カテゴリー

七賀ごふん

文字の大きさ
61 / 93

#18

しおりを挟む



説明不足な上支離滅裂だが、品場は自分なりに推察しているようだった。影山は顔を覆っていた手を離した。

「留置所に連れて行かれてすぐ、彼がおかしくなったと連絡がきました。この病は暗所や閉所で過ごすとパニックになることがあるから、条件が重なって病状が悪化したんだと思います。今は入院して、薬を投与されてるらしくて」
「そうか」

品場は深いため息をついた。過去に戻れるのなら……その相談者が助けに入った時、影山は何がなんでも彼を止めて、説明しないといけなかった。
だが何年も前から、影山もこの病に蝕まれ、正常心が息絶えていたのだ。それを知りながら、隔離施設で働くことを黙認していた自分も罪がある。
過去の失敗を振り返ったらキリがないが、これからどうするか考えなければ。

「一番良いのは……お前が警察に本当のことを言うことだ。強姦されたのではなく、合意の上だったと。そして、お前もこの病気の罹患者だと。きっと今検査したら、お前も即入院だ。それぐらい酷い……以前会った時とは比べものにならないほど悪化してる」

病に罹りながら、誰よりも近い場所で患者達と関わり続けた……今の影山ほど危険な人物はいない。本来ならすぐにでも入院して、適切な処置を受けないといけない。
だが善人の彼がそれを拒む。まだ働かないといけない、まだ誰かを助けなければいけないと。

「行木さんがおかしくなったのも、雲井さんが大怪我をしたのも、全部俺のせいなんです。ああ……でも、仕方なかったんですよね。ああするしか雲井さんを落ち着かせることはできなかった。……そうか! じゃあやっぱり行木さんが悪いんですよ。あんなに殴る必要がどこにあんだって」

影山は爪を強く噛み、ぶつぶつと唱え出した。
「俺は悪くない。悪くない……ふ、ふっ……あはははは! はっはっは! ああ!」
狂気に満ちた笑い声が鳴り止まない。無意識にシャワーを強めた。
「みんなみんな死ねばいい。明るい奴なんて大っ嫌いだ。暗くて僻んだ奴が……ふふっ、大好き」
バスタブに寄りかかるようにして、彼は震えていた。やがて笑い声は泣き声に変わり、影山は嗚咽した。天井を見上げ、幼い子どものように手放しで涙を流した。

「うああああぁぁぁっ! うっうぅ……あぁああああ、うわああああぁぁっ!」

悲痛な叫びが品場の鼓膜を突き刺す。
壁を蹴って叫ぶ彼は、駄々を捏ねる子どものようだ。
この病はとても利口だ。影山という人間の理性を一つずつ、段階を踏んで殺していく。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18+BL】空に月が輝く時

hosimure
BL
仕事が終わり、アパートへ戻ると、部屋の扉の前に誰かがいた。 そこにいたのは8年前、俺を最悪な形でフッた兄貴の親友だった。 告白した俺に、「大キライだ」と言っておいて、今更何の用なんだか…。 ★BL小説&R18です。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

向日葵畑で手を繋ごう

舞々
BL
琥珀は付き合っていた彼氏に「やっぱり男とは手が繋げない」とフラれてしまい、そこから更に人を避けて生きるようになった。笑うことさえなくなった琥珀を心配した母親は、琥珀の夏休み期間だけ自分の生まれ故郷である秩父へと送り出す。そこで久しぶりに再会した悠介は、琥珀のことを子ども扱いするものの、事あるごとに自然と手を繋いでくれる。秩父の自然に触れながら、琥珀はいつしか明るく優しい悠介に惹かれていったのだった。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

【R18+BL】狂恋~狂おしい恋に身を焦がす~

hosimure
BL
10年前、好奇心から男と付き合っていたオレは、自分の浅はかさを知って勝手にアイツから離れて行った。 その後、全てのことから逃げるように生きてきたのに、アイツがオレの会社へやって来た。 10年前のケリをつけに……。 BL小説・「狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~」がボイス付きアニメ動画になりました! YouTubeの「BLoveチャンネル」にて、ボイス付きのアニメ動画になりました! 数話に渡って見られますので、よろしければこちらもご覧になってください♪ 【BL動画】10年前に裏切った恋人が会社にやってきて…!?【BLoveチャンネル】 https://youtu.be/8Ggznxoor98?si=l7CmNGRVOQvnDYUJ 原作: 狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~ 著者: 星群彩佳 挿絵:星磨 (一部差分:BLoveチャンネル) 声優:胡桃屋 動画編集:ヘリオドール 制作:BLoveチャンネル BGM:DOVA-SYNDROME 一部背景:みりんちえ ★著者名がこちらとは違っていますが、同一人物です。

処理中です...