転移させるとしても勇者の能力くらい練ってくれ 〜いくらジャンルレスでもこれはない!〜

花菱ねいる

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カラフルに重体

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この王国は東西南北に地区分けされている。
東(エスト)区は居住区が多く隙間なく家が作られている。西(ウェスト)区は上流階級の者が多く住む。大きな大聖堂がある。南(サウス)区は商業施設が多い。そして北(ノース)区は治安が悪くあまり人は近寄らないという。

「私たちが今いるのは南(サウス)。商業が盛んな区なんだ。今からお前たちの装備やらを調達すっから、武器屋へ行くぞ」

街の住民は珍しい物を見るように3人をみている。シュネとシャラはサクサクと歩いていくが、そんな話は聞こえていないとばかりに要はとぼとぼとついていく。落ち込んでいるのだ。自分の能力に。そこに気を利かせるように龍来が声をかける。

「えっとー、要くん?だっけ。ダンスが武器ってのはなかなかパンチが効いていいんじゃない?うん、今までラノベですらいない能力だよ。レアキャラ?みたいな」
「俺も要って呼ぶ、よろしくな。あとお前は龍来?だっけ。俺は忍でいい」
「よろしく忍チャン!僕も龍来でいいからね」
「は!?なんでちゃん?」

満足な容姿を手に入れたからか隠キャで人付き合いの苦手だった彼らは元の性格よりだいぶ明るくなっていた。本来はこういった性格だったのかもしれない。自分に自信がつくのはいい事しかない。龍来は今の自分が好きになっていた。水溜りや窓に写る自分を何度も見てしまう。

「要くん、僕らもなかなかヤベェ能力だからそんな落ち込まないで」
「タップダンスが武器ってのはえらくぶっ飛んだ能力もらったな。でもそれを扱えたらすげぇかっけえと思うぜ」
「うんうん。ジャンルレスなラノベ業界も仰天だね!」

同情か…?要の気持ちは荒んでいる。なんでそんな楽観的でいられるんだ。目的忘れてるのか…?
そもそもお針子って、料理人って…。料理は百歩譲って包丁とかあるし料理男子かっこいいけど。お針子も、裁縫男子て可愛いし。タップダンスって、踊れる男…。はカッコいいとは思うけど。だ・け・ど・も・だ・け・ど!!足をバタバタさせてる自分の姿を想像すると結構しんどいものがある。

「ここは国1番の大きな街で、なんでも揃うんだ。この商業区は色々な店があるから時間がある時にはいろいろ寄ってみるといい」
「ほらいつまでも落ち込んでんな。もう勇者になっちゃったんだから」

この双子、さっきから聞いていればヌケヌケとよくも…。元はと言えばお前らがかました小さな親切が僕には大きなお世話なんだよ…!
…要は荒んでいる。

道沿いにある店を紹介していくシュネとシャラについていっていると、突然忍が道端にしゃがみ出す。

「ん?どしたー?忍ちゃーん?早くしないと置いていくよ?」
「忍?」

忍は道端に咲いている草をあろう事か口に入れて食べていた。

「は!?何やってるんだお前!」
「えー、なに忍ちゃーん。いくら異世界でテンション上がってるといえどもそりゃないわぁ。引きますわぁ」
「ち、ちげぇ!わかんない、わかんねぇけど、味を確かめてみないと落ち着かないんだ!!」

忍は料理人としての血が騒ぎ、道端に咲く草にすら食材としての価値を求めずにいられなくなっていた。これも料理人として召喚されたからか。
新たなスパイスにどうだろう?忍は本当にそう思いほぼ無意識にムシャムシャと…、食べてしまった

「おい!何やってんだこのバカ!!」
「おい!何やってんだこのドジ!!」

シュネとシャラが揃いながら罵倒はしっかりと。だが焦ったように駆け寄る。

「ププっ。ちっちゃい女の子に怒られて。忍チャマは赤ちゃんですか?なんでもお口に入れちゃって…ぺってしなちゃいぺっぺって!………え、何どしたの忍??」
「ぁうっっっ」

龍来はからかってやろうと笑っていたが、そのうち忍の体はみるみると、顔は真っ赤になり、首は青く体は緑に。腕はピンクで下半身は黄色に染まり、とんでもないカラフルな見た目に変貌していた。

「お前、これ…カラフ草を食ったんか!?」
「ばかたりが!この草を食ったら体がレインボーになっていづれ死ぬっていうのは常識だろ!虫でも知っとるわ!」

双子も本当にびっくりしているのか汗が滲んでいる。

「えええ!?どういうこと!?」
「シュネ、シャラ!やばいぞどんどん忍の体が!れ、レインボーに!」

そんな危険な草がその辺に平気で生えているの!?周りを見渡せばたくさん生えているのに。ていうか言ってくれないと!常識って僕たちさっき来たばかりだよ!君達に召喚されたてほやほや!なのに知ってるわけないじゃないか!
要と龍来はゾッとして忍を見た。忍の体はみるみるカラフルになっていき、見ている分にはマヌケで面白い。が、双子の慌てように割と危険な状況だということはわかる。

「武器とか後だ!今は薬屋に急ぐぞ!」
「忍を担いでついてきて!急げ!!」

要が上半身、龍来が下半身を持ち忍を抱え双子の後をついて走る。

「いづれ死ぬって…、いつっハァ、いつ死ぬんだ!?」

息を切らしながら要が聞くと、双子は個体差があり即死する者もいれば2日ほどかかる者もいるのだという。やばいじゃないか!



フルールの薬屋

看板にはそう書いてあった。そういえば見たこともないうにゃうにゃした字なのに平気で読める。こちらの言語も双子の魔術で補填されているのか。なんて便利な。要達は薬屋に入る最中思う。双子の小さな女の子。こんな小さいのに頼りになるものだ

「フルール!フルールいるか?大変なんだ!」

店主を呼んでいるんだろう。シュネが叫ぶと店の奥から女性が出てきた。
女はサリーを被り顔がよく見えないが双子とも面識があるようだ。

「マダムメリクール…来ていたのか」
「あらシュネ。シャラも、久しぶりじゃない。急いで欲しい物があったのよ。最近いっそがしくて!じゃあ私は帰らなきゃ。そっちの3人が例の勇者ね?異世界の勇者様、今度ウチの店にいらっしゃい。サービスしてあげるから。待ってるわ」

マダムメリクールは、忍を一目見て、あれま!なんで食っちゃったのさ。バカな子だねぇ、フルールに早く治してもらいな。と言いさっさと出て行ってしまった。今の人が店主じゃないのか。要と龍来が茫然としていると、また店の奥から1人の、女とも男とも取れないとても美しい人が出てきた。プラチナシルバーのとても長い髪に、耳はピンと先が尖っている。ゆったりしたローブを羽織り、唇は少し緑がかっていた。キセルをふかして出てくる。綺麗な人…。2人は緊張から石のように固まってしまう。

「ちょっと、いやね。大きな声を出さないでちょうだいよ、アタシ耳がいいからキーンってすっごいんだけど、双子ちゃん」
「フルール!大変なんだ!例の勇者がカラフ草を食っちゃって…」
「今こんな感じに色とりどりに…」
「はぁ?ちょっと…あの草食べるのって10年に1人もいないんだけど。何食べてるのよ…」

フルールは呆れており、キセルをふかして困った顔をした。その間も忍は苦しそうに呻いている。

「助けてあげて下さい!一応僕らの仲間なんです…!」
「忍ちゃん…、敵と戦わずして死なないでよっ!」
「もう…。あら!顔は赤色なのね」

フルールは忍の体に出る色を確認しているようだった。服をめくったりして診察している。

「ふぅん、そう…。あらやだココは金色…珍しいわね」

ズボンの中までジロジロと確認し、フルールは一人で何か納得したようだった。
シャラが診察を続けるフルールに問いかける

「ど、どうだフルール…」
「そうねぇ、困ったわ。腕がピンクはアタシも初めて見るもの」
「それがわからないと困るんですか?」

要が恐る恐る聞く。忍の呻めきは本当に辛そうだ

「カラフ草占いよ!体に出る色で運勢を占えるの。顔が赤くなる人は将来早死にするらしいわよ」
「いや今にも死にそうです!」

フルール!遊んでないで見てやってくれ!双子に詰められフルールはそうだった!と診察に戻る。
ていうか、どんな色が出てもいづれ死ぬんだろう!?

「はぁ…。困ったわね、治せる薬は作れるんだけど、材料がねぇ…。強羅(ごうら)ウルフの牙が必要なんだけど、さっきメリクールに売っちゃったので最後だったのよ。でもこの子、多分持ってあと2時間とかよ…。今から強羅ウルフを狩るのは無理だと思うし。メリクールから譲ってもらうしかないかも…」

なんとタイミングの悪い。さっきすれ違った女の人か!これは事情を話して譲ってもらうしかない。要達は急いでマダムメリクールに交渉しに行くしかなかった。早く行って譲ってもらわなきゃじゃん!龍来が慌てている。

「ねぇ、そのメリクールさんってどこに行ったの!?」
「マダムメリクールは北(ノース)区で娼館ピンピンの女主人をしているわよ。強羅ウルフの牙は精力強壮剤にもなるの。最近繁盛してるらしいわね。魔物が増えて人間の生存本能が疼いちゃってるのかしらねぇ」
「娼館ピンピン…。めっちゃくちゃそのまんまだね…」
「アタシがこの子を見ててあげるからいってらっしゃいよ、北区は治安が悪いから気をつけて行ってくるのよ」

4人は急いで北区へ走る。あと2時間で忍が死んでしまう。なんとしてもメリクールから牙を回収しなくては。
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