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嘘
#17
しおりを挟むあの夜、……行木に、雲井の行為を受け入れていたことを伝えた。
幸せな時は知らない相手にも無条件で優しくなれる。不幸な時は大切な人すら陥れようとする。
暗くなっている時は優しくする余裕がないんだ。むしろ皆も自分のように苦しんでほしいと思ってしまうから、俺は悪人のカテゴリーに属している。
だけど明るい時は自分を犠牲にしてでも人を助けたいと思う。欲望を捨て、平和、幸せを謳う。
本当の俺はどっちだ。
「おえぇ……っ!!」
トイレに駆け込み、便器に抱き着きながら胃液を吐き出した。
出せるものなんて何もないのに、口に指を突っ込んで何度も吐こうとする。耳鳴りが止まない。ずっと彼の声がする。
……所長……。
大丈夫です。
俺が、勘違いしちゃっただけですから。
頭が割れそうに痛い。肉を叩く音、冷気、異臭。暗い空間。
行木の声がずっと反響している。まるで傍で囁かれているようでおかしくなる。
違う、違う! これは幻聴だ。病気によるものだ。あぁでも、今すぐ耳にナイフを立てて鼓膜を切り裂きたい。
「影山!」
トイレから這いずり出た瞬間、現れた人物に腕を掴まれる。品場さんだ。さっきまで休んでいたはずだけど、うるさくしたから起こしてしまったようだ。
「ちょっと来い」
そのままシャワールームに連れて行かれ、汚れたシャツを脱がされた。頭からぬるいお湯が降りかかる。床に叩きつけられる飛沫を見下ろしていた。
彼とホテルに泊まって、セックスして、寝て、でも熟睡はできなくて、何度も夜中に起きて吐いてしまう。
彼は申し訳ないほど献身的に世話をしてくれた。どうして……と思うほど、壊れていく自分を心配した。
こんなにも醜く、汚れた人間の傍にいてくれる。
「俺また“ああ”なって……自分から入所者を誘ったんです。それで少しでも彼が落ち着いて、問題行動が収まるなら構わないかなって思った」
お湯が出っぱなしの密室で、床に崩れ落ちる。品場は服を着たまま、袖と裾だけ捲り上げた。
「だけど俺が襲われてると思った他の入所者が、怒って彼を殴ったんです。何度も何度も……でも止められなかった。もし止めて、本当のことを話したら、今度は俺が殺されると思ったから。……けどそんなの、殴られた彼が回復して警察に話したらどのみちバレちゃうじゃないですか。なので本当のことを話しました」
「その後は?」
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