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永遠、代わりの君
#7
しおりを挟む「何だよ。そこまで言ったら言えって」
「……もし二人で行ったら、尚さら悲しくなるなって思ったんです。准さんとお別れするの」
「は!?」
かなり大きな声が出て、自分でもビックリする。
でも、聞き間違いじゃなければ、今……確かに……。
「別れ? どうして?」
「普通にそうなるでしょう。そうならなきゃ准さんが困っちゃいますよ? あ、これまでの生活費は准さんの部屋の引き出しに隠してあります。不足してたらすぐに言ってください」
……いやいや。
もちろん、出て行ってもらわないと困る。けど、そんな突然言われても。
どうしたらいいんだ。俺はまだ、自分の気持ちも分かってないのに。
それすらも言葉にできない。
「准さんと色んな所に行きたい。けど、思い出はあんまり作りたくない。勝手ですいません。俺も今日、初めて気付いたんです。准さんが加東さんを連れて来たときに、何か……イライラしちゃって」
「え?」
待て待て。それって、つまり。
「涼。お前……妬いてんの?」
いや、まさか。
自分で訊いといて笑ってしまった。
だって、涼のする話題なんていつも適当でデリカシーなくて、変な敬語で俺への悪口(主に下ネタ)が含まれてて。
誰かに固執するような言動はなかったはずだ。
それなのに。
「俺もよく分かりません。ただ、准さんが加東さんと仲良くなってるところを見て、嬉しい反面、気持ち悪くなった。これは……妬いてるって言うんですかね」
気持ち悪くなった……?
気分が悪くなったって言いたかったんだな、きっと。
自分の中で納得したけど、未だに信じられない。こいつは、こんな事を言う奴だったか。
自分の素性を、弱みを見せることを嫌ってるように見えた。でも、それも彼の本当の姿だという保証はない。
俺はこいつを知らなすぎるんだ。
もしも加東さんに妬いてるなら。
それはつまり、涼は俺のことがスキ……ってことになる。
「えっと……」
気持ちを落ち着かせようとビールを一口飲んだら、尋常じゃなく噎せこんでしまった。
「わっ、准さん大丈夫ですか!」
「だ、大丈夫。ありがと」
涼からハンカチを受け取って深呼吸する。
こんな情けない二十七歳いないよな……。
涼の気持ち、自分の気持ちすら分かってなかったことに悲しくなる。
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