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第六部 ざまぁ編
プレゼントの真意①
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「うーん。薄オレンジか黄緑か……どっちがええと思う?」
「デザイン的にそれほど差異がありませんから、迷いますねぇ……」
テッドが旅立った翌日。
ジゼルは着付け担当の侍女たちと共に衣裳部屋にこもり、舞踏会に着ていく戦闘服……もとい、ドレスやアクセサリーの最終選定を行っていた。
不作のあおりで生地も染料も品薄で値上がりしており、今回もリメイク中心でそろえたが、今期最初の大きな催しとなれば流行にうるさい人たちが多く参加し、マウント相手を物色すべくファッションチェックの目を光らせているだろう。
我が道を行く大阪のオバチャンだから、自分のファッションをどう思われようと知ったことではないが、高貴なご身分の方々は一人の欠点をさも一族の恥のように語る人種が多い。
家族にとばっちりがいかないよう、できるだけ流行物を着ていきたいところだが……最後の二択で悩む羽目になっている。
「どちらも素敵でジゼル様にお似合いですが、わたくし個人としましては、気分もお肌色も明るくしてくれるオレンジがいいと思います」
「そうですか? 私は黄緑がいいと思います。今年は黄緑が流行色だそうですし、新緑の季節らしい瑞々しさも演出できるのでは?」
「ですが、流行ということは、皆さんがこぞってお召しになっているってことですよね? 晴れの舞台でジゼル様が目立ちませんわ」
「その程度は些末な問題でしょう。何をお召しになっていても、ジゼル様が一番輝いているに決まっているじゃありませんか!」
「ああ、そうですわね! わたくしとしたことが……!」
「いや、別に目立たんでもええっちゅーか、むしろ目立ちたくないっちゅーか……」
侍女たちの間で白熱していく議論の焦点がずれていっている。
突っ込んでも聞く耳持たないので、仕方なく自分で考えることにしたが……どちらも数少ない新作だからと気合を入れて作らせたものなので、甲乙つけがたい。
合わせる小物も多数引っ張り出して突き合わせ、あーだこーだと終わりの見えない脳内会議を繰り広げていると、ノックが聞こえてきて扉越しに男性使用人の声がした。
「ジゼル様、ハーミット様からお届け物です」
「あー、ごめん。今ちょっと忙しいから、先に部屋に飾っといて」
「いえ、今回はお花ではなくてですね……とにかくすぐに確認していただきたいので、こちらにお運びしてもよろしいでしょうか?」
てっきりいつもの花束だと思っていたが、そんなに急ぐということは生菓子なのかもしれない……と一瞬持ち前の食い意地がにょっきり顔を出したが、それなら確認とかまどろっこしいことは言わず、おやつとしてお茶と一緒に出してくれるはずだし、わざわざ衣裳部屋に持ち込む理由もない。
訝しみながらも許可を出して戸を開けさせると――プレゼントらしくリボンのついた大小いくつかの箱を抱えた使用人たちが、ゾロゾロと入ってきた。
「ふお!?」
ジゼルがおっかなびっくりしている間にも、床にズラズラ並べられていき、置かれる端から解体されて針など危険物がないか確かめてから外に出される。
「デザイン的にそれほど差異がありませんから、迷いますねぇ……」
テッドが旅立った翌日。
ジゼルは着付け担当の侍女たちと共に衣裳部屋にこもり、舞踏会に着ていく戦闘服……もとい、ドレスやアクセサリーの最終選定を行っていた。
不作のあおりで生地も染料も品薄で値上がりしており、今回もリメイク中心でそろえたが、今期最初の大きな催しとなれば流行にうるさい人たちが多く参加し、マウント相手を物色すべくファッションチェックの目を光らせているだろう。
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家族にとばっちりがいかないよう、できるだけ流行物を着ていきたいところだが……最後の二択で悩む羽目になっている。
「どちらも素敵でジゼル様にお似合いですが、わたくし個人としましては、気分もお肌色も明るくしてくれるオレンジがいいと思います」
「そうですか? 私は黄緑がいいと思います。今年は黄緑が流行色だそうですし、新緑の季節らしい瑞々しさも演出できるのでは?」
「ですが、流行ということは、皆さんがこぞってお召しになっているってことですよね? 晴れの舞台でジゼル様が目立ちませんわ」
「その程度は些末な問題でしょう。何をお召しになっていても、ジゼル様が一番輝いているに決まっているじゃありませんか!」
「ああ、そうですわね! わたくしとしたことが……!」
「いや、別に目立たんでもええっちゅーか、むしろ目立ちたくないっちゅーか……」
侍女たちの間で白熱していく議論の焦点がずれていっている。
突っ込んでも聞く耳持たないので、仕方なく自分で考えることにしたが……どちらも数少ない新作だからと気合を入れて作らせたものなので、甲乙つけがたい。
合わせる小物も多数引っ張り出して突き合わせ、あーだこーだと終わりの見えない脳内会議を繰り広げていると、ノックが聞こえてきて扉越しに男性使用人の声がした。
「ジゼル様、ハーミット様からお届け物です」
「あー、ごめん。今ちょっと忙しいから、先に部屋に飾っといて」
「いえ、今回はお花ではなくてですね……とにかくすぐに確認していただきたいので、こちらにお運びしてもよろしいでしょうか?」
てっきりいつもの花束だと思っていたが、そんなに急ぐということは生菓子なのかもしれない……と一瞬持ち前の食い意地がにょっきり顔を出したが、それなら確認とかまどろっこしいことは言わず、おやつとしてお茶と一緒に出してくれるはずだし、わざわざ衣裳部屋に持ち込む理由もない。
訝しみながらも許可を出して戸を開けさせると――プレゼントらしくリボンのついた大小いくつかの箱を抱えた使用人たちが、ゾロゾロと入ってきた。
「ふお!?」
ジゼルがおっかなびっくりしている間にも、床にズラズラ並べられていき、置かれる端から解体されて針など危険物がないか確かめてから外に出される。
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