俺(40歳成人男性)が魔法少女に?!

桃田正介

文字の大きさ
14 / 17

14話 2回目

しおりを挟む
「田中君! 我々は魔法少女だ! 宇宙を守る使命があるんだ! そんな意識では困るよ!!」

 気がつくと、俺はまた部長室にいた。
 またここからなのか。

「君が彼女を呼ばないのなら、私が迎えにいく! どこの学校なのかも分かっているからね!」

 それは部長を掴もうと手を伸ばした。ここで取り押さえておけば、後のようなことにはならない。
 
「あぁ! くそ!!」

 しかし、後少し届かなかった。
 悪態をつきながら、俺は変身して中学校に向かった。
 今度は前に比べてスタートが早い。ここまで迷いがなければ間に合うだろう。
 そう思ったが……

「2人目の変態だ!」

 ダメだったらしい。
 飛行と地上ダッシュでは、速度でも距離でも負ける。
 こうなったら1秒でも早く倉庫に向かうしかない。

「やぁ、大二郎。大変なことになったね」

 走る俺に、淫獣が並んできた。
 そして、また同じ提案をしてきた。

「わかった。それで頼む」

 前回の俺は、見るに堪えない光景と感覚から逃れようとして、最後まで見続けることができなかった。だが、今回は違う。耐えて、最後まで見ようと思った。
 あの倉庫で、いったい何が起きたのか。
 俺は、抱いた疑問の答えが気になった。

   ●

 黄色い魔法少女のコスプレをしたおっさんが、目前に迫ってくる。それを必死に拒絶しようと細い手を払うが、簡単に掴まれる。

「さぁ、可愛がってくれ……魔法少女として、魔法少女してくれ……」
「は? え?」
 
 荒い息で囁いてくる部長の言葉を、舞ちゃんは理解できないようだ。
 無理もない。俺もよく分からない。

「とりあえず、今日はこのままでいこうか」

 部長の手が舞ちゃんのブレザーに触れる。引っ張られ、ボタンが弾け飛んだ。

「ちょっと……やめてくださいっ」

 必死でブレザーを押さえる舞ちゃんを見て、余計に部長は嬉しがった。強引にブレザーを引っ張るほど、舞ちゃんの反応も強くなる。それに伴って、部長の鼻息も荒くなった。
 こいつ、こっちの趣味もあったのか……。

「いいぞ、いいよ! 早く本気にならないと、おじさんがお手つきしちゃうよ!」
 
 舞ちゃんは部長の目的が分からず、涙目になる。
 何となく、自分の身にとんでもない事が起きようとしていると。動物の本能的な部分で、女としての身の危険を感じていた。
 体格差で押し倒され、部長の手がワイシャツに触れた時、舞ちゃんは今までよりも叫んだ。

「ほんと、やめてくださいっ! 嫌ですっ!」

 同時に、舞ちゃんはがむしゃらに手を振り回した。

「だから、魔法少女になってくれてもいいんだって」

 その時、舞ちゃんの伸びた爪が、部長の顔を引っ掻いた。不意に、目にも入った。

「あぁ!! ちょっと、そうじゃない!!」

 苦悶する部長がひるんだ隙に、舞ちゃんは後退りして距離をとった。
 大人の絶叫に、身をすくませる。
 だが、このまま見ているだけでは、また部長が迫ってくると思ってか、舞ちゃんは慣れない構えを取り、そして部長の股間を蹴り上げた。
 呻きとともに、一瞬にして部長の顔が青ざめる。

「昔、襲われたらこうしたらいいって、テレビでみました! どうですか!」
「き、君……内蔵だぞ、ここ……」

 身体が折れ曲がり、膝をつく間際、部長の目がぎょろりと向く。

「この、ガキ!」

 変身が解ける寸前、部長は舞ちゃんに魔法を放った。魔力の込められていない微弱な攻撃。
 しかし、生身の、しかも中学生の舞ちゃんには、それはあまりに強烈だった。
 短い悲鳴を最後に、舞ちゃんは吹き飛ばされ、その場に倒れ込んでしまった。
 残ったのは、脂汗をかき、呼吸の乱れた部長。

   ●

「部長!!」

 事の顛末を見てから、俺は倉庫にたどり着いた。
 
「やぁ、早かったね。でも、少し遅かった」

 確かに、少し遅かったかもしれない。
 でも、俺は間に合っていたんだ。

「そこをどけ! 部長!」

 俺は部長に飛びかかった……のではなく、倒れ込む舞ちゃんを抱きかかえにいった。
 構えた部長は、やや拍子抜けと言うように笑う。

「なんだね、田中君。私はいいのかね?」
「良くはありませんが……まあ、ひとまずは良いでしょう」

 このままこの場所にいては、時期にくる警察に捕まってしまう。
 困惑する部長をよそに、俺は倉庫の壁を壊し、外に出ることにした。
 まだ股間の苦痛が冷めていないのか、部長の反応は鈍かった。

「どこに行こうというのかね」
「失礼します」
「いや、待ってくれ、田中君」

 どこか寂しそうに手を伸ばす部長を一瞥して、俺は走った。
 部長も生きているし、舞ちゃんも無事だ。
 俺は、今度こそ間違えなかったぞ。

「舞ちゃん……。大丈夫かい?」
「田中さん……」

 掻き消えそうな声で、舞ちゃんは俺を呼んだ。

「……どうして、もっと早くに来てくれなかったんですか……?」

 その言葉に、心臓が跳ね上がった。
 淫獣の能力をかりて見ていたのがバレたのかと思った。

「助けるって……言ったのに……」
 
 俺は舞ちゃんと連絡先を交換するときに、自身ありありと、そんなことを言ったのだと思い出す。
 思えば、舞ちゃんは中学生。部長に迫られて、十分に怖い思いをした。舞ちゃんにとっては、これは間に合っていない。被害後なのだ。

「舞ちゃん、違うんだよ、俺」
「残念です、田中さん……」



 




 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...