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First and last
#8
しおりを挟む「創じゃなくて、お前の本当の気持ちを知りたい。だからまた会わなきゃいけなかったんだ。俺はまだ、お前のことを全然知らない!」
張り叫んだ喉と、握りすぎた拳が痛い。それでも、准は想いを打ち明けた。
「疑いたくない気持ちがあったよ。創のことも……それで痛い目に合った。でもさ……」
視界がぼやけ、霞む。自分が今どんな顔をしているのかもわからない。
涼は静かに聴いていた。こんな時ですら、ちょっと笑ってるんだから腹が立つ。
でも。いつも笑顔なのに、いつも寂しそうに見えるんだ。……彼は。
「やっぱり、お前を信じたい。何で、って聴き出したい部分も勿論あるけど。それ以上に、こんな形で別れるのは嫌なんだよ……!」
一緒にいた時間は短くても、それはかけがえのない、宝物のような日々だった。
「全部仕組まれて、作られたものだって分かっていても楽しかった。……お前といた毎日は、ひとりだった時とは全然違うんだ」
────手が触れている。
「何で」
涼は顔を隠すように、横へ向いた。
目眩がする。彼に押し倒されて、頭を打ち付けたせいだろうか?
目元を強く擦る。頭痛や吐き気も一緒にやってきたが、それは多分さっきのジェットコースターのせいで。
「何でそんな……」
胸が熱くて仕方ないのは、……目の前にいるこの青年のせいだ。
「そんなこと言ってくれるんですか? やっぱり、准さんもちょっとおかしいでしょ……っ」
「悪かったな。さすがにもう自覚あるよ」
風が吹いている。ゴンドラを揺らして、すきま風が冷たかった。あぁ……。
涼は瞼を伏せた。
……狂ってる。
誰も彼も、どうしてそんな熱狂的に。
誰かに執着するんだろう。
「准さん」
俺にはちょっと、分からないけど。
「俺……ほんとはずっと、貴方に会いたかった」
「そっか。……俺もだ」
かじかんだ掌を握られる。痛みと緊張が同時にとけていく温かさだった。
……俺“も”?
准の言葉に違和感を覚えながら、涼は必死に感情を殺した。
出来ることなら逃げ出したい。
でも無理だ。なんせ今自分がいるのは地上百メートル。
眩しすぎるライトがつらい。
あの日と同じ……本当に、目眩がしそうな夜だった。
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