彼呼迷軌(ひよめき)~言霊が紡ぐ最期の願い~

utsuro

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静かな夜 2

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 冬の寒さだけが原因じゃないだろう・・・・・。
 緊張続きで気を張っていた都古の指先は震え、氷のように凍えきり乾いていた。

 「都古、寒いか?・・・・冷えちゃったよな。ちょっと待ってて。」

 俺は毛布で都古をグルグルにくるんでから立ち上がった。
 台所へ行くと、インスタントのココアを3人分カップに注ぐ。
 冷蔵庫に入っていたホイップの生クリームをひと回しずつ中に絞ると、お盆に乗せ、静かに部屋へと戻った。

 「お湯で溶かしただけだから、あんまり美味しくはないかもしれないけど・・・・寒いの少しは、楽になるだろ?」

 都古と勝にカップを渡し、自分も都古のすぐ隣に、胡坐をかいて座る。

 「ありがとう・・・。」

 都古は花開くような微笑みを見せ、小さな手でカップを大事そうに抱えた。

 「真也・・・・。お前ってやつは本当に、恐ろしい男だな。これで、自覚がないんだからたまんないよ・・・・。」

 「自覚・・・?」

 「お前には、そのままでいて欲しいなって話。・・・旨いよ、これ。ありがとう。」

 勝は笑いながらカップに口をつけた。
 意味深な勝の発言に疑問を抱きながら、俺はカップの中身を見つめた。

 ひずみから現れた不気味な手。
 ショクという名の妖鬼。
 突然現れた双凶の黒、そして・・・蒼。
 激情をむき出しにし、黒に力をぶつける白妙・・・・・。

 さっきまであれほど神経が高ぶっていたのに・・・・・。
 考えたいことも、話し合いたいことも山ほど残ったままなのに・・・・。
 急激に、頭と身体とが泥のような睡魔に支配され始め、意識がのしかかられるように重く沈められていく。

 「ごめん・・・・限界。なんか、急に凄い・・・眠い。」

 「ココア・・・・もういいのか?後は俺が片付けとくから、真也は先に寝ていいよ。もう、大丈夫だから・・・。」

 そういって、頭を撫でてきた勝の手の動きがすごく優しくて、俺はほっとして身体の力を抜いた。

 「・・・・ありがとう。・・・・勝、ごめん・・・・な。」

 勝は俺の手からカップを受け取ると、残っていたココアを飲み干し、都古の空になったカップも受け取る。

 「おーい、都古。ここで寝るなよ。お前は隣の部屋で寝なきゃ・・・・さすがに、色々まずいだろ。・・・・まさかお前、俺に布団まで運ばせる気か?」

 船をこぎ始めた都古の、柔らかな頬を軽くつねって笑っている勝の姿が、意識の外でかすれながら揺らいだ。
 勝の姿が一瞬・・・黒の姿にダブって見えた。

 「黒・・・・?」

 「ん?黒がどうした?」

 勝がいぶかし気にこちらを振り返った。
 特に変わったところはない、いつも通りの勝だった。

 気のせい、だよな・・・・・。
 強烈過ぎる眠気に、思考が混乱しているんだ・・・・。

 「気のせいだった。悪い。」

 「いいよ。・・・・真也はさ、いつも気を張りすぎなんだ。今日は俺もついてる・・・。余計なことは気にしないで、もう寝ろよ。」

 「ありがとう・・・・勝。」

 俺はもう限界だった・・・・。

 強烈な睡魔に引きずり落とされながら勝の後ろに目をやると、都古が重い瞼を無理やり薄く開け、いぶかし気な眼差しを勝へと向けているのが目に映った。
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