気弱な伯爵夫人に転生したアラフォー独身社畜女は、夫を退けて女伯爵になります

光子

文字の大きさ
14 / 46

14話 休暇を頂きます

 

 滞在時間およそ五分! ほんとに顔だけ見せにちょっと寄ったみたいな感じになりましたね。

「良いのですかフィオナ様!? あんな無礼な態度を許して!?」

「書類関係の報告は問題無く届いているし、今は様子を見るわ。領主の力を必要とせずとも運営出来るなんて、とっても頼りになる部下じゃない」

「それはそうかもしれませんが……」

「そうそう、私、今から休暇を取ろうと思うの」

「休暇ですか?」

「ええ、最近働き詰めで休みを取れていなかったし、いい機会だから、町をぶらぶら散策しようと思って。休暇中に町をぶらぶら探索するのは、私の自由でしょう?」

「ああ、そういうことですか」

 流石はジェームズ、すぐに私の意図に気付いたみたいね。
 名付けて、休暇と見せかけて町の様子を見て回ろう大作戦です! 何の捻りも無い作戦名だけど。

「折角だから、ジェームズもゆっくり休んで頂戴」

「お一人で町を歩かれるおつもりですか?」

「? 勿論」

 どうしてそんなことを聞くの? ――と、そう言えば私、過保護に育てられ過ぎて、一人で町を歩いたことが無いんでしたっけ。

「大丈夫よ、会社だって一人で行ったわよ」

 あの時は誰も馬車を出してくれませんでしたから、一人で早朝から散歩気分で向かいました。

「ですが……」

「お付きの者が傍にいるなんて目立ってしまうもの、一人で軽くぶらぶらするだけだし、心配しないで」

 過保護で育った私をジェームズが心配する気持ちは分かるのですが、前世でずっと一人で過ごして来た私にとって、一人で町を歩くなんて普通なんですよね。

「……はぁ、仕方ありませんね。馬車は置いていきますので、何かあったらすぐにお戻り下さい」

「ありがとうジェームズ」

 カルディアリアム領土は、良くも悪くも平凡な領土だった。
 葡萄畑が広がる土地に、帝都ほどでは無いが、そこそこ進んだ経済に文化。犯罪は比較的少なく、大きな問題が無い平和な町――そう、お父様が領主だった頃までは。
 三年前、私が十九の時にお父様が亡くなり、ローレイが領主になってからは、税を無駄に引き上げたために領民達の生活は困窮。経済や文化の発展は止まり、ローレイとキャサリンが引き寄せた友人達が中心になって、横領や賄賂、一般の領民達に対する横暴な振る舞いが目立つようになった。
 このままでは腐敗の道を辿るしか無かったこの地を守ってくれていたのが、イリアーナ達、役所で働く職員だ。
 彼女達からすれば、今まで夫に好き勝手させておいたクセに、今更しゃしゃり出てきて何様のつもり? と思われるのも仕方がない。しかも、彼女達の知る私は、何も出来ない気弱な箱入り娘だしね。



「はいよ、お嬢ちゃん、出来たてのパン一つだ! 温かいうちに食べてよ!」

「ありがとう」

 以前、会社に行く途中にも立ち寄ったパン屋で、今日も出来立てのパンを購入する。
 ここのパン、とっっっっても美味しかったんですよね! だからまた食べたいって、ずっと思っていたの。

「お嬢ちゃん、前もパン買ってくれた子だよな」

「あら、私のことを覚えてくれているの?」

「まぁな! 前来た時も思ったけど、あんた、あの箱入り娘のフィオナ様にそっくりだな! ま、別人だってのはすぐ分かったけどよ」

「あら、何故別人だと思ったの?」

「だってよ、そのお嬢様、箱入り過ぎて一人で買い物も出来ないんだぜ? そんなお嬢様がお付きもつけず一人で町でブラブラ散歩なんて出来ねーだろうし、別人に決まりだろ!」

「へーそうなのね」

 残念ながら、私がその箱入り娘のフィオナ様です。

「最近になってあの馬鹿夫から伯爵の爵位を取り戻して、カルディアリアム伯爵家の女当主になったらしいが、あんなロクでもない男からフィオナ様に領主が変わって良かったよな! ま、フィオナ様は領主として何も出来ねーだろうけど、役所の皆さんの邪魔さえせず、お飾りの領主でいてくれれば万々歳だ!」

「そうね」

「いやー半年前までは正直、もう駄目かと思ったけど、《アルヴィン》様が来てから風向きが変わったよなー」

「アルヴィン様?」

「知らねーのか? 半年前に役所に来た青年で、めっちゃ優秀でよ! ローレイ様の目をかいくぐっては、俺達のために税金を取り戻してくれたり、必要な申請を通してくれたり、領民のために頑張ってくれてるんだぜ!」

 そう言えばジェームズもそんなこと言っていましたね、優秀な新人が入ったと。成程、そのアルヴィンという方が、あの申請書を作成した人物なのね。

「頭も切れて顔も良いから、町の女は皆、アルヴィン様の虜さ! ま、イリアーナが脇をきっちりガードしてるから、誰も迂闊に近付けないがな! いやーイリアーナにもついに春が来たか! って感じだな!」

「へー、イリアーナが……」

 ちょっと意外かも、イリアーナも前世の私と同じで、男に興味が無くて仕事に一直線なタイプだと思っていたのに。そんなに格好良くて魅力的ってこと? それは気になる!

「私も会ってみたいわ」

「ここで暮らしてりゃあ、その内会えるだろうよ」

「それはとても楽しみね」

あなたにおすすめの小説

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)

との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。 今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。 ヤバいです。肝心な事を忘れて、  「林檎一切れゲットー」 なんて喜んでたなんて。 本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。 「わしはメイドじゃねえですが」 「そうね、メイドには見えないわね」  ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。 ーーーーーー タイトル改変しました。 ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

彼が愛した王女はもういない

黒猫子猫
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。 どちらも叶わない恋をした――はずだった。 ※関連作がありますが、これのみで読めます。 ※全11話です。

夫と息子に捨てられたので、全部置いて出て行きます。明日から、タオルがなくても知りません。

夢窓(ゆめまど)
恋愛
夫と息子に裏切られ、すべてを奪われた女は、何も言わずに家を出た。 「どうせ戻ってくる」 そう思っていた男たちの生活は、あっけなく崩壊する。 食事も、金も、信用も失い、 やがて男は罪に落ち、息子は孤独の中で知る。 ――母がいた日常は、当たり前ではなかった。 後悔しても、もう遅い。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

【完結】婚約破棄に感謝します。貴方のおかげで今私は幸せです

コトミ
恋愛
 もうほとんど結婚は決まっているようなものだった。これほど唐突な婚約破棄は中々ない。そのためアンナはその瞬間酷く困惑していた。婚約者であったエリックは優秀な人間であった。公爵家の次男で眉目秀麗。おまけに騎士団の次期団長を言い渡されるほど強い。そんな彼の隣には自分よりも胸が大きく、顔が整っている女性が座っている。一つ一つに品があり、瞬きをする瞬間に長い睫毛が揺れ動いた。勝てる気がしない上に、張り合う気も失せていた。エリックに何とここぞとばかりに罵られた。今まで募っていた鬱憤を晴らすように。そしてアンナは婚約者の取り合いという女の闘いから速やかにその場を退いた。その後エリックは意中の相手と結婚し侯爵となった。しかしながら次期騎士団団長という命は解かれた。アンナと婚約破棄をした途端に負け知らずだった剣の腕は衰え、誰にも勝てなくなった。