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#4
しおりを挟む三尋となづなはやや早い足取りで、五組の教室へ向かった。案の定クラスメイトは突然の転校生に驚いていたが、嬉しそうに三尋のことを歓迎していた。
「よろしくな、国崎」
「転校生が来るなんてな。でもめちゃくちゃ嬉しいよなぁー!」
周りは盛り上がった様子で三尋を取り囲む。あからさまにとても喜んでいた。が、その喜び方が少しおかしい。
「クラスに一人増えたってことだよな。……良かった!」
嬉しいというより、……“安心”している。
安心の裏返しは、なにかに対する恐怖。
彼らは怯えている。三尋の目にはそう映った。
変なの……。
次の休み時間中には、なづながやってきた。
「三尋、分かんないことがあったら何でも聴いてね。勉強とか、学校の中とか。分かんないことだらけだろうけど」
「ありがと。お前ホントやさしーよな。何か、お前がいて良かった。……ホッとするわ」
「な、何言ってんだよ。お互いさまだろ」
何故か、なづなは頬を赤らめてそっぽを向いた。
「そういえば三尋、前は共学だったんだよね? 彼女いた?」
「いないよ。だから男子校でも、そんなにショックじゃないよ。どうせ後ちょっとで卒業だし」
「そっかぁ~。意外だね。三尋かっこいいのに」
「褒めても何も出ねえよ」
ふざけて肩を押すと、なづなは楽しそうに笑った。
「嘘じゃなくて本当にかっこいいよ。背も高いし……俺とは全然違う。男しかいないこの学校には勿体ないよ」
「お前こそ、共学だったら絶対モテてたって。モデルみたいな綺麗な顔してんじゃん」
「綺麗って……男だからなぁ、俺」
なづなは困った顔で腕を組む。ところがその一挙一動が、何かと可愛らしい。癒される奴だ。
場所を覚えたり、人の顔や名前を覚えたり。神経をつかって疲れはしたが、あっという間に一日が終わった。緊張していたわりに、必死だったせいか授業が終わるのもとても早かった。
放課後帰り支度をしてると、一人の男子生徒が教室のドアを勢いよく開けて叫んだ。
「オイやべぇよ、二組の生贄決まったって」
生贄?
聞き間違いかと思ったし、聞き慣れない言葉の為すぐにピンとこなかった。
えーと、生贄っていうのは……あの、呪いの儀式をやるときに差し出すアレか。
三尋が冷静に分析してると、周りの生徒達は皆一斉にざわめき出した。
「マジかよ。この前一組の棚沢を犯したばっかじゃん」
「ほんとそれ。早すぎない?」
「誰だよ、二組の生贄は」
三尋は分からなかった。
彼らが今、何について話しているのか。
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