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第一部
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「あなたに不利益はありません。そのドラゴンが回復した暁には、マリアンナの使い魔として差し出してほしいだけです」
マリアンナはオフィーリアの双子の姉。幼い頃から大魔女の再来と謳われる天才魔女で、すでに何匹も優秀な使い魔を従えている。
なのに、まだ欲するというのか。
むしろ、それでいてなお、ドラゴンを従える自信があるというのか。
使い魔契約とは、魔女から動物に対し魔力を送り込むことで成立する。生物としての格などにより魔力量は異なるが、相手の望むだけのものを与えなければ契約は成立しない。オフィーリアが使い魔を得られないのは、それだけの魔力量がないからだ。
魔力を得た動物は知性や身体能力が高まり、それに比例して寿命も格段に延びる。長年魔力を与えられ続ければ、ロイドのように人の姿を取り人の言葉を操ることができるという仕組みだ。
その関係はどちらかが死ぬまで半永久的に続く。途中で解消することもできるが、おおむね使い魔の方が短命で早く死ぬため、あまり使われることはない。
ドラゴンにとって魔力は、魔女と同じく生命活動に直結する重要なエネルギーだ。恩義ある相手に対して失礼かもしれないが、ドラゴンは人間よりはるかに長寿だと聞くし、生き永らえるための数十年などあっという間のことだろう。
いくら弱っているとはいえ、ドラゴンを使い魔とするには途方もない魔力が必要だと思われるが、きっとそれを成し遂げる自信があるから申し出ているのだろう。
魔力が多いことはすなわち、優れたマナテリアルを生成できることに直結する。
つまり、使い魔を見れば魔女の力量がわかるということで、リリーナ・バーティーを超えると豪語するマリアンナの野望を達成するには、確かにてっとり早い方法ではあるが……ドラゴン側に不利益がないわけではない。
単に数十年の間束縛されるというだけではなく、魔女が魔力不足に陥った際は立場が逆転し、使い魔から魔女に魔力が供給される。使い魔は魔女の手足となる存在であり、いざという時の魔力タンクでもある。
いずれ完全に回復すれば、魔力量はドラゴンの方が大幅に上回るだろう。その時にせっかく貯えた魔力がマリアンナへと搾取される、という可能性がなきにしもあらずだ。
とはいえ、ドラゴンを救うにはベアトリクスの要求を飲むほかない。
「……分かりました。ですが、それならばマリアンナ様ご自身でお世話をされた方がよろしいのでは? 差し出がましいことを申し上げているのは、重々承知ですが」
「マリアンナにそんな暇はありません。ドラゴンとはいえ、魔力が枯渇している状態では心証がどうこうより、魔力の高さで契約に飛びつくに決まっています」
「そう、ですね……」
オフィーリアには確かに魔女と呼べるだけの魔力はある。でも、その体に宿る魔力が少なすぎてマナテリアルが作れないし、ネズミ一匹使い魔にすることもできない。
魔力量は生まれつき多い少ないがあるが、後天的に伸ばすことも十分可能だ。しかし、飛躍的に伸びるのはせいぜい七歳までで、それ以降は微々たるものだ。
オフィーリアはどれだけ訓練しても一切成長がみられず、落ちこぼれの烙印を押された。十六にもなればもう成長は見込めないし、ドラゴンと契約するなんて夢物語以下だ。
「それに、伝承ではドラゴンは美しいものを好むと聞きますし、万が一にもあなたを主に選ぶことはありません。無用な心配はしないように」
「……はい」
マリアンナは母と瓜二つの美貌の持ち主だ。
稼ぎがいいから貴族令嬢みたいな服やアクセサリーをたくさん持っているし、美容品のマナテリアルを惜しげもなく使って肌艶もスタイルも完璧に保っている。
それに引き換え、オフィーリアは顔立ちこそ瓜二つだが、毎日野良仕事をしているから顔はそばかすだらけだし、手もガサガサに荒れている。
日焼け対策はしているのでさほど色黒ではないが、抜けるような白い肌には程遠い。服だって地味なものしか持ってないし、貧相な体型だから女性的な魅力にも欠ける。
オフィーリアが里の魔女たちから蔑まれるのは、落ちこぼれだからというだけではなく、美しくない外見も原因にある。
それをどうにかしたいと思いつつも、生活と仕事を優先すれば外見をつくろう手間もお金もかけられない。
コンプレックスを刺激されて落ち込む暇もなく、母謹製の傷薬と滋養強壮薬、それから猛獣を捕縛するための首輪型の拘束具を譲り受け、追い出されるように帰路についた。
マリアンナはオフィーリアの双子の姉。幼い頃から大魔女の再来と謳われる天才魔女で、すでに何匹も優秀な使い魔を従えている。
なのに、まだ欲するというのか。
むしろ、それでいてなお、ドラゴンを従える自信があるというのか。
使い魔契約とは、魔女から動物に対し魔力を送り込むことで成立する。生物としての格などにより魔力量は異なるが、相手の望むだけのものを与えなければ契約は成立しない。オフィーリアが使い魔を得られないのは、それだけの魔力量がないからだ。
魔力を得た動物は知性や身体能力が高まり、それに比例して寿命も格段に延びる。長年魔力を与えられ続ければ、ロイドのように人の姿を取り人の言葉を操ることができるという仕組みだ。
その関係はどちらかが死ぬまで半永久的に続く。途中で解消することもできるが、おおむね使い魔の方が短命で早く死ぬため、あまり使われることはない。
ドラゴンにとって魔力は、魔女と同じく生命活動に直結する重要なエネルギーだ。恩義ある相手に対して失礼かもしれないが、ドラゴンは人間よりはるかに長寿だと聞くし、生き永らえるための数十年などあっという間のことだろう。
いくら弱っているとはいえ、ドラゴンを使い魔とするには途方もない魔力が必要だと思われるが、きっとそれを成し遂げる自信があるから申し出ているのだろう。
魔力が多いことはすなわち、優れたマナテリアルを生成できることに直結する。
つまり、使い魔を見れば魔女の力量がわかるということで、リリーナ・バーティーを超えると豪語するマリアンナの野望を達成するには、確かにてっとり早い方法ではあるが……ドラゴン側に不利益がないわけではない。
単に数十年の間束縛されるというだけではなく、魔女が魔力不足に陥った際は立場が逆転し、使い魔から魔女に魔力が供給される。使い魔は魔女の手足となる存在であり、いざという時の魔力タンクでもある。
いずれ完全に回復すれば、魔力量はドラゴンの方が大幅に上回るだろう。その時にせっかく貯えた魔力がマリアンナへと搾取される、という可能性がなきにしもあらずだ。
とはいえ、ドラゴンを救うにはベアトリクスの要求を飲むほかない。
「……分かりました。ですが、それならばマリアンナ様ご自身でお世話をされた方がよろしいのでは? 差し出がましいことを申し上げているのは、重々承知ですが」
「マリアンナにそんな暇はありません。ドラゴンとはいえ、魔力が枯渇している状態では心証がどうこうより、魔力の高さで契約に飛びつくに決まっています」
「そう、ですね……」
オフィーリアには確かに魔女と呼べるだけの魔力はある。でも、その体に宿る魔力が少なすぎてマナテリアルが作れないし、ネズミ一匹使い魔にすることもできない。
魔力量は生まれつき多い少ないがあるが、後天的に伸ばすことも十分可能だ。しかし、飛躍的に伸びるのはせいぜい七歳までで、それ以降は微々たるものだ。
オフィーリアはどれだけ訓練しても一切成長がみられず、落ちこぼれの烙印を押された。十六にもなればもう成長は見込めないし、ドラゴンと契約するなんて夢物語以下だ。
「それに、伝承ではドラゴンは美しいものを好むと聞きますし、万が一にもあなたを主に選ぶことはありません。無用な心配はしないように」
「……はい」
マリアンナは母と瓜二つの美貌の持ち主だ。
稼ぎがいいから貴族令嬢みたいな服やアクセサリーをたくさん持っているし、美容品のマナテリアルを惜しげもなく使って肌艶もスタイルも完璧に保っている。
それに引き換え、オフィーリアは顔立ちこそ瓜二つだが、毎日野良仕事をしているから顔はそばかすだらけだし、手もガサガサに荒れている。
日焼け対策はしているのでさほど色黒ではないが、抜けるような白い肌には程遠い。服だって地味なものしか持ってないし、貧相な体型だから女性的な魅力にも欠ける。
オフィーリアが里の魔女たちから蔑まれるのは、落ちこぼれだからというだけではなく、美しくない外見も原因にある。
それをどうにかしたいと思いつつも、生活と仕事を優先すれば外見をつくろう手間もお金もかけられない。
コンプレックスを刺激されて落ち込む暇もなく、母謹製の傷薬と滋養強壮薬、それから猛獣を捕縛するための首輪型の拘束具を譲り受け、追い出されるように帰路についた。
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