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第3章

13話目

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セラールさんとの話が終わり気が付くと、ピュアちゃんとウォルフが気遣う様に私を見ていた。
慌てて二人には心配無い事を伝えておいたが、『何の話をしていたかは秘密だ』と言うと少しだけ拗ねていた。
いくら大切な二人でも、さすがに言えないよね・・・。

さあ、気持ちを切り換えて次は何をしようかな~。
神殿を出て何処に行きたいかを、話ながら歩いていると人だかりが出来ているのを発見する。
興味が出て覗いて見ると、そこにはお腹が脹れて苦しそうにもがいている、エルフやドワーフの人達で溢れていた。
観察して解った事はこれが『土着病』だという事。
何故かエルフやドワーフの人達だけがかかる病で、だんだんお腹が脹れていき最後は血を吐き死んでしまう病気・・・。
原因は不明とされているが、現代の地球の医療技術をなめてはいけない、どんな病にも必ず原因は有るのだ。
だからといって、今の私に何が出来るだろうか?
私はよそ者だ、この町の人から信用はされていない只の通りすがりの冒険者。
しかし、少し気になりこっそりと患者の一人に≪鑑定≫をかけてみると、驚きの結果が出た。
まさかの寄生虫が原因だったのだから・・・。
確かに、地球でも寄生虫による疾患は多々有るが、こんな症状は出ないだろう。
呆然としているとまた一人患者が運ばれて来た、周りの人達が『今年は多すぎる』、『この病気にかかったらおしまいだ』等々話しているのが聞こえて来る。
患者の側には何も出来ないと、泣く家族や吹き出る額の汗だけでもと、側に付き添い汗を拭いている人達がいる。
治療師さん達もせめて安らかな死を迎えられる様にと手を尽くしている。
我慢出来なかった、母親に心配かけまいと涙をこらえながら震えている女の子を見たから・・・。

「ねぇ、私にあなたのお母さんを任せてみない?
私ならきっと治してあげれると思うけど、どうかな?」

「エッ?」

驚いた表情をしたのは、女の子だけではなくその母親も驚いている。
そうだよね・・・。赤の他人に突然言われてもね。
無理だよね、信じられる訳が無い。

「母様、…治るの?」

弱々しい声が聞こえる。

「うん、治せるよ」

女の子の両目が見開かれる。

「お、お、お願いします。おねぇちゃん私の母様を治して!
私どんな事でもする!母様が治るのなら・・・どんな事でもするから、助けて!」

私の言葉を聞いた女の子がすがり着いてくる、我慢していただろう両目からは涙があふれでて頬を濡らす。

「うん、解った、あなたのお母さんを助けてあげる。私にまかせてくれる?
お母さん、貴女もそれで良いかな?」

子供だけでなく、母親本人にも確認をとる。

「「お願いいたします」」

答えは一緒だった。
じゃあ、やろうかな。
私はまずバックから取り出す振りをして≪無限収納≫から携帯コンロと小鍋を出し魔法で水を入れて温めはじめる。そして、魔虫草とヒール茸、虹彩花等を出して刻み入れどろどろになるまで煮込んでいく。
薬が用意出来たので、母親に声をかける事にした。
二人とも驚きの表情で私を見つめていた、何故?

「どうしましたか?」

不思議に思って聞いてみると、「有り得ません!今の材料は手に入らないはずです!」と、近くに来ていた治療師さんの叫びが聞こえた。

あっ、しまった、ヤラカシタ、これは越権行為だ!

「すみません!勝手な事をしようとしていました!
ごめんなさい」

私は慌てて治療師さんに謝罪する。
全面的に私が悪い、ここは治療院で有りこの人達の場だ。
部外者の私が勝手をして良い場所ではない。

「そんな事はどうでも良いのです!
今貴女が作っていたのは抗虫薬でしょう?
その材料は現在手に入らないはずです!
どこで手に入れたのですか?
そして、貴女は彼女を治療しようとしましたね?
私達でもこの病は治せないのです、貴女は治療法をご存知なのですか?
ご存知でしたら是非無知な私達にもご教授下さい!」

えっ?私、怒られるんじゃ無いの?
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