双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

utsuro

文字の大きさ
上 下
162 / 266

【番外編】疑われた慕情 4 (終)※

しおりを挟む
 必死で声を殺している海神わだつみの耳元で、ボクは哀しくささやいた。

 「なぜ、ボクがこんな嫌がらせをしているかわからない?・・・海神わだつみ・・・ボクは怒っている・・・。君への慕情を疑われていることに。・・・・・・もう、声を抑えるなよ。・・・ボクの首に腕を回してしっかりつかまっていろ。」

 驚きに目を見開いている海神わだつみの呪印へ口づけ、ボクは甘く熱い痺れるような官能をそこから容赦なく、彼の中に叩き込んだ。

 ボクの首筋に腕を絡ませているため口をふさぐことさえできず、海神わだつみは高く鳴き声を響かせ、瞬く間に昇りつめていく。

 「海神わだつみ・・・ボクはどうしたらいい。すごく・・・辛いんだ。」

 追い立てられた欲情と理性のはざまで、苦しそうに息を乱し涙をあふれさせて喘ぐ海神わだつみの震える身体を、ボクは息が止まるほど強く抱きしめた。

 「ねぇ・・・。清らかでどこまでも真面目な君が、ボクの前でいやらしく淫らによがり狂う姿を見るのが、死にそうなほど好きなんだ。お願い・・・もっと、乱れてみせて。・・・ボクの心を、癒してよ。」

 言われた通りにボクの首にしっかりと腕を絡ませていた海神わだつみを抱え、ボクは立ち上がった。
 吐き出した言葉の弱弱しさとは真逆に、しなやかで美しい彼の身体を、そのまま力任せに突き上げる。

 必死で四肢を絡めている海神わだつみの身体が跳ねあげられ、落ちてくるたびボクは容赦なく幾度も突き上げた。

 一度突き上げれば一度・・・二度突き上げれば二度・・・突き上げられるたびに海神はこのうえなく甘い嬌声を聞かせてくれる。

 淫らによがり狂っていく海神の姿に、灼熱がゾワリと一点を目掛け駆け上がる。
 ボクは布団の山へ海神を乱暴に下ろすと吹き飛ばすほど激しく、最奥をえぐる様に何度も彼に突き入れた。

 ボクの名を喘ぐように呼び続ける海神わだつみを強く抱きしめ、共に昇りつめていく劣情を果てしなく追いかけていく・・・。

 白く明滅する快感に我を失うほど追い立てられた抽挿は、海神わだつみの全てを貫くほど、勢いを重ねていった。
 たまらなく切ない声で鳴きながら海神が白濁を放つと同時に、ボクは彼の一番深い場所へ勢いよく灼熱を弾けさせた。

 扉の向こうにみずはの気配を感じたボクは、浮かされたように彼の名をささやきながら、つながったままの重い身体を寝室へと移動させた・・・・・・。

***********************

 「・・・・・・気のせい・・・ではないな。・・・誰だ。出てこい。」

 物置部屋の戸を開けたみずはは、積み上げられた布団を前に、しばし気配を探った。
 そこに漂う色情の残り香に気づき、たちまち顔を赤く染め上げる。

 自分が戸を開ける寸前まで、何者かがこの部屋でいかがわしいことをしていた気配が、間違いなく残っていた。

 呼びかけた声は、積み上げられた布団に吸われ消え去ったままだ。
 そこに鼠一匹の気配すら見つけられず、不届き者たちはすでにこの場を去った後なのだと悟り、みずはは内心ほっとしながら改めて中を見渡した。

 そこに白い衣の一組が落ちているのが目に入り、しゃがみ込んで拾い上げる。
 それは、まごうことなく海神の衣だった。
 しかもまだ、ほのかに熱を持っている。

 そこにいた者の正体が誰であったかを知り、みずはの顔は一瞬のうちに灼熱に覆われ、顔から火が噴くようだった。
 彼女は散らばった衣を丁寧に拾い上げると、手のひらを扇に顔をあおぎながら、部屋を出た。

 あきれた様子を纏わせてはいたが、みずはの口元は彼らの睦まじさに海神わだつみの幸せを感じ、嬉しさでほころんでいた・・・・・・。

***********************

 震える身体で海神わだつみを抱きしめ、ボクは寝台の上で四肢を力なく放り出し、静かに涙を流し続けている彼の唇に押し付けるように口づけた。

 「ごめん・・・・・・。酷いことをした。」

 「・・・違う。蒼・・・私だ。私が、酷くお前を傷つけた。・・・お前があまりにも・・・初めから良すぎたものだから・・・手慣れているのだと・・・勝手な思い違いをしたのだ。・・・すまない。・・・・・・心から、謝罪する。」

 「・・・海神わだつみきみ・・・」

 言い淀みながらたどたどしく謝罪の言葉を口にした海神を見つめ、ボクはこみ上げる喜びに言葉を失ってしまった。
 鼓動が胸を突き破りそうなほど、強く打っている。

 「・・・ごめん。・・・君をこんなに追い込んだくせに・・・ボクは今、君がそんな風に思ってくれていたことを知って、死ぬほど嬉しいんだ。・・・どうかしてしまいそうなくらい、幸せで・・・・・・。」

 海神わだつみはほっと息を吐き出すと、このうえなく幸せそうな表情かおを見せた。

 「同じだ。蒼。・・・私も、死ぬほど嬉しい。どうかしてしまいそうなくらい・・・。」

 どちらともなく、唇を重ね甘く舌を絡ませながら、ボクたちは息苦しいほどの幸せに、温かく包みこまれていった・・・・・・。


 ・・・・・・後日。
 もう一冊の海神わだつみの手記を何気なく開いたボクが、そこに綴られた内容に再び歓喜することになったというのは、また別の話だ・・・・・・。

【番外編】終







※番外編にお付き合いいただき、ありがとうございました(*^▽^*)
感想などいただけますととても嬉しいです。
引き続き、よろしくお願いいたしますm(__)m
しおりを挟む

処理中です...