恋の闇路の向こう側

七賀ごふん

文字の大きさ
7 / 28
お迎え

#7

しおりを挟む



こうなることは分かっていた。
分かっていたけど、受け入れられるかは別の話だ。

「貴島君、次移動教室だよ」
「視聴覚室行ったことないよね? 案内するから一緒に行こ~!」
「いや、ちょっと……」

……っ!!

女子達に半分拉致されてる貴島を見つけ、フラッとした。

貴島が転校してきてからはや一週間。だいぶ学校の雰囲気にも慣れてきたようで、そこは安心していた。
けど慣れてきたのは女子達も同じ。勿論、男子勢もだ。

貴島は特別落ち着いてるだけで、冗談を言えば笑って返している。何となく貴島に怖いイメージを持っていた男子達も、段々彼に積極的に関わるようになった。

とは言え下心半分なことも分かってる。貴島と一緒にいれば女子と仲良くなれると思ってるんだろう。

「貴島! お前部活入んないの?」
「俺はバイトしようと思ってるから」
「へー。川音と同じ料理部に入ると思ってた。じゃあ今度皆でカラオケ行こうぜ。女子も呼んでさ~……」

…………。

遠巻きに貴島とクラスメイト達のやりとりを見守り、腕を組む。

俺としたことが、ちょっと油断した。気付けば貴島は、常に誰かに囲まれてる状況になっていた。

でも一旦立ち止まって考えてほしい。俺が一年半かけて手に入れた優等生カードの有効期限がわずか一週間だなんて、誰が思うんだ。

ついこの間まで貴島の隣で通訳係みたいなことができたのに、今は入り込む余地がない。普通に押しのけられるし、あれ、川音君いたの? みたいな反応をされる。

「何か、最近の川音は影が薄いなー」

と、ふらふら隣にやって来たのは同じクラスの都波。チャラ男でいつも遊んでるのに成績優秀という、特殊なタイプ。

「前はみんなして川音君がー、って言ってたのにさ。薄情だと思わない?」
「はは、そんなこと……自分の時間ができてむしろ嬉しいよ。貴島君は人気出て当たり前の超イケメンだし」

ここで弱みを見せてはいけない。努めて穏やかに微笑むと、都波は前に屈み、耳打ちした。

「そのイイコちゃんキャラ、そろそろやめれば? 貴島が来た以上、もう覇権は奪えないだろうし」
「……っ!」

教科書を開こうとした手を止め、思わず彼を見返す。
誰にも触れられたくない部分に手を突っ込まれたみたいで、顔が熱くなった。

「前は白原高校と言えば川音君って感じだったけど。知ってる? お前のファンクラブのメンバー、ほとんど貴島に流れてるぞ」
「え? そそそうなんだ。でも別にいいよ。ファンがいるから何だって話だし」

嘘だ。俺が一年半かけて築き上げた地位が一週間で崩壊したことに衝撃を受けてる。
そんな俺の心を見透かすように、都波は目を細めた。

「そう? パッと見、今までのお前はファン作りに躍起になってた気がするけど」
「う……」

ほんと、痛いところ突いてくるな。
教科書で顔の下半分を隠すも、簡単に奪われてしまう。彼は声を潜め、俺の机に肩肘をついた。

「優等生キャラよりクールで大人キャラの優勝ってことだ。俺だって前は学校一のギャル男で人気あったのに、お前に女の子ファンとられたんだぞ。アイドルは代替わりする、コレこの世の理」

あれ、ギャル男なのか。チャラ男だと思ってて申し訳ない。
っていうか両者の違いって何だ?
ギャル男はファッションに重きをおき、チャラ男は何か一人でもウェイウェイ言ってる印象がある。どっちもクラスの中心人物だけど、やっぱり文化的背景が異なるのかもしれない。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい

マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。 しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。 社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。 新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で…… あの夏の日々が蘇る。

失恋したのに離してくれないから友達卒業式をすることになった人たちの話

雷尾
BL
攻のトラウマ描写あります。高校生たちのお話。 主人公(受) 園山 翔(そのやまかける) 攻 城島 涼(きじまりょう) 攻の恋人 高梨 詩(たかなしうた)

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

だって、君は210日のポラリス

大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺 モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。 一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、 突然人生の岐路に立たされた。 ――立春から210日、夏休みの終わる頃。 それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて―― 📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。  エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

処理中です...