15 / 42
13
しおりを挟む
ロイと楽しく話していたら、あっという間に目的地であるリエルの執務室についてしまった。
入る為に扉をノックしようとしたら、中から扉が開けられた。
「お帰りなさい、カイト兄上」
開けてくれたのはリエルだった。
急に開けられたものだから、凄く驚いてしまった。
「どうして来たと分かった?」
俺は執務室に誰かが近づいて来ても一回も気づいたことはなかった。リエルも今まで一切気づいた素振りを見せたことがなかった。
「カイト兄上達の楽しそうな話し声が聞こえてきたからね」
執務室は壁が厚くて、周りの音など全く聞こえなかった。お前は耳までいいのか?それとも俺らの声がうるさかったのか…いや、声の大きさはいつも通りだったな。
「そうか…」
「そういえば、カイト兄上の裏にいる男は誰?」
こらー、リエル。睨まないの!怪しい奴じゃないから…
「紹介しよう。今日から俺の従者となったロイだ!」
どうだ、可愛いだろう?
「…なんか……普通」
「こらっ、ベルン!申し訳ございません」
ベルン、お前…そうか。お前らはまだ会話してないから、この可愛さが分からないんだな。
「別に構いませんよ。僕は気にしません」
まるで言い慣れたような言葉。きっと今までも沢山言われてきたのだろう。
この魔国は、貴族が第一から第十五序列まである。前までは第十六まであったのだ。だが、リエルの母である王妃が何か問題を起こした為、その第三序列の家は無くなってしまったらしい。
ロイが生まれたカガルバ家は第五序列。
だが、彼は現当主が孕ませて生まれた子らしい。彼の母は周りからの嫌がらせに耐えられず自殺。俺みたいに周りが敵だらけの中で過ごしてきたのだろう。嫌がらせも受けただろうし、暴言も吐かれたと思う。
もう二度とそんな思いはさせたくないと思った。
「ベルン、ロイに謝れ。言っていいこと
と悪いことがある」
このベルンの思ったことがすぐに口から出ると言うのは長所でもあるが短所でもある。今回は悪い方だ。
「カイト様。俺は確かに平民の出だけど、権限は貴方と同じくらい持ってるよ?確かに失礼かもだけど、こんくらいじゃ謝りたくない」
確かに、ベルンは異能者だから王族の俺と同じくらい権限を持ってる。だから俺が謝れと言って、聞かなくても別にいいのだ。
だけどお前は大切なことを忘れてないか?
「そうだ。お前は俺に従う必要はない。だが、お前はリエルの従者だろう?」
従者、それも次期魔王であるリエルのだ。従者であるベルンが言った言葉はその主であるリエルの言葉として捉えられることもある。
しばらく、考えてたベルンは理解したのかハッという顔をした。
「ごめんなさい、ロイ」
「別にいいですよ、ベルン様」
謝れるようになっただけで一歩前進だ。
「ありがとう、カイト兄上。ロイも私の従者が申し訳ない。こんな奴だが、従者歴は長い。何か困ったことがあったら聞くといいだろう。カイト兄上のことをよろしく」
ベルンがこんなので育ったのはリエルが甘すぎるのもある気がする。
「勿論です」
なんだろうな。この2人の間にバチバチ火花が見える気がする。
「あと、俺の執務室が完成したらしい。明日からはそちらでやることになる。今まで世話になったな」
本当に世話になりっぱなしだった。何も分からない俺に一から教えてくれたのだ。感謝の気持ちでいっぱいだ。
「そうか、寂しくなるな。じゃあ、今日は一緒に執務をする最後の日だね…」
そうだな。確かに明日からはリエルに会う機会が減るだろう。寂しいかもしれない。
「カイト兄上、おいで?」
急に自分の椅子に座りだしたと思ったら、腕を広げた。俺は嫌だぞ?お前の膝の上など二度と登るか!
「カイト様、今大人しく従っておかないと明日大変なことになりますよ」
バラン、そんな恐ろしいことを言うな。ぐっ、仕方ない。明日の平和のためだ。今日だけだからな!
明日もカイト兄上不足と言って、昼食をリエルの膝の上に乗ることになろうとは思っていなかった。
入る為に扉をノックしようとしたら、中から扉が開けられた。
「お帰りなさい、カイト兄上」
開けてくれたのはリエルだった。
急に開けられたものだから、凄く驚いてしまった。
「どうして来たと分かった?」
俺は執務室に誰かが近づいて来ても一回も気づいたことはなかった。リエルも今まで一切気づいた素振りを見せたことがなかった。
「カイト兄上達の楽しそうな話し声が聞こえてきたからね」
執務室は壁が厚くて、周りの音など全く聞こえなかった。お前は耳までいいのか?それとも俺らの声がうるさかったのか…いや、声の大きさはいつも通りだったな。
「そうか…」
「そういえば、カイト兄上の裏にいる男は誰?」
こらー、リエル。睨まないの!怪しい奴じゃないから…
「紹介しよう。今日から俺の従者となったロイだ!」
どうだ、可愛いだろう?
「…なんか……普通」
「こらっ、ベルン!申し訳ございません」
ベルン、お前…そうか。お前らはまだ会話してないから、この可愛さが分からないんだな。
「別に構いませんよ。僕は気にしません」
まるで言い慣れたような言葉。きっと今までも沢山言われてきたのだろう。
この魔国は、貴族が第一から第十五序列まである。前までは第十六まであったのだ。だが、リエルの母である王妃が何か問題を起こした為、その第三序列の家は無くなってしまったらしい。
ロイが生まれたカガルバ家は第五序列。
だが、彼は現当主が孕ませて生まれた子らしい。彼の母は周りからの嫌がらせに耐えられず自殺。俺みたいに周りが敵だらけの中で過ごしてきたのだろう。嫌がらせも受けただろうし、暴言も吐かれたと思う。
もう二度とそんな思いはさせたくないと思った。
「ベルン、ロイに謝れ。言っていいこと
と悪いことがある」
このベルンの思ったことがすぐに口から出ると言うのは長所でもあるが短所でもある。今回は悪い方だ。
「カイト様。俺は確かに平民の出だけど、権限は貴方と同じくらい持ってるよ?確かに失礼かもだけど、こんくらいじゃ謝りたくない」
確かに、ベルンは異能者だから王族の俺と同じくらい権限を持ってる。だから俺が謝れと言って、聞かなくても別にいいのだ。
だけどお前は大切なことを忘れてないか?
「そうだ。お前は俺に従う必要はない。だが、お前はリエルの従者だろう?」
従者、それも次期魔王であるリエルのだ。従者であるベルンが言った言葉はその主であるリエルの言葉として捉えられることもある。
しばらく、考えてたベルンは理解したのかハッという顔をした。
「ごめんなさい、ロイ」
「別にいいですよ、ベルン様」
謝れるようになっただけで一歩前進だ。
「ありがとう、カイト兄上。ロイも私の従者が申し訳ない。こんな奴だが、従者歴は長い。何か困ったことがあったら聞くといいだろう。カイト兄上のことをよろしく」
ベルンがこんなので育ったのはリエルが甘すぎるのもある気がする。
「勿論です」
なんだろうな。この2人の間にバチバチ火花が見える気がする。
「あと、俺の執務室が完成したらしい。明日からはそちらでやることになる。今まで世話になったな」
本当に世話になりっぱなしだった。何も分からない俺に一から教えてくれたのだ。感謝の気持ちでいっぱいだ。
「そうか、寂しくなるな。じゃあ、今日は一緒に執務をする最後の日だね…」
そうだな。確かに明日からはリエルに会う機会が減るだろう。寂しいかもしれない。
「カイト兄上、おいで?」
急に自分の椅子に座りだしたと思ったら、腕を広げた。俺は嫌だぞ?お前の膝の上など二度と登るか!
「カイト様、今大人しく従っておかないと明日大変なことになりますよ」
バラン、そんな恐ろしいことを言うな。ぐっ、仕方ない。明日の平和のためだ。今日だけだからな!
明日もカイト兄上不足と言って、昼食をリエルの膝の上に乗ることになろうとは思っていなかった。
24
あなたにおすすめの小説
悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――
ロ
BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」
と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。
「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。
※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)
俺は勇者のお友だち
むぎごはん
BL
俺は王都の隅にある宿屋でバイトをして暮らしている。たまに訪ねてきてくれる騎士のイゼルさんに会えることが、唯一の心の支えとなっている。
2年前、突然この世界に転移してきてしまった主人公が、頑張って生きていくお話。
【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。
mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】
別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
【完結】自称ヒロイン役を完遂した王家の影ですが、断罪パーティーをクリアした後に王太子がぐいぐい来ます。
竜鳴躍
BL
優秀過ぎる王太子×王家の影(失業)。
白い肌に黒髪黒瞳。小柄な体格で――そして両性具有。不出来な体ゆえ実の親に捨てられ、現在はその容姿を含め能力を買われて王家の影をしていたスノウ=ホワイト。男爵令嬢として王太子にハニトラを仕掛け、婚約者を悪役令嬢に仕向けて王太子への最終試験をしていたのだが、王太子は見事その試練を乗り越えた。これでお役御免。学園を退学して通常勤務に戻ろう――――――。
そう思っていたのに、婚約者と婚約解消した王太子がぐいぐい来ます!
王太子が身バレさせたせいで王家の影としてやっていけなくなり、『男子生徒』として学園に通うスノウとそんなスノウを妃にしたくてつきまとう王太子ジョエルの物語。
☆本編終了後にいちゃいちゃと別カップル話続きます。
☆エンディングはお兄ちゃんのおまけ+2ルートです。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
記憶喪失になったら弟の恋人になった
天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。
そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。
そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。
見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。
トラド×ギウリ
(ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる