。動物の本能的な部分で、女としての身の危険を感じていた。
体格差で押し倒され、部長の手がワイシャツに触れた時、舞ちゃんは今までよりも叫んだ。
「ほんと、やめてくださいっ! 嫌ですっ!」
同時に、舞ちゃんはがむしゃらに手を振り回した。
「だから、魔法少女になってくれてもいいんだって」
その時、舞ちゃんの伸びた爪が、部長の顔を引っ掻いた。不意に、目にも入った。
「あぁ!! ちょっと、そうじゃない!!」
苦悶する部長がひるんだ隙に、舞ちゃんは後退りして距離をとった。
大人の絶叫に、身をすくませる。
だが、このまま見ているだけでは、また部長が迫ってくると思ってか、舞ちゃんは慣れない構えを取り、そして部長の股間を蹴り上げた。
呻きとともに、一瞬にして部長の顔が青ざめる。
「昔、襲われたらこうしたらいいって、テレビでみました! どうですか!」
「き、君……内蔵だぞ、ここ……」
身体が折れ曲がり、膝をつく間際、部長の目がぎょろりと向く。
「この、ガキ!」
変身が解ける寸前、部長は舞ちゃんに魔法を放った。魔力の込められていない微弱な攻撃。
しかし、生身の、しかも中学生の舞ちゃんには、それはあまりに強烈だった。
短い悲鳴を最後に、舞ちゃんは吹き飛ばされ、その場に倒れ込んでしまった。
残ったのは、脂汗をかき、呼吸の乱れた部長。
●
「部長!!」
事の顛末を見てから、俺は倉庫にたどり着いた。
「やぁ、早かったね。でも、少し遅かった」
確かに、少し遅かったかもしれない。
でも、俺は間に合っていたんだ。
「そこをどけ! 部長!」
俺は部長に飛びかかった……のではなく、倒れ込む舞ちゃんを抱きかかえにいった。
構えた部長は、やや拍子抜けと言うように笑う。
「なんだね、田中君。私はいいのかね?」
「良くはありませんが……まあ、ひとまずは良いでしょう」
このままこの場所にいては、時期にくる警察に捕まってしまう。
困惑する部長をよそに、俺は倉庫の壁を壊し、外に出ることにした。
まだ股間の苦痛が冷めていないのか、部長の反応は鈍かった。
「どこに行こうというのかね」
「失礼します」
「いや、待ってくれ、田中君」
どこか寂しそうに手を伸ばす部長を一瞥して、俺は走った。
部長も生きているし、舞ちゃんも無事だ。
俺は、今度こそ間違えなかったぞ。
「舞ちゃん……。大丈夫かい?」
「田中さん……」
掻き消えそうな声で、舞ちゃんは俺を呼んだ。
「……どうして、もっと早くに来てくれなかったんですか……?」
その言葉に、心臓が跳ね上がった。
淫獣の能力をかりて見ていたのがバレたのかと思った。
「助けるって……言ったのに……」
俺は舞ちゃんと連絡先を交換するときに、自身ありありと、そんなことを言ったのだと思い出す。
思えば、舞ちゃんは中学生。部長に迫られて、十分に怖い思いをした。舞ちゃんにとっては、これは間に合っていない。被害後なのだ。
「舞ちゃん、違うんだよ、俺」
「残念です、田中さん……」
気がつくと、俺はまた部長室にいた。
またここからなのか。
「君が彼女を呼ばないのなら、私が迎えにいく! どこの学校なのかも分かっているからね!」
それは部長を掴もうと手を伸ばした。ここで取り押さえておけば、後のようなことにはならない。
「あぁ! くそ!!」
しかし、後少し届かなかった。
悪態をつきながら、俺は変身して中学校に向かった。
今度は前に比べてスタートが早い。ここまで迷いがなければ間に合うだろう。
そう思ったが……
「2人目の変態だ!」
ダメだったらしい。
飛行と地上ダッシュでは、速度でも距離でも負ける。
こうなったら1秒でも早く倉庫に向かうしかない。
「やぁ、大二郎。大変なことになったね」
走る俺に、淫獣が並んできた。
そして、また同じ提案をしてきた。
「わかった。それで頼む」
前回の俺は、見るに堪えない光景と感覚から逃れようとして、最後まで見続けることができなかった。だが、今回は違う。耐えて、最後まで見ようと思った。
あの倉庫で、いったい何が起きたのか。
俺は、抱いた疑問の答えが気になった。
●
黄色い魔法少女のコスプレをしたおっさんが、目前に迫ってくる。それを必死に拒絶しようと細い手を払うが、簡単に掴まれる。
「さぁ、可愛がってくれ……魔法少女として、魔法少女してくれ……」
「は? え?」
荒い息で囁いてくる部長の言葉を、舞ちゃんは理解できないようだ。
無理もない。俺もよく分からない。
「とりあえず、今日はこのままでいこうか」
部長の手が舞ちゃんのブレザーに触れる。引っ張られ、ボタンが弾け飛んだ。
「ちょっと……やめてくださいっ」
必死でブレザーを押さえる舞ちゃんを見て、余計に部長は嬉しがった。強引にブレザーを引っ張るほど、舞ちゃんの反応も強くなる。それに伴って、部長の鼻息も荒くなった。
こいつ、こっちの趣味もあったのか……。
「いいぞ、いいよ! 早く本気にならないと、おじさんがお手つきしちゃうよ!」
舞ちゃんは部長の目的が分からず、涙目になる。
何となく、自分の身にとんでもない事が起きようとしていると。動物の本能的な部分で、女としての身の危険を感じていた。
体格差で押し倒され、部長の手がワイシャツに触れた時、舞ちゃんは今までよりも叫んだ。
「ほんと、やめてくださいっ! 嫌ですっ!」
同時に、舞ちゃんはがむしゃらに手を振り回した。
「だから、魔法少女になってくれてもいいんだって」
その時、舞ちゃんの伸びた爪が、部長の顔を引っ掻いた。不意に、目にも入った。
「あぁ!! ちょっと、そうじゃない!!」
苦悶する部長がひるんだ隙に、舞ちゃんは後退りして距離をとった。
大人の絶叫に、身をすくませる。
だが、このまま見ているだけでは、また部長が迫ってくると思ってか、舞ちゃんは慣れない構えを取り、そして部長の股間を蹴り上げた。
呻きとともに、一瞬にして部長の顔が青ざめる。
「昔、襲われたらこうしたらいいって、テレビでみました! どうですか!」
「き、君……内蔵だぞ、ここ……」
身体が折れ曲がり、膝をつく間際、部長の目がぎょろりと向く。
「この、ガキ!」
変身が解ける寸前、部長は舞ちゃんに魔法を放った。魔力の込められていない微弱な攻撃。
しかし、生身の、しかも中学生の舞ちゃんには、それはあまりに強烈だった。
短い悲鳴を最後に、舞ちゃんは吹き飛ばされ、その場に倒れ込んでしまった。
残ったのは、脂汗をかき、呼吸の乱れた部長。
●
「部長!!」
事の顛末を見てから、俺は倉庫にたどり着いた。
「やぁ、早かったね。でも、少し遅かった」
確かに、少し遅かったかもしれない。
でも、俺は間に合っていたんだ。
「そこをどけ! 部長!」
俺は部長に飛びかかった……のではなく、倒れ込む舞ちゃんを抱きかかえにいった。
構えた部長は、やや拍子抜けと言うように笑う。
「なんだね、田中君。私はいいのかね?」
「良くはありませんが……まあ、ひとまずは良いでしょう」
このままこの場所にいては、時期にくる警察に捕まってしまう。
困惑する部長をよそに、俺は倉庫の壁を壊し、外に出ることにした。
まだ股間の苦痛が冷めていないのか、部長の反応は鈍かった。
「どこに行こうというのかね」
「失礼します」
「いや、待ってくれ、田中君」
どこか寂しそうに手を伸ばす部長を一瞥して、俺は走った。
部長も生きているし、舞ちゃんも無事だ。
俺は、今度こそ間違えなかったぞ。
「舞ちゃん……。大丈夫かい?」
「田中さん……」
掻き消えそうな声で、舞ちゃんは俺を呼んだ。
「……どうして、もっと早くに来てくれなかったんですか……?」
その言葉に、心臓が跳ね上がった。
淫獣の能力をかりて見ていたのがバレたのかと思った。
「助けるって……言ったのに……」
俺は舞ちゃんと連絡先を交換するときに、自身ありありと、そんなことを言ったのだと思い出す。
思えば、舞ちゃんは中学生。部長に迫られて、十分に怖い思いをした。舞ちゃんにとっては、これは間に合っていない。被害後なのだ。
「舞ちゃん、違うんだよ、俺」
「残念です、田中さん……」
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