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14話 リアン陛下との謁見中
「遠慮しなくていいよカナリア、このおっさん、母国語以外話せないポンコツだから」
「相変わらず手厳しいなぁレックナード! 大丈夫だ! 我が国には立派な通訳者が沢山いるのでな!」
「見て分かる通り、ポンコツだが人を使うのが上手い人間だ。器もデカイ、人を育てることにも優れていて、一応は問題なく皇帝陛下をしている」
「いやー可愛い甥にそう褒められると照れるなぁ」
褒められていますか? 貶されてもいるとも思いますが……
失礼ですが、拍子抜けしております。レックナード様はポンコツと言いつつもリアン陛下をお認めになられているようですが、とてもそのような立派な方には見えません。
「ドレスファン国でのミンティア子爵家の扱いは聞いている。安心しろ、我が国では貴重な存在に対しそのような酷い扱いはしないし、他国からも守ってやろう」
「ありがとうございます、リアン陛下」
「但し、その力に見合った働きは期待している」
「具体的に何をすれば、陛下のご期待に応えられるでしょうか? ドレスファン国では外交の全てを行っておりました。どの国にも対応出来ますので、何なりとお申し付けください」
「アッハッハッハ! 真面目だなぁカナリアは!」
「……恐れ入ります」
国によって違いはあると理解しておりましたが、ドレスファン国とは謁見の空気が違い過ぎて大変困惑しております。ドレスファン国では国王陛下に対して少しでも無礼な口を利こうものなら、最悪牢獄行きでした。こんなに軽い雰囲気の謁見なんてこの世に存在するのですね。
「そうだな、今度新しく交流を持つことになった国があるのだが、そこの国の言語を我が国の者に教えてやって欲しい」
「かしこまりました」
その程度、言語能力者である私には容易なことです。ですが――
「私を直接外交に使おうとは思われないのですか?」
自分で言うのもなんですが、私一人いれば全ての国との対話が出来るというのに。
「それではカナリアに依存してしまう。一人に依存してしまっては、国は成り立たないだろう? その知識を他に与えるのも重要な役目だ。まぁそうだな……では、今度開かれる親睦パーティーにクレイシス公爵家にも出席してもらうつもりでいるが、念のためにカナリアも一緒に参加してもらおうか」
「私はレックナード様の言語能力者です。レックナード様が参加されるのならば当然参加致します」
……新しい国との交流だというのに、言語能力者である私に頼り切ることはなさらない。
前言撤回致しましょう。国を治めるにおいて興味深いお考えと行動です。そのような思考、ドレスファン国では誰も思いつきもしないでしょう。
「今はカナリアの父親もクレイシス公爵の通訳として仕えてくれているからな、優秀な男でとても助かっているぞ」
「……父を褒めて頂き、ありがとうございます」
「うむ。クレイシス公爵、レックナード、引き続きカナリア含むミンティア一家の面倒を頼むぞ」
「かしこまりました、兄上」
「かしこまりました、陛下」
リアン陛下の言葉に頭を下げ了承を伝えるクレイシス公爵様とレックナード様。
クレイシス公爵様の隣にいるお父様を見ると、安心しきっているような顔をされておりました。お父様は早い段階からクレイシス公爵様と一緒に仕事をされ、リアン陛下とも何度もお会いしているはずです。ドレスファン国にいた時のお父様はいつも疲労の溜まった不満げな顔をされておりましたが、そのお父様がこのような顔をされているということは、きっと大丈夫なのでしょう。
昔と比べて生き生きと仕事をされているお父様の姿が見れるのは、とても嬉しく思います。
私の家族は優秀なのです、評価されて当然の人達なのです。ですが、ドレスファン国では誰も私達家族を評価して下さいませんでした。こうしてお父様が正当な評価を受けることが、自分が褒められた時よりも嬉しいのです。
「――陛下との謁見はどうだった?」
別にお仕事のあるクレイシス公爵様とお父様を残しクレイシス公爵邸へ戻る途中、何が面白いのかニヤニヤしながら尋ねてこられるレックナード様。今だけではございません、謁見中も、リアン陛下が私の予想外の人物だと知っていて、反応を楽しまれていましたものね。
「色々な意味で衝撃でしたが、最終的には好意的に受け止めております。最初は皇帝陛下なのに外国語を一つも話せないのかと拍子抜けしておりましたが」
「正直だね」
「リアン陛下は、お仕えしようと思えるようなお方でした」
ドレスファン国の国王陛下とは全く違う感情です。あのお方は、私達を無理矢理王命で従わせ、奴隷のように扱っておられました。一度も、お仕えしようと思ったことがございません。
「なら良かった。でもカナリアは俺の言語能力者なのだから、そこは忘れないように」
「念を押されなくても重々承知しております」
私がリアン陛下の役に立てば、それは直接レックナード様の評価にも繋がりますものね。守って頂く分の対価はお支払いしなくてはなりません、どうぞ、私を利用して下さいませ。
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