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15話 3回目 4回目
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また、ここからなのか。
俺は、再び怒鳴る部長を前にしていた。
「君が彼女を呼ばないのなら、私が迎えにいく! どこの学校なのかも分かっているからね!」
で、また出ていくんですよね。止めても無駄なんですもんね。
そう思っていると、案の定、部長は窓を壊して出ていった。
どうしたら間に合うのか考える時間も与えられず、とりあえず俺は部長を追いかける。
だふん、今こうして中学校に向かっているが、舞ちゃんが拐われるまでに着くことはできない気がする。過去2回とも、部長が中学校を出ていく姿すら見ていない。
そうすると、そこから倉庫に向かったのでは、かなりのタイムラグが生じることになるから、最初から倉庫に向かって走ればいいのでは?
「良いこと思いついた!」
そこまで思考が至り、嬉しくなって俺はガッツポーズした。
このまま倉庫に向かおう。それなら間に合う。
「やぁ、大二郎」
その途中、淫獣が話しかけてきた。
ルートを変えても、こいつは来るらしい。
「なんだ、俺は忙しい。視覚の共有とかはいらないぞ」
「あ、なんだ。知ってたんだ」
さほど淫獣は驚いていないらしい。
残念がりもせず、しようと思った提案を簡単に引き下げる。
「ところで大二郎。どうやって舞を助けるつもりだい?」
「今それを考えてんだ」
考えながら走ってるんだから、気を散らせないで欲しい。何が目的なのか、淫獣は続ける。
「大二郎が向かおとしてる所だけど、警察も向かってるようだ。このままいくと、鉢合わせになると思うけど」
「じゃあ、どうしろと? 行かない選択はないからな」
今までそれは教えてくれなかったくせに、ルートが変わると教えてくれるのか。
確かに、警察がくるのは俺が倉庫について、部長を倒してからすぐだ。時間にして数分程度。こいつの言う通り、このまま部長と戦ってから舞ちゃんを助けるとなると、また警察と鉢合わせして捕まえられるだろう。
かと言って、俺が倉庫に向かわずして、舞ちゃんの無事はない。
警察が来るのは、あまりに遅すぎる。
「そもそも、部長は何がしたいんだろう?」
「何ってそれは……」
言うのは憚られるが、部長は残り少ない寿命に絶望して、自分のやりたい事を我慢しないようになった。
……我慢? 何を?
思えば、部長は舞ちゃん自体に固執してるわけではないのではないか?
「思い当たる節があるようだね。その目的を潰すか、変えるかしたら、そこに行かずに済むんじゃないかな」
舞ちゃんが部長の手中にある以上、目的を潰すことは難しい。そのため、俺が倉庫に向かわない選択肢もありえない。
しかし、目的を変えさせる……。というのは、アリかもしれない。
「何か思いついたようだね」
俺の顔を見て、淫獣は何かを察したらしい。
「部長は変態だが、変態はプレイの相手は女なら誰でもいいのではないか、と思った。なら、標的を逸らせばいい」
「なるほど。どうやって?」
俺はニヤリと笑い、答えは言わなかった。変わりに、そのまま行動に移し、それを教えてやった。
俺は通りかかった女子高生を捕まえた。
「きゃっ! なに!」
変態……! と叫びかけた口を抑え、俺は倉庫に向かった。
もごもご手の中で叫ぶ女子高生を抑えながら、果たして目的地につく。
そして、俺は迷わずに部長めがけて走り、
「田中君! 誰だその子は!」
「いや――ッ!!」
女子高生を部長に投げた。
部長は女なら何でもいいんだろう。なら、代わりを渡せば、舞ちゃんからロックオンが外れると踏んだ。
幸い、倉庫に直行したおかげで、舞ちゃんは無事だった。服の乱れがないことが、それを照明している。
「舞ちゃん、こっちだ!」
俺はそのままの勢いで舞ちゃんを抱きかかえ、その場を去ろうとした……が、舞ちゃんは踏みとどまり、それを拒絶した。
「田中さん……駄目です。あの子を助けないと」
「いや、舞ちゃん! 今はそれどころじゃ……。あの子のことなら大丈夫だから!」
舞ちゃんには知る由もないが、もうじき警察がくるから、あの女子高生の身には何も起きない。事は未遂に終わる。
だから、今は早くこの場から離れよう。
そう説明をしたいところだったが、とにかく時間がない。俺は必死に、大丈夫だから、と繰り返した。
「だから駄目です!! 私の代わりにあの子を……」
次第に、舞ちゃんは泣きそうになっていった。
「田中さん、そんな人だったなんて……。残念です」
●
もしかして、残念って言われたらループするとかなの?
怒鳴る部長を前にして、俺はまたやり直しになっることに気がついた。
「どーしたらいいんだよぉーっ!」
「え……? なになに?」
窓に向かっていた部長が、困惑して立ち止まる。
部長を生かしててもダメ。倉庫に間に合ってもダメ。ターゲットを入れ替えてもダメ。
あれもこれもダメ。
「何がそんなに残念なんだよ――!!」
「いや、田中君……ねえ」
もとはと言えば全部コイツのせいじゃないか。
お前が自暴自棄になって舞ちゃんを誘拐するから、俺がこんな目に合っているんだろ。
「うるさい! 全部お前のせい! 頭おかしくなるわ!」
俺は部長に掴みかかった。
勢いに呑まれ、部長は呆然とする。
……あれ? ここで今、部長をやっつければ、全部解決するんじゃないか?
だとすれば、今が絶好の機会。
部長が空に飛んでいく前に、ここで部長をどうにかしよう。
そう思って、俺は部長に殴りかかった。いつの時と同じように、何度も顔面を殴りつけた。
拳を振りかぶった時、ふと、部長と目があった。
興奮していて気が付かなかったが、部長は悲しそうな表情で俺を見ていたのだ。
なんですか、その表情……。
「部長……」
「田中君、残念だよ」
俺は、再び怒鳴る部長を前にしていた。
「君が彼女を呼ばないのなら、私が迎えにいく! どこの学校なのかも分かっているからね!」
で、また出ていくんですよね。止めても無駄なんですもんね。
そう思っていると、案の定、部長は窓を壊して出ていった。
どうしたら間に合うのか考える時間も与えられず、とりあえず俺は部長を追いかける。
だふん、今こうして中学校に向かっているが、舞ちゃんが拐われるまでに着くことはできない気がする。過去2回とも、部長が中学校を出ていく姿すら見ていない。
そうすると、そこから倉庫に向かったのでは、かなりのタイムラグが生じることになるから、最初から倉庫に向かって走ればいいのでは?
「良いこと思いついた!」
そこまで思考が至り、嬉しくなって俺はガッツポーズした。
このまま倉庫に向かおう。それなら間に合う。
「やぁ、大二郎」
その途中、淫獣が話しかけてきた。
ルートを変えても、こいつは来るらしい。
「なんだ、俺は忙しい。視覚の共有とかはいらないぞ」
「あ、なんだ。知ってたんだ」
さほど淫獣は驚いていないらしい。
残念がりもせず、しようと思った提案を簡単に引き下げる。
「ところで大二郎。どうやって舞を助けるつもりだい?」
「今それを考えてんだ」
考えながら走ってるんだから、気を散らせないで欲しい。何が目的なのか、淫獣は続ける。
「大二郎が向かおとしてる所だけど、警察も向かってるようだ。このままいくと、鉢合わせになると思うけど」
「じゃあ、どうしろと? 行かない選択はないからな」
今までそれは教えてくれなかったくせに、ルートが変わると教えてくれるのか。
確かに、警察がくるのは俺が倉庫について、部長を倒してからすぐだ。時間にして数分程度。こいつの言う通り、このまま部長と戦ってから舞ちゃんを助けるとなると、また警察と鉢合わせして捕まえられるだろう。
かと言って、俺が倉庫に向かわずして、舞ちゃんの無事はない。
警察が来るのは、あまりに遅すぎる。
「そもそも、部長は何がしたいんだろう?」
「何ってそれは……」
言うのは憚られるが、部長は残り少ない寿命に絶望して、自分のやりたい事を我慢しないようになった。
……我慢? 何を?
思えば、部長は舞ちゃん自体に固執してるわけではないのではないか?
「思い当たる節があるようだね。その目的を潰すか、変えるかしたら、そこに行かずに済むんじゃないかな」
舞ちゃんが部長の手中にある以上、目的を潰すことは難しい。そのため、俺が倉庫に向かわない選択肢もありえない。
しかし、目的を変えさせる……。というのは、アリかもしれない。
「何か思いついたようだね」
俺の顔を見て、淫獣は何かを察したらしい。
「部長は変態だが、変態はプレイの相手は女なら誰でもいいのではないか、と思った。なら、標的を逸らせばいい」
「なるほど。どうやって?」
俺はニヤリと笑い、答えは言わなかった。変わりに、そのまま行動に移し、それを教えてやった。
俺は通りかかった女子高生を捕まえた。
「きゃっ! なに!」
変態……! と叫びかけた口を抑え、俺は倉庫に向かった。
もごもご手の中で叫ぶ女子高生を抑えながら、果たして目的地につく。
そして、俺は迷わずに部長めがけて走り、
「田中君! 誰だその子は!」
「いや――ッ!!」
女子高生を部長に投げた。
部長は女なら何でもいいんだろう。なら、代わりを渡せば、舞ちゃんからロックオンが外れると踏んだ。
幸い、倉庫に直行したおかげで、舞ちゃんは無事だった。服の乱れがないことが、それを照明している。
「舞ちゃん、こっちだ!」
俺はそのままの勢いで舞ちゃんを抱きかかえ、その場を去ろうとした……が、舞ちゃんは踏みとどまり、それを拒絶した。
「田中さん……駄目です。あの子を助けないと」
「いや、舞ちゃん! 今はそれどころじゃ……。あの子のことなら大丈夫だから!」
舞ちゃんには知る由もないが、もうじき警察がくるから、あの女子高生の身には何も起きない。事は未遂に終わる。
だから、今は早くこの場から離れよう。
そう説明をしたいところだったが、とにかく時間がない。俺は必死に、大丈夫だから、と繰り返した。
「だから駄目です!! 私の代わりにあの子を……」
次第に、舞ちゃんは泣きそうになっていった。
「田中さん、そんな人だったなんて……。残念です」
●
もしかして、残念って言われたらループするとかなの?
怒鳴る部長を前にして、俺はまたやり直しになっることに気がついた。
「どーしたらいいんだよぉーっ!」
「え……? なになに?」
窓に向かっていた部長が、困惑して立ち止まる。
部長を生かしててもダメ。倉庫に間に合ってもダメ。ターゲットを入れ替えてもダメ。
あれもこれもダメ。
「何がそんなに残念なんだよ――!!」
「いや、田中君……ねえ」
もとはと言えば全部コイツのせいじゃないか。
お前が自暴自棄になって舞ちゃんを誘拐するから、俺がこんな目に合っているんだろ。
「うるさい! 全部お前のせい! 頭おかしくなるわ!」
俺は部長に掴みかかった。
勢いに呑まれ、部長は呆然とする。
……あれ? ここで今、部長をやっつければ、全部解決するんじゃないか?
だとすれば、今が絶好の機会。
部長が空に飛んでいく前に、ここで部長をどうにかしよう。
そう思って、俺は部長に殴りかかった。いつの時と同じように、何度も顔面を殴りつけた。
拳を振りかぶった時、ふと、部長と目があった。
興奮していて気が付かなかったが、部長は悲しそうな表情で俺を見ていたのだ。
なんですか、その表情……。
「部長……」
「田中君、残念だよ」
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