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時
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しおりを挟む「本当に大丈夫ですよ……」
「バレる嘘はよせ。里川さんに何されたんだ」
「あはは……。もう……品場さんだってよく知ってるでしょ? あの人はポジティブな変態だって」
今度は状況を意に介さず、感情のままに吐き捨てた。
彼は肩を震わせて笑っている。いや……むしろ泣いてるのかと思ったけど、気が昂っているだけのようだ。
泣いていたとしても、今の自分に何ができただろう。慰めの言葉も励ましの言葉も白々しく、空々しいだけだ。彼が思っている通り、危険を分かっていながら里川の担当を丸投げしたのだから。
「……すまない」
だから当然、謝罪の言葉も虚しい速度で墜落する。彼に届く前に消滅した気がした。今さら謝ったところでどうにもならないと思うのに、それでも溢れて止まらない。
すまないと何度も繰り返した。何回呟いたのかも分からなくなった頃、「もういいです」と制止がかかった。
「謝らないでください。品場さんが謝ることなんて何もないんですよ。……でもこんな姿見られたくなかった。さっき来てくれた時、実はすごく恨めしく思いました」
影山は乱れた前髪を払う。
「でもやっぱり、来てくれて嬉しかった気持ちの方が……ちょっとだけ、勝ってた」
俯いていた顔が上がる。こんな状況でも、影山は微笑んでいた。
「頑張るな、って言われてたのに。褒められたかったからかな。でも俺もそういうの柄じゃないから、失敗しちゃいました」
「……馬鹿」
そこで素直に褒めてやれば良かったのかもしれない。そうすればまだ、“上司”としては及第点だった。
けど頭を撫でていた手は自然と下へ伸び、頬や首筋をなぞって温度を確かめていた。願望がそのまま表れ、利口に実行している。
俺は影山をどうしたいんだろう。
冷静な自分が離れた場所で俯瞰している。どうしたい……とかではなくて、ただ単に触れたいんだ。
彼が泣かないかどうか、傍で確かめたい。
不意に顔を上げた影山と目が合い、思わず息を飲んだ。
「品場さんって、やっぱりそっちの人だったんですか」
この状況で違うと言っても虚しい結果に終わる。しかしそうだと言い切るには証拠が乏しい。
「正直未だによく分かんないな。お前に何しようとしてんのかもよく分からない」
「品場さんが分からないんじゃ俺にも分からないや」
影山は笑った。不思議な人、と可笑しそうに。
「貴方のこと、まだ全然分かりません。でも何でなのか、全然嫌じゃない。というか、怖くない」
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