12 / 115
3話、革鎧(2)
しおりを挟む
その時!! 耳をつんざく奇声と、ガンッと大きな金属音が響く。
キエェエエエェー!
目の前から響く聞くのに堪えない音。
対してリリは声どころか息も止まる、本当に恐怖を覚えたときは、声など上がらないらしい。
(んんーーー!!)
目をつぶっているので、何が起こったのかは分からない。
しかし音から察するに、何かが起こったのは確かだ、直ぐにでも確認をしたいが、恐怖で瞼が上がってくれない。
(コワイ、コワイ、コワイ、コワイ)
リリは身動ぎ一つせず心と頭が落ち着くのを待ってから、恐る恐る目を開けた。
「……………ヒィィッ!?」
悲鳴を上げたリリの目の前ではサソリが暴れていた、落ち着けたはずの心臓は高鳴り、頭はまた暴走を始める。
(ぢがいぃー、近いよぉー、だから近いってば!!)
暴れるサソリの、ハサミと尻尾がリリの鼻先をかすめる。
その度に、足元に生じる震えが背骨を伝い頭のてっぺんまで震えさせる。
背筋が凍るとは正にこの事を言うのだろう。
「近づいて、こ、こ、こない……なんで?」
激しく動くサソリだが、その場で腕と尻尾を振っているのみで、近づいても離れてもいかない、よく見るとおっきな針が二本見える。
(串刺しにされて、る?)
現状がわかり、少しだけ落ち着いたリリ。
目の前のサソリはまだ、キシャア、キシャアと鳴きながら暴れているので、安心はできない。
頭上から聞こえる声は緊迫感どころか、むしろ笑うのをこらえているみたいだ。
「リ、リリ、大丈夫?」
「っえ、えーっと、っあ、っはい……た、多分……」
ドギマギと答えるリリに、ラーナはついにこらえきれず、ケラケラと笑いだした。
何事も無かったかのように話しかけられたリリは、ラーナの姿に呆気に取られてしまったのか、ぼんやりと立ち尽くす。
「た、た、ただのサソリに、慌てすぎ、だよー」
ラーナはまだ笑いながらもサソリをつまみ上げ、観察をするとっあ! っと声を上げた。
「っあ! この子、毒持ち! 当たりじゃん、やったねー」
混乱した頭、いやっ恐らくは冷静な時であってもリリにはラーナの言っている意味が分からなかったであろう。
毒があることを喜ぶ少女がそこにいた。
(毒まであったの? っえ? つえ? えぇえ!?)
リリは慌てふためき、自分の身体を隅々まで確認する。
横でラーナはサソリの尻尾の先だけをポキッと折り、マントの中から出した瓶に入れていた。
(傷はない、よかったぁーー、あのサソリ、毒があるならあるって言っと言ってよね!)
一通り確認したリリは、良く分からないキレ方をしていた。
「っあ、ありがとうございます」
「全然いいよー、気にしないで」
「ところで当たりって、どういう事?」
「このサソリはね、全身食べられるんだよ」
「えぇ!! あんなでっかいサソリを!? あり得なくない?」
ビックリしたリリは大声で聞く。
対してラーナは相変わらずの緩さで答える。
「リリには、おっきく見えるかもね」
「見えたわよ! 生きた心地がしなかったわ!」
「飛べばよかったのに」
「飛べなかったの! しょうがないじゃない! ちなみにラーナさん原因って分かる?」
疑問を呈したリリに、ラーナはあっさりと答えた。
「さぁ? 知らなーい」
「っま、そりゃそうよね」
「まぁ怪我も無さそうだし、そのうち飛べるんじゃない?」
「それもそっかー」
二人ともリリが飛べないことについては、大して気にしていない。
実にあっさりとした対応だ。
「少しだけど食べ物も見つかったし、結果としては良かったわ」
「うん、リリはすごいねー、尻尾の毒は美味しいし、ラッキーだよ」
「っえ!? 毒を食べるの? わたしがラッキーガールなのは認めるけど、厳しくない?」
(ご飯の無いこの状況じゃ、ラッキーと言えばそうなの……かな?)
「食べるよー、ボクっていろいろな毒の耐性を持ってるからね」
「……えぇえ!」
(毒耐性のスキル? そんなものがあるの? わたしもほーしーいー!)
「致死量にさえ気をつければ、大抵の毒は食べられるよ? サソリの毒は唐辛子みたいにピリピリしてて美味しいんだよねー、リリもどう?」
「イヤ、ケッコウデス……」
(純粋な目でそう言われると、少しは食べてみたいという気分になってしま……ならないわね、全く! 一切! 全然!)
スキルや特殊能力的なものの断片を見つけ、リリは興味を覚えたが、ラーナもう一つ、聞き捨てならないことを言っている。
(ちょっと待って? 毒と薬は紙一重とも言うけど……ラーナさんの言うことがこの世界のスタンダードだとしたら)
リリはラーナに恐る恐る聞いた。
「ちなみに、ラーナさんは普段の料理の調味料とか、薬とかはどうしてるの?」
「調味料? 味のことだよね、塩とかハーブとかかな? 薬は高いから自力で治す」
(自力ってなかなかハードね……猛者だわ)
「もしかして、ハーブの中には毒物も含まれてたりする?」
「リリは面白いことを言うね」
「でっしょー!」
「そんなわけ無いじゃん!」
「っあ、やっぱりそうですか」
ケラケラと笑いながら答えるラーナに、リリは調味料が普通な事に少しホッとした。
(毒が入っている料理……想像するだけで怖いわ)
「使わないのね、良かったわ」
「毒は薬にもなるし暗殺にも使えるから高いんだよ? だから、タダで捕まえられてラッキー!」
「そう……」
「たくさんあったら、料理に使ってもいいけどねー」
「っえ……あ、っね!」
ラーナの返答一つ一つがリリの斜め上を行く。
当り前であるかのように言うので、唖然として言い返すことが出来なかった。
(お金があったら、毒を調味料に使うのね……やっぱり猛者だわ)
「ちなみに、ラーナさんはどんな調味料を持ち歩いてるんですか?」
「長持ちして匂いが強いものかなぁ? あとは辛いの!」
「へぇー、見てもいい?」
(異世界の調味料は興味あるわ、何が出てくるんだろ?)
キエェエエエェー!
目の前から響く聞くのに堪えない音。
対してリリは声どころか息も止まる、本当に恐怖を覚えたときは、声など上がらないらしい。
(んんーーー!!)
目をつぶっているので、何が起こったのかは分からない。
しかし音から察するに、何かが起こったのは確かだ、直ぐにでも確認をしたいが、恐怖で瞼が上がってくれない。
(コワイ、コワイ、コワイ、コワイ)
リリは身動ぎ一つせず心と頭が落ち着くのを待ってから、恐る恐る目を開けた。
「……………ヒィィッ!?」
悲鳴を上げたリリの目の前ではサソリが暴れていた、落ち着けたはずの心臓は高鳴り、頭はまた暴走を始める。
(ぢがいぃー、近いよぉー、だから近いってば!!)
暴れるサソリの、ハサミと尻尾がリリの鼻先をかすめる。
その度に、足元に生じる震えが背骨を伝い頭のてっぺんまで震えさせる。
背筋が凍るとは正にこの事を言うのだろう。
「近づいて、こ、こ、こない……なんで?」
激しく動くサソリだが、その場で腕と尻尾を振っているのみで、近づいても離れてもいかない、よく見るとおっきな針が二本見える。
(串刺しにされて、る?)
現状がわかり、少しだけ落ち着いたリリ。
目の前のサソリはまだ、キシャア、キシャアと鳴きながら暴れているので、安心はできない。
頭上から聞こえる声は緊迫感どころか、むしろ笑うのをこらえているみたいだ。
「リ、リリ、大丈夫?」
「っえ、えーっと、っあ、っはい……た、多分……」
ドギマギと答えるリリに、ラーナはついにこらえきれず、ケラケラと笑いだした。
何事も無かったかのように話しかけられたリリは、ラーナの姿に呆気に取られてしまったのか、ぼんやりと立ち尽くす。
「た、た、ただのサソリに、慌てすぎ、だよー」
ラーナはまだ笑いながらもサソリをつまみ上げ、観察をするとっあ! っと声を上げた。
「っあ! この子、毒持ち! 当たりじゃん、やったねー」
混乱した頭、いやっ恐らくは冷静な時であってもリリにはラーナの言っている意味が分からなかったであろう。
毒があることを喜ぶ少女がそこにいた。
(毒まであったの? っえ? つえ? えぇえ!?)
リリは慌てふためき、自分の身体を隅々まで確認する。
横でラーナはサソリの尻尾の先だけをポキッと折り、マントの中から出した瓶に入れていた。
(傷はない、よかったぁーー、あのサソリ、毒があるならあるって言っと言ってよね!)
一通り確認したリリは、良く分からないキレ方をしていた。
「っあ、ありがとうございます」
「全然いいよー、気にしないで」
「ところで当たりって、どういう事?」
「このサソリはね、全身食べられるんだよ」
「えぇ!! あんなでっかいサソリを!? あり得なくない?」
ビックリしたリリは大声で聞く。
対してラーナは相変わらずの緩さで答える。
「リリには、おっきく見えるかもね」
「見えたわよ! 生きた心地がしなかったわ!」
「飛べばよかったのに」
「飛べなかったの! しょうがないじゃない! ちなみにラーナさん原因って分かる?」
疑問を呈したリリに、ラーナはあっさりと答えた。
「さぁ? 知らなーい」
「っま、そりゃそうよね」
「まぁ怪我も無さそうだし、そのうち飛べるんじゃない?」
「それもそっかー」
二人ともリリが飛べないことについては、大して気にしていない。
実にあっさりとした対応だ。
「少しだけど食べ物も見つかったし、結果としては良かったわ」
「うん、リリはすごいねー、尻尾の毒は美味しいし、ラッキーだよ」
「っえ!? 毒を食べるの? わたしがラッキーガールなのは認めるけど、厳しくない?」
(ご飯の無いこの状況じゃ、ラッキーと言えばそうなの……かな?)
「食べるよー、ボクっていろいろな毒の耐性を持ってるからね」
「……えぇえ!」
(毒耐性のスキル? そんなものがあるの? わたしもほーしーいー!)
「致死量にさえ気をつければ、大抵の毒は食べられるよ? サソリの毒は唐辛子みたいにピリピリしてて美味しいんだよねー、リリもどう?」
「イヤ、ケッコウデス……」
(純粋な目でそう言われると、少しは食べてみたいという気分になってしま……ならないわね、全く! 一切! 全然!)
スキルや特殊能力的なものの断片を見つけ、リリは興味を覚えたが、ラーナもう一つ、聞き捨てならないことを言っている。
(ちょっと待って? 毒と薬は紙一重とも言うけど……ラーナさんの言うことがこの世界のスタンダードだとしたら)
リリはラーナに恐る恐る聞いた。
「ちなみに、ラーナさんは普段の料理の調味料とか、薬とかはどうしてるの?」
「調味料? 味のことだよね、塩とかハーブとかかな? 薬は高いから自力で治す」
(自力ってなかなかハードね……猛者だわ)
「もしかして、ハーブの中には毒物も含まれてたりする?」
「リリは面白いことを言うね」
「でっしょー!」
「そんなわけ無いじゃん!」
「っあ、やっぱりそうですか」
ケラケラと笑いながら答えるラーナに、リリは調味料が普通な事に少しホッとした。
(毒が入っている料理……想像するだけで怖いわ)
「使わないのね、良かったわ」
「毒は薬にもなるし暗殺にも使えるから高いんだよ? だから、タダで捕まえられてラッキー!」
「そう……」
「たくさんあったら、料理に使ってもいいけどねー」
「っえ……あ、っね!」
ラーナの返答一つ一つがリリの斜め上を行く。
当り前であるかのように言うので、唖然として言い返すことが出来なかった。
(お金があったら、毒を調味料に使うのね……やっぱり猛者だわ)
「ちなみに、ラーナさんはどんな調味料を持ち歩いてるんですか?」
「長持ちして匂いが強いものかなぁ? あとは辛いの!」
「へぇー、見てもいい?」
(異世界の調味料は興味あるわ、何が出てくるんだろ?)
0
あなたにおすすめの小説
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる