転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃

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俺はまた真っ暗な世界に来ていた。
ただ、今回は俺が此処に来たいと寝る前に願ったから、来れたのだ。

『久方ぶりだな、カイトよ。何か困ったことでもあったか?』

うーん、困ったことというより…聞きたいことがいくつかあるんです。

『そうか、そんなことでいいのか…』

何でそんな悲しそうな顔をしてるんですか。これはワコール様にしか聞けないことだと俺は思いますよ。

『…そうか、そうか。何でも聞くが良い!』

とても楽しそうで何よりです…。
それでは初めに、勇者の剣についてです。俺は傷をなくせば、魔力容量も変わらないと思ってたんですが、違うんですか?

『…うーむ。勇者の剣は我もよく分からぬ。あの人神が目の敵にしている我に性能を教えると思うか?』

いいえ、思いませんね。というか気になってたんですけど、何でそんなに目の敵にされてるんですか?

『多分だが、この世界の唯一の神になりたいんだろう。我がこうして皆を見守れるのは、皆から魔力を少しずつ貰っているからだ。つまり、我を消すために勇者を此方に派遣してきてるのだ…迷惑をかけてすまん』

随分と人神は傲慢な神だな。それにワコール様は何も悪くないですよ。誰もそんなふうに思いませんって。

『そう言ってもらえると気が楽になる。我のせいで死んだものを沢山見てきた。魔王であったり、勇者であったり…だ』

勇者も此方にとったら悪の存在ですけど、普通に人神に騙されて巻き込まれた人間ですもんね。

『あぁ、そうだ。やめさせたいが、我とあやつが正面衝突したらこの世界はなくなるからな…』

それは是非ともやめてもらいたい。

『そうだな、我もそれは嫌だな。
質問は以上か?』

いいえ、もう一つだけ!

『ほう、なんだ?』

あの、魔族って病気にかかりにくいですよね?俺は特に身体が弱くないから、病気にかかりにくいと思うんですよ。

『そうだな…お前は病気にかからないと
思うぞ?』

そうですよね…ただ、最近おかしいんです。なんか急に心臓がキュッてしたり、体温が急上昇するんです。最初は気のせいだと思ってたんですけど、最近は頻繁に起こるようになってしまったんです。

『あぁ、お前、もか………』

お前も…とは?

『いや、何でもない。それでお前はそれが起きる時、リエルがそばにいる時じゃないか?』

そう言われてもな…ずっとリエルはそばにいますし。

『そうだった…あー、じゃあ。その心臓がキュッとなるのは、リエルの目がお前以外の方を見てる時じゃないか?』

うー、言われてみれば確かに?そうかもしれない…リエルがあの双子と楽しそうにしてる時とか、王宮で可愛い子に話しかけられてる時とかによく起きる。

『あぁ、我の勘が当たってしまった』

勘が当たったというのに、全然嬉しそうじゃないご様子だ。

『では、体温が急上昇するのは、リエルといつもより距離が近かったり、沢山触れられてる時じゃないか?』

確かに距離が近いというより、リエルの香りを感じてしまうと体温が急上昇する。
はっ、まさか…?!いや、だがリエルに限ってそんなことするはずない。

『リエルがお前に呪いをかけているとかではないから安心しろ』

それなら良かった…あんなに、くっついてくるのに、俺のことが嫌いだったら、俺はもう誰も信用できない。
…でも、リエルといると何でこんなふうになってしまうんだ?俺はリエルから離れた方がいい?

『いや、絶対に離れるな!むしろ悪化するというより、お前のためだ。リエルから離れるな』

ワコール様が言うならそうします。

『はぁっ、カイトよ。こういうのは自分で気づくべきだが、我は誤魔化すのがとても苦手だ。それにこのまま放っておけば、お前は自分で気づけず大変な目に合うだろう。だから、お前の症状の原因を言っておこう…』

病気じゃないんだよな…?なんか凄く深刻そうなんですけど。

『それは恋というものだ』

…は?コイってあの…俺が前世も合わせて1度もしたことがないやつか?
誰が、誰に……?

『お前がリエルにだ』

いや、だけど…これが恋というものなのか?家族に対してこんなふうになるのはおかしくないか?

『何もおかしくないぞ。この世界では割と普通のことなのだ。むしろ、お前の世界が特殊だ。前世の固定概念に捉われるでない』

そうだな、俺は固定概念に捉われ過ぎている。
男同士も、家族でも、この世界は普通に恋愛が出来るのだから。だけど、男同士だと子供を産めない。


だから、たとえリエルと両想いになれたとしても、アイツは跡継ぎがいる立場だ。だから、男である俺がリエルと結ばれるのは無理だな。

『そこはリエルと話し合って決めろ』

俺がリエルに伝えられる日が来るのだろうか…一生無理な気がする。
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