恋の闇路の向こう側

七賀ごふん

文字の大きさ
22 / 28
元通り

#2

しおりを挟む

ひそかに懸想した。胸の高鳴りを掻き消すように、月仁は告げる。

「好きだ、深白。友達としてとか、幼馴染としてじゃなく。恋人として、お前の傍にいたい」

触れ合ってる部分が熱い。とけそうだ。

深白は月仁の告白に耳を傾けながら、止まらない涙を拭った。

こんな月仁、初めて見た……。
俺と同じ。今にも泣きそうだ。でも力強くて、優しい声をしている。

月仁もずっと苦しくて、ひとりで堪えてたんだ。

「俺も……俺も、月仁が好き。大好きだよ。もう、絶対離れたくない……!」

何年も想い続けたひと。愛しくて大切なひと。
やっと言えた。

越えちゃいけない壁なのかもしれない。でも、俺達は同じタイミングで乗り越えた。

薄暗い倉庫室で、わずかに射し込む光を頼りに。
膝を立てて、月仁と唇を重ねた。

必死だったせいか、恥ずかしい気持ちはあまりない。嬉しくて、背中に添えられた掌が温かかった。
学校でなんてことしてんだ……とか。
月仁も同性愛者だったんだ……とか。
色んな考えが頭の中でぐるぐる回ったけど、大した力にはならなかった。

想いが通じた。全てはそこに辿り着き、集約される。

子どもみたいに泣きじゃくる俺を、月仁は何も言わずに抱き締めた。

「大丈夫」と、おまじないのように。

そういえば昔も泣く度に月仁に抱き締められ、襟をぬらしていた気がした。彼はもう忘れてそうだけど、今頃思い出して恥ずかしくなる。

何度か深呼吸し、ゆっくりと月仁から離れた(何故か彼の膝に乗せられてるけど)。

「ごめん。一回落ち着くわ」
「別にいいって。つうか俺も……」
「ん?」
「過去最高に荒ぶってる」

また息が当たりそうな距離。秘密を打ち明けるように、月仁は囁いた。

「お前のこと、めちゃくちゃに甘やかしたい」
「おま……っ」

思わず顔を手で隠す。
両想いになれたのは嬉しいけど、月仁はいきなり甘い台詞を吐き過ぎだ。
それともこれが普通なんだろうか。俺はまだ、そういう台詞は言えないのに。

彼は慣れきってるみたいだ。落ち着いてるのはいつものことだとしても、俺に拒絶されるかも、なんて不安は少しもなさそう。

自信がある、とは違うか。
やっぱり、俺を信頼してくれてるんだ。

「深白。したいこと全部言って」
「えっ?」
「いっぱいあるんじゃないのか? 一緒に遊びに行ったり、お揃いのもの買ったり」

頬に手が添えられる。それは温もりを確かめるように、俺の唇をなぞった。

「もっと、触れ合ったりさ」
「う……」

月仁が見せる笑顔は、破壊力が凄まじい。
女子達が虜になるのもよく分かる。ずっと見ていたいほど綺麗なのに、それが自分に向けられてると思ったら……とてもじゃないけど、平静ではいられない。

俺じゃなくても舞い上がるはずだ。だから俺がここでアホな発言をしても仕方ない。ということにしてほしい。

「……したい」

月仁の膝に手をつき、俯きがちに零した。

「毎日一緒に飯食いたいし、どこ行くにも一緒にいたい。ていうか、堂々としたい。お前はずっ…………と前から俺のもんなんだってことを、全校生徒に教えたい」
「ははっ! そりゃいいな」

あまりに暴君っぽいけど、これは不安の裏返しだ。
月仁を独占したい気持ちは確かにある。でも本当は、彼の隣にいられるか分からなくて、怖いだけ。

でもそんな弱さを隠すのはやめだ。全部晒して、伝えよう。これからも彼の傍にいる為に。

「月仁に触れたいし。あっ……甘えたい」

言った。
むちゃくちゃ恥ずかしくて卒倒しそうだ。

キュンとする告白のはずが、半泣きになってる。

「……引いた?」
「引くわけないだろ。甘えろって、俺が言ってるんだから」
「そうだけどさぁ……改めて言うのは勇気いる」

またグスグス鼻をすすりながら言うと、月仁は腹を押さえて笑った。

「確かにそうだな。よく頑張ったよ。偉い」
「何か取ってつけた感じだな」
「本音だって。お前はこうと決めたらやり抜く奴だし。変なところで男気あるからな」

俺のはだけた襟元を直し、前髪を整える。
月仁はふぅと息をつき、満足そうに呟いた。

「でも俺は、素直な深白が大好き」
「ん……」

せっかくの告白場所が倉庫室ってどうなんだろ、と思ってた。でも今はここで本当に良かったと痛感する。

俺は今、相当ニヤけてるはずだから。薄暗い場所で、少しはアホっぽさが薄れてることを願おう。

「わっ!?」

と思ったのも束の間。
入った時と同じく、再び抱き抱えられてしまった。
しかもそのままずんずんと歩き、月仁は外に出た。

「うわ……眩しい」
「ほんと……てか早く下ろせって!」

いきなりどうしたって言うんだ。
月仁の考えが分からず必死に訴えたが、なんと彼はそのまま歩き出した。

「おい、月仁!?」
「大丈夫。行こう? 深白」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい

マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。 しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。 社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。 新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で…… あの夏の日々が蘇る。

失恋したのに離してくれないから友達卒業式をすることになった人たちの話

雷尾
BL
攻のトラウマ描写あります。高校生たちのお話。 主人公(受) 園山 翔(そのやまかける) 攻 城島 涼(きじまりょう) 攻の恋人 高梨 詩(たかなしうた)

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

だって、君は210日のポラリス

大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺 モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。 一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、 突然人生の岐路に立たされた。 ――立春から210日、夏休みの終わる頃。 それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて―― 📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。  エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

処理中です...