欠けるほど、光る

七賀ごふん

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二石

#10

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潔いというか、逞しいというか。俺とは脳の構造が違い過ぎる。
「もしかして嫌ですか? 俺と手を繋ぐの」
「い、嫌じゃないけど。俺らは恋人じゃないし」
「嫌じゃないなら何も問題ないでしょう」
してやったりみたいな笑顔を見せられて、あ、はめられたな、と気付いた。

こいつワンコっぽくしつつ、結構計算してるよなー……。

恋愛経験こそ皆無だけど、俺だってまあまあ生きてるからそれぐらいは分かった。

……。

でも俺は恥ずかしさのが勝ってるけど、透夜はずっとこうしたかったのかもしれない。
この瞬間を夢見て、毎日遅くまで勉強して、汗を流しながら働いて……そう思ったら途端に、彼の存在自体が尊く感じた。

俺はそこまで想ってもらえるような人間じゃないのに。

「透夜は……いつから自分がゲイだって気付いた?」
「俺は、そもそも恋愛感情自体あまり持たなくって。宙さんを好きになった時に、男が好きなんだって気付きました」

ということは、俺が透夜を狂わせたと言っても過言じゃない。すごく責任感じる。

「宙さんは?」
「んー……俺、初恋が同じクラスの男だったから。まぁもちろん何もなく終わったけど」

何もないどころか、クラスで浮いてから気まずくなって、俺の方も関わらないようにしていたと思う。俺といたら彼まで除け者にされるから。
昏い過去に傾きそうになっていたが、透夜が無表情なことに気付いて首を傾げる。

「どうした?」
「その初恋の相手……今も生きてるんですかね」

何その発想。まさか殺るつもりか。

「……死んだんじゃないかな。俺の中では死んだも同然だし」
「そうか~」

花弁でも舞いそうなほどホクホクしてる透夜に安堵しつつ、恐怖を覚える。
かつての親友を心の中で勝手に殺したことに謝罪して、夜空を見上げた。

「はー、本当面白い」
「何がですか?」
「お前と初めて会った時、ここまでグイグイこられるとは夢にも思わなかった。もっと言えば、友達みたいに遊ぶ関係になるとも思ってなかったし。人生何があるか分かんないよな」

ゴミ箱を見つけたので、透夜の分の空のカップも投函口に入れた。

「あの時はただ、挙動不審な子が来たな~って思ってたんだ。照れてるだけだって分かってからは可愛かったけど」
「だって、あの時のお店は入口がファンシーで男が入る雰囲気じゃなかったんですもん」
「そうかもな。叔父さんは気まぐれだから」

圧倒的に女性客が多いし、取り扱ってるのもアクセサリーがメインだったから、男一人で入る感じじゃなかった。透夜が気まずそうにしていたのも分かる。

「でも店員さんが男性だったから、ちょっとホッとしたのを覚えてます」




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