転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

文字の大きさ
9 / 42

しおりを挟む
「…ここは」


➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖






いつも通りの昼食も終わり部屋に戻ってぐうたらしてようかと思っていたのだが、リエルに止められた。

「ちょっと待って、カイト兄上。連れて行きたいところがあるんだ」

リエルに言われたものだからしぶしぶついて行くことにした。

俺はてっきりリエルの住むオニキス宮殿に連れて行かれると思っていたのだが、そこは通り過ぎてしまった。

だとしてあと残ったのは、魔術師の塔・研究者の塔・鍛練場だった。
この3つどこに行ったとしても嫌な予感しかなかった。

「…あー、リエル。少しお腹が痛いような気がするのだが」

こうなったら仮病だ。嫌な予感というのは結構当たってしまう。

「大丈夫だよ兄上。もうすぐ着くからね」

顔には、『あー、はいはい。大丈夫そうだな』と書いてあるものだから諦めてついて行く。

そして着いたところは…


➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖ー➖








「…ここは、鍛練場だな」

俺が連れられてやってきたところは、鍛練場だった。だが、そこには練習している騎士や魔術師の姿がなかった。

「何故、ここに?」

そうリエルに問いた俺に返ってきたのは返事ではなく、一本の剣だった。
(お前、召喚魔法も使えるのかよ?!それは高度で俺は成功出来てないのに!)

しかも、ただの木剣ではなく真剣だ。

「カイト兄上、今から闘いましょう。私、本気で闘ってみたかったんです!」

どうやら俺はリエルに嫌われていたらしい。周りから聞こえてくる噂ではリエルはとんでもなく強いらしい。そんなのと真剣で闘ったら負けるどころではない。

しかも、本気で闘う?そんなの無理だろ!

「ほら、剣を持ってください!は魔法使うのなしにします。後で付き合ってくれたお礼もしますから、ねっ?」

お前…今日はと言ったか?気のせいだよな、無理だぞ…
それに何が『ねっ?』だ。逃す気ないだろ!
今のリエルの目は捕食者の目をしている。俺は死を覚悟して剣を持った。

「分かった。付き合ってやるよ」





震えそうになる足と湧き上がる恐怖心、鳴り止まない心臓の音をなんとか抑えようと深呼吸をして剣を構える。

「じゃあ、いくよ」

「…っつ、いいぞ」

リエルの威圧感が一気に身体を襲って、どっと身体が重くなったように感じた。



「3・2・1!」

初まったと同時に剣の交わった音が辺りに響いた。

まさか、俺がリエルの剣を受け止めれるとは思っておらず俺が驚いた。だけど、腕力差や体格差をどうしても感じる。俺は幾ら鍛練をしても筋肉が付かないのだ。

一撃を受け止めるのに必死な俺は気づかなかった…リエルが凄く楽しんでいたということに。

辺りにカキンッカキンッという音が数十分間響き続いていたが、終わりが来た。

俺の体力に限界が来たのだ。
フラッと倒れそうになった俺の身体をリエルが受け止めてくれた。

「お疲れ、カイト兄上。凄く楽しかったよ、ありがとう。付き合ってくれたお礼に何かしたいんだけど…希望あったりする?」

そうだな、疲れたから甘いものが食べたい。

「…お前とお茶したい。できればお前の宮殿で」

一度食べてみたいのだ。きっと料理長が違うのだ、味も違うのだろう。

「そう言うと思って用意してあるよ。じゃあ、行こうか」

お前は優秀か?あぁ、優秀か…
それにしてもすっごく楽しみだ!
きっと美味しいんだろうなー。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

俺は勇者のお友だち

むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。 2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。

mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】  別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐
BL
 悪逆の限りを尽くした公爵令息を断罪しろ! そんな貴族たちの声が高まった頃、僕の元に、冷酷と恐れられる王子がやって来た。  その男は、かつて貴族たちに疎まれ、王城から遠ざけられた王子だ。昔はよく城の雑用を言いつけられては、魔法使いの僕の元を度々訪れていた。  ひどく無愛想な王子で、僕が挨拶した時も最初は睨むだけだったのに、今は優しく微笑んで、まるで別人だ。  出会ったばかりの頃は、僕の従者まで怯えるような残酷ぶりで、鞭を振り回したこともあったじゃないか。それでも度々僕のところを訪れるたびに、少しずつ、打ち解けたような気がしていた。彼が民を思い、この国を守ろうとしていることは分かっていたし、応援したいと思ったこともある。  しかし、あいつはすでに王位を継がないことが決まっていて、次第に僕の元に来るのはあいつの従者になった。  あいつが僕のもとを訪れなくなってから、貴族たちの噂で聞いた。殿下は、王城で兄たちと協力し、立派に治世に携わっていると。  嬉しかったが、王都の貴族は僕を遠ざけたクズばかり。無事にやっているのかと、少し心配だった。  そんなある日、知らせが来た。僕の屋敷はすでに取り壊されることが決まっていて、僕がしていた結界の魔法の管理は、他の貴族が受け継ぐのだと。  は? 一方的にも程がある。  その直後、あの王子は僕の前に現れた。何と思えば、僕を王城に連れて行くと言う。王族の会議で決まったらしい。  舐めるな。そんな話、勝手に進めるな。  貴族たちの間では、みくびられたら終わりだ。  腕を組んでその男を睨みつける僕は、近づいてくる王子のことが憎らしい反面、見違えるほど楽しそうで、従者からも敬われていて、こんな時だと言うのに、嬉しかった。  だが、それとこれとは話が別だ! 僕を甘く見るなよ。僕にはこれから、やりたいことがたくさんある。  僕は、屋敷で働いてくれていたみんなを知り合いの魔法使いに預け、王族と、それに纏わり付いて甘い汁を吸う貴族たちと戦うことを決意した。  手始めに……  王族など、僕が追い返してやろう!  そう思って対峙したはずなのに、僕を連れ出した王子は、なんだか様子がおかしい。「この馬車は気に入ってもらえなかったか?」だの、「酒は何が好きだ?」だの……それは今、関係ないだろう……それに、少し距離が近すぎるぞ。そうか、喧嘩がしたいのか。おい、待て。なぜ手を握るんだ? あまり近づくな!! 僕は距離を詰められるのがどうしようもなく嫌いなんだぞ!

ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました

藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。 (あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。 ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。 しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。 気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は── 異世界転生ラブラブコメディです。 ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

処理中です...