転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

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ここ最近の魔国は空気が張りつめている。何故ならば人族の国で勇者が召喚されたからだ。本当は魔国では勇者というのは禁句となっている。だからみんな『ある者』と呼んでいるのだ。これは心の声だから、大丈夫だ。

俺もみんなみたいに不安で仕方ない。
魔神のワコール様がみんなを守る為に勇者一行に対して魔王城しか見えない結界を張ってくれる。勿論俺らは避難するから安全だ。
だが、神というのは人に対して直接害を与えることは出来ない。そこでワコール様は魔王に力を与えてくれるのだ。だが、勇者の方も人神から力を与えられている。
神々の戦いに魔王と勇者は巻き込まれているのだ。とはいえ、人神が嫌がらせの為に魔国に勇者を派遣し、それに対してワコール様が対応する感じなのだがな。

迷惑な話だ。人神は人の命を何だと思っている?ただの嫌がらせで人が死ぬというのに…魔王は俺の父上だ。だから、凄く不安なんだ。もしも、死んでしまったらと思うと恐怖でしかない。


だから、俺はその恐怖を忘れる為に執務をがむしゃらにしている。夜が不安で眠れないと食事中に話していたら、リエルが『私も最近眠れないんだ。カイト兄上がいたら眠れるかも…一回、一緒に寝てみない?』そんなわけ…って思っていたら、リエルに抱きしめられるとすぐ眠気が襲ってくるのだ。多分、人の温もりを感じるからかな?
その日から一緒に寝るようになった。


そして、不安によってもう一つ変わったことがある。それは、俺も積極的にリエルの鍛練に付き合うようになったことだ。
前はあんなに嫌がっていたのだが、剣や魔法を打ち合い、汗を流すと何か不安な気持ちがその時だけは薄まるのだ。

おかげさまで、この前まで使えなかった召喚魔法が使えるようになった。とっても便利で、よく忘れ物をするのだが取りに行かなくてもよくなったのだ。


そんな感じで俺のやっている行動はいつもとあまり変わってないが、心の中は大荒れとなっている。





父上が戦う姿は見たことが無いが、強いと思う。欲を言えばどちらも負けて欲しくないし、どちらも死なないでほしい。だけど、それが出来ないというのは流石に知っている。だから、父上には勝ってほしい。

父上と最近打ち解けて、仲良くなれてきたところだった。なのに、これだ。辛すぎだろう。それに父上が万が一負けたら、今度魔王となるのはリエルだ。みんないなくなったら俺は孤独になってしまう。もう、俺はこの前とは違うのだ。
だから、孤独には耐えられなくなった。
もし、1人になってしまったら後を追うだろう。

だから、生きて、お願い…誰も俺を置いて行かないで……1人にしないで。
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