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13話 リアン皇帝陛下
◇◇◇◇◇
ダイヤル公爵様を追い返し、私がレックナード様の言語能力者として使えることになったと伝えると、お父様もお母様もウェイドも、喜んで賛成して下さいました。
私の家族はとても家族想いの優しい人達なのです。だから私がここに残ることを望まなければ、自分達がここに残りたいと思っていても、口に出さなかったでしょう。安堵したような、喜んだ家族の表情を見て、私の選択は間違っていなかったと思いました。
ここで暮らすと決めてからは、お父様はクレイシス公爵様の専属通訳として、お母様はクレイシス公爵夫人の侍女として正式に雇われることになり、ウェイドは学校に通うことになりました。ルンドリアン帝国で暮らすには皇室の許可がいるのですが、クレイシス公爵様のお言葉添えもあり問題なく許可を頂くことが出来て、ホッとしております。
「カナリア、明日リアン陛下が直接挨拶したいってさ」
「……何故でしょう?」
唐突なレックナード様のお言葉に、耳を疑います。
通常、ルンドリアン帝国での滞在許可書は書類選考であり、陛下との面会などないはずなのです。
先日家族揃って滞在の許可も頂きましたし、挨拶をされる必要はないはずなのですが、どうして直接私とお会いになろうと思われたのでしょう?
「まだ自分が特別な存在だと認識出来てないのか? カナリアが言語能力者だから直接会ってみたいんだろ」
「そうでした、申し訳ございません」
そうです、私は特別な力を持った言語能力者でした。あれから改めて言語能力者について調べましたが、言語能力者は数百年に一度現れるか現れないかくらい珍しい貴重な存在のようです。言語能力者の血筋にも、その力の恩恵が現れる可能性があると言うのも分かりました。私の推測は間違っておりませんでした、私の家族も、言語能力者の恩恵を受けているのでしょう。きっとレックナード様も、どこかで血筋を受け継いでおられるのでしょう。
「カナリアのおかげで、陛下から言語能力者をルンドリアン帝国のものに出来たとお褒めの言葉を頂いたよ、ありがとう」
「どういたしまして、少しでも感謝されているのでしたら、これからも私達家族を守って下さいませ」
言語能力者である私をレックナード様が利用しているように、私も、家族を守ってくれるレックナード様を利用しております。大国であるルンドリアン帝国のクレイシス公爵家の言語能力者となれば、皆様、簡単に私に手を出せなくなるはずですからね。
頭の回転の速いレックナード様のことですから、私がレックナード様を利用しているのには気付いているでしょう。私の意図に気付いたレックナード様は、それはそれは楽しそうに微笑んでいらっしゃいました。
「守ってあげるよ、君が俺のものである限りね」
挑発しているおつもりですか? 上等です。一生レックナード様の物になってあげますから、死んでも家族は守ってもらいますからね。
――レックナード様の言語能力者になったといって私の生活にさほど変化なく、ただ古代語の解読に当たっていた時間が、外国語を学びたいと希望する方々に言葉を教える時間に変化したくらいで、私がルンドリアン帝国の外交に直接関わることはございませんでした。ルンドリアン帝国はドレスファン国と違って、私に頼らずとも外交の基盤が出来ているのでございます。
ウェイドは学校に通ううち、言語では自分が優れているとしても、他の知力で負けていることを知り、より一層勉学に励むようになりました。ルンドリアン帝国は、子供の教育から優秀なのです。そんな素晴らしい大国を支配するリアン陛下。どれほど優秀で素晴らしい方なのかと死ぬほどドキドキしていたのですが、逆の意味で度肝を抜かれるとは思いませんでした。
「主がカナリア、言語能力者か! ようこそ我が国へ、歓迎するぞ! ああ、ワシはルンドリアン帝国語しか話せんので、それでよろしく頼むぞ!」
謁見の間にて、豪快に口を大きく開けて笑うリアン皇帝陛下。
なんて気さくな皇帝! ここには私とレックナード様以外にもクレイシス公爵様とお父様がいらっしゃいますが、専属通訳としてクレイシス公爵様の傍で働いているお父様はリアン陛下と面識があるからか平然とされていますが、私は反応に困ります!
「……承知致しました」
無難にこれしかお返し出来ません。え? 喋れないのですか? 他のどの言葉も?
他国との繋がりが強いこの世界では、他国の言葉を覚えておくのは皇族・貴族としては必須です。いえ、最低限の公共語であるルンドリアン帝国語が話せれば良いのでしょうか? 別にリアン陛下が喋れようが喋れまいが私には関係ないのですが、大国であるルンドリアン帝国の皇帝陛下だからこそ、驚きです! 戸惑いを表情に現わしていない私を全力で褒めて頂きたいくらいです!
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