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#13
しおりを挟む陽だまりのような笑顔に、反射的に頷いていた。
( こういうところがな……悔しいけど、絶対敵わない )
後ずさりそうな時に、彼は必ず手を引いてくれる。
学生の時みたいに他愛もない話で笑い合って、ワインで乾杯した。
目の前の大窓から見える夜景は宝石を散りばめたように輝き、まるで別世界だった。
「改めて。二十六歳の誕生日おめでとう、弦美」
「ありがとう。何か照れるな」
夫婦や若いカップルばかりでソワソワしたけど、友悠が落ち着いてるから妙に安心した。
相変わらず心乱さないというか、周りの目を気にしない。そういうところも本当に尊敬している。
「お前が誕生日のときは俺も良いとこ予約するよ。ここみたいに夜景が綺麗な店……あ、いっそクルーズとか? ジャズを演奏してくれるコースも良いな!」
「はは。嬉しいけど、もはやデートプランだな」
友悠はワインをあおり、口角を上げた。
「プロポーズする流れになりそうだ」
「あっ……た、確かに」
運ばれてきた料理を慎重に切り分ける。
友悠にプロポーズ。……したら、どうなるんだろう。
いや、考えるまでもない。長年築き上げた友情は一瞬で崩壊し、もう会うことはないだろう。
こんなに楽しい時間も手放すことになる。
暗くなって俯きかけたが、友悠はグラスを置き、俺のことを見つめた。
「場所なんてどこでもいいよ。お前が祝ってくれるなら」
あまりに淡々として、思わず聞き逃しそうになった。
食事する手を止め、慌てて彼の方を見る。
「弦美、昨日電話で言ってたよな。俺が幸せになれればいい、って。あれ聞いたとき笑いそうになった。俺も全く同じことを思ってたんだ。……ずっと昔から」
窓に映る自分達に目を眇めながら、友悠は愛おしそうに呟いた。
「だから、二人で幸せにならないとな」
「う……うん」
こんな時でも周りの空気を壊さないように気を張り、……頷いた。
友悠も俺の幸せを願ってくれている。それが分かってすごく嬉しい。
でも、会えるだけで幸せだと思わなきゃ。これ以上を望んだら、バチがあたる気がする。
難儀だ。悋気なんて感じる体質じゃなかったとしても、俺は多分臆病な性格で。彼にプロポーズするなんてことはできなかっただろう。
世界で一番大事な存在。────だからこそ。
レストランを出て、ふと考える。
あと何年、こんな風に彼の隣を歩けるだろう。結婚すれば友人と遊ぶ機会は減る。友悠の周りは魅力的な女性がたくさんいるだろうし、いつ“終わり”が来てもおかしくない。
……本気で覚悟しとかないとな。
エレベーターの手前でスイッチを押そうとしたとき、不意に友悠のスマホが鳴った。
「あ。悪い、ちょっと出ていいか?」
「あぁ、急がなくて大丈夫だよ」
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