ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子

文字の大きさ
45 / 54
連載

104話 最初で最後の里帰り③

しおりを挟む
 

 クリプト伯爵家にこのまま居座るのは、お父様がお許しにならないでしょうし、エレノアはこのまま、一人で生きていかなきゃいけないの。
 誰かに命令されるのが嫌いで、働いたことも無くて、男に甘えることしか出来ない貴女が、この先一人で生きていけるのか、姉として、とっても心配よ。

「だからね、私、エレノアの姉として、貴女に、とっても素敵なプレゼントを用意してあげたの」

 私はそう言うと、昨日、メトに渡された写真と、紙切れ一枚を、エレノアに手渡した。
 あの時ーーー貴女が、私からカインを奪った日、失意の中にいる私に渡してきたのと同じように、笑顔で手渡す。

「これーーお見合い、写真ーー?!ターコイズ男爵ってーー!!」

 そう。貴女が私に用意した縁談。
 30歳年上、離婚歴3回の暴力男。そっくりそのまま、エレノアにお返しするわね。

「嫌よ!何で私が、こんな男の元に嫁がなきゃいけないのよ!?」
「あら、貴女があの時、私に用意した縁談じゃない。メトに頼み込んで、縁談を準備してもらったのよ」

 そのターコイズ男爵ですら、『そんなハズレ嫁なんかいらん!』っと、初めはエレノアとの結婚を拒んだのよ?
 でも、ルーフェス公爵家は、結婚生活について一切、関与しないし、エレノアを好きに扱って良いと伝えて、写真を見せたら、喜んで了承してくれました。可愛くて良かったですね。ターコイズ男爵ーー新しい旦那様に早速、気に入られたみたいですよ。
 あちらも、新しいお嫁さんが中々見つからなくて、困っていたみたいですしね。

「嫌ーー!嫌よ!あんな歳の離れた、きもい暴力男!あの人の元妻達、皆、酷い怪我を負ってるのよ!今も治らない!歩けない人だってーーー」

 知ってるよ。私も、あれからちゃんと、ターコイズ男爵の事を調べたもの。
 一人目の奥様は、片目を失った。二人目の奥様は、足が一生不自由になった。三人目の奥様はーーー行方が分からなくなった。
 そんな酷い男の元に、私を嫁がせようとしていたこと、私は忘れていない。

「大丈夫よ。この縁談は、もうお父様の許可も頂いてるの」
「ひっ!」

 長期視察中のお父様の所に行って、わざわざ許可をもらってきたの。お父様は二つ返事で了承して下さったそうよ。
 ターコイズ男爵の領土は、ここから遠く離れた地方。それに加えて、加害的な旦那様。これなら、易々とこちらに戻って来ることは出来なくなるし、私達にちょっかいをかける余裕も無くなるでしょう。

「再婚おめでとう、エレノア」

 私はそっと、エレノアの手を笑顔で握り締めた。

「ーー嫌っ!絶対に嫌!!何でよ?!何で私が、こんな目に合わなきゃいけないのーーー!!」

 私の手を勢い良く払い除けるエレノア。
 どうして自分が、こんな目に合わされるかが、本当に分からないの?

「……ねぇエレノア。エレノアは、私の大好きなシャインのことを、いっぱい、お話してくれたんだって?」

 その話を聞いた元・ファンファンクラン子爵は、シャインに危害を加えようとした。

「それーーは、私、シャイン様を、襲えだなんて、言ってなくて……!」
「ええ、そうよね。分かってるよ。でもね、余計なお喋りは、身を滅ぼすことにもなるのよ」

 貴女が否定しようが何だろうが、関係無い。貴女が余計なことを話した所為で、シャインの身が危険に晒された。それが事実。

「可哀想なエレノア……幸せになってね」

 幸せになれるものならね。
 貴女が私の不幸が好きなように、私も、貴女の不幸な姿が大好きよ。

 さぁ、どうぞそのまま、地獄に落ちて下さいねーーー。





「待ちなさい…!ルエル!」

 茫然自失で立ち尽くすエレノアを無視して、帰ろうとする私の足を、お母様が止めた。

 あら、珍しい。最近、私の前でも大人しくなったと思っていたのに、強気ですね。

「何か?」

 冷たく睨み返すと、お母様はビクッと体を揺らし、怯えた目を浮かべたが、勇気を振り絞るように、声を荒らげた。

「酷いわ!エレノアちゃんに、あんな最低な男との縁談を持ち掛けるなんてーー!撤回して頂戴!」

 私の時は、一切、何も言わなかったくせに。

「これはお父様ーークリプト伯爵もお認めになられた事です。お母様に指示される言われはございません」

「だからっ!お前が夫に話をつけなさい!ーーお願いよ!私から、エレノアちゃんを奪わないで!」

 傍若無人な昔のお母様はどこへやら。私に縋るようにまとわりつくお母様の姿は、弱々しくて、情けないですね。

「エレノアちゃんを許してくれたら、ちゃんと貴女も、私の娘として認めるわ!ね?優しくしてあげるからーー!」
「……」

 幼い頃ーーー幼い私は、何度、お母様の愛を求めただろう。何度も何度も手を伸ばした。その度に、手を払い除けられた。
 母親の愛を求めていた幼い子供は、もういないの。

「私の方が、貴女を母親だとは認めませんーーー私に、母親はいません」

 私の拒絶の言葉に、お母様は衝撃を受けたように、固まった。

「う、嘘でしょう?だって貴女、いつも、私が好きだって言ってたじゃないーー!」
「いつの話をしてるんですか?私はもう、子供じゃないんですよ」

 昔、私がお母様にされていたように、今度は私が、縋るお母様の手を払い除ける。

「便宜上、お母様とはお呼びしますが、私をお母様の娘だとは、もう思わないで下さい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。