マガセントセージ

響世燐光

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悪習

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ラピスがマガセント。

なるほど理に叶っている。

属性魔術を使えるかどうかは魔力視では分からない。

他国の入学生の情報を握っているとは考えにくい以上、この金髪の男が情報を得られるのは同じロイヤル王国の人間だけだ。


それに僕は旅の中で、ラピスが属性魔術を使うのを一度も見たことがなかった。




「インヘリットに私は受け入れられた。それが答えじゃないかしらチョーズン・アリストラクト。」

「インヘリットは判断を誤った。お前のような劣等種はこの学舎の質を落とすだけだ。」


どうやら二人は知り合いのようだ。

一触即発の空気だが、彼らに───主にアリストラクト達三人に注がれる視線は冷たい。

マガセントが他の人間より劣っているなど、ロイヤル王国を除けば古い考え方だ。

その上、劣等種などという差別的な呼び方は関係のない彼らからしても気分の良いものではないのだろう。


白熱する二人の罵り合いに、突然一人の大柄な男が立ち上がった。


「マガセントが劣等種とは聞き捨てならんな!」

「誰だ貴様。」

「我はヘルク・オーバーカム。英雄になる男だ!」

「「「?????」」」


突如英雄を志す男が会話に割り込んだ。

訳が分からないが内包する魔力はアリストラクトと比べても遜色ないものだった。


「え、英雄?」

「貴様に一体何の関係がある。」

「そこの少女がマガセントであることとその能力に関係はない。むしろマガセントでありながらインヘリットへ入学出来るほどの努力を積んだことは称賛に値する。前言を撤回してもらおう。」

「断る。平民風情がこの俺様に意見したこと、後悔させてやろう。」


(まずい……)

アリストラクトと杖に魔力が宿り始める。宙に構築される術式は上位魔術のそれだ。

この歳で上位魔術を使えること自体驚くべき事だが、今はそんな場合ではない。


防衛魔術どころか無属性魔術さえ使えない僕が上位魔術に巻き込まれれば、たちまち肉片になってしまうだろう。

魔導具を使えば防げないこともないが、使い捨ての魔導具をこんな下らない事で使うつもりはない。


僕は術式を読み取ると一目散にクラスの端っこまで逃げた。

それにしてもなんて手の早いやつなんだ。



「ほう、中々やるではないか。どうだ我の仲間に」

「ほざけ!」

アリストラクトの杖から巨大な鳥の形をした炎がオーバーカムに向けて飛び出す

「むぅ、仕方ないか。」

ここに来てようやくオーバーカムは渋々といった様子で剣を引き抜く、彼の剣に流れるように魔力が込められていき………



「そこまでだ!」

教室の扉が突然開く。

現れた教師は僕と同じ様な丸眼鏡をかけた優男、ゴーメットと呼ばれていた教師だ。彼は教室に入ると一瞬で防衛魔術と拘束魔術を展開した。


炎の鳥は空中で四散し、アリストラクトとオーバーカムは床から出現した鎖に拘束される。


「待って、オーバーカムは悪くないわ!」

「話は後でゆっくり聞こう、とにかく学園内で許可なく戦闘を行った事が問題だ。」

「貴様、俺様が誰だか」

「黙りなさい。まったく今年は大変な年になりそうだよ。」


鎖によって全身を巻き取られた二人は、ゴーメット先生の魔術によって浮かされそのまま運ばれていった。



しばらくするとニコニコと笑みを浮かべたゴーメット先生だけが戻ってくる。


「ではオリエンテーションを始めます。皆さん一列に並んで着いてきてください」


ゴーメット先生の言葉に、二人を除いたクラスの生徒達は教室を後にした


学園中の様々な施設を案内される。

食堂、魔具研究室、武道場、教室、召喚室、娯楽施設、魔力水補給場。

飛ばし飛ばし説明されているにも関わらず最後寮に着くまで二時間以上の時間がかかった。

寮舎は最高級のホテルのように豪華で巨大なものだった。

一人に一部屋与えられるというのも想像していた以上の待遇だ。


いや、僕にとっては驚くべき施設だったが、他の貴族達からすればそうでもなかったようで、実際彼らの多くは外部の施設を利用するようだった。


これ以上の施設なんて僕には想像も出来ない。

住む世界が違うのだ。

やはり彼らと分かり合える日は来ないだろう。


ここまでの施設が揃っていて、奨学生はほとんど無料で通えると言うのだからこの国がどれだけ魔術師の育成に力を注いでいるのかが理解できる。

実際世の中に出ている有名な魔術師の殆どが、このインヘリット魔術学校を卒業しているのだ。


寮の案内が終わり解散する。


長旅で疲れが溜まっていた僕は、目覚まし時計を設定するとベッドに潜り込んだ。

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