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15話 親睦パーティー
◇◇◇
――――本日は、ルンドリアン帝国が《イグザレクト国》のために開いた親睦パーティーの日でございます。
ルンドリアン帝国が新しく交流する国は、現在まで閉鎖的で他国との交流を拒んでいた国でございまして、国の名前はイグザレクト国。新しく代替わりした王により、他国との交流を始めたばかりの国です。
言語はあちらがルンドリアン帝国語を学ばれており、今後、様々な国と貿易の取引をしていくようですが、まだ完全に意志疎通がとれるわけではなく、中々思うように取引が進まないのが現状であるとのことでした。
「《初めましてイグザレクト国の皆様、私はカナリア=ミンティア、クレイシス公爵家レックナード様にお仕えする言語能力者でございます》」
「《貴女、イグザレクト国の言葉が喋れるの!? 救世主よ!》」
私もレックナード様の通訳者としてパーティーに参加しイグザレクト国の方と挨拶を交わしましたが、涙ながらに救世主と称えられることになりました。どうやら自分達の伝えたいことが上手く伝わらず気落ちしていたところ、意志疎通出来る私を見付け歓喜したようです。
「《だって私達の国、最近まで全く他国と交流してこなかったのよ!? それをいきなりルンドリアン帝国語を学べと言われて、教えてくれる人だってちゃんといないのに、そんなの無理よ! 上手く交流なんて出来るワケないじゃない!》」
「《ええ、ええ、その通りですね。心中お察し致します》」
泣きじゃくって愚痴を吐くイグザレクト国の外交官のお話をうんうんと頷きながらお伺いする。お気持ち分かりますわ、自分は何もしないのに無茶ぶりをするロクでもない王様っていますよねぇ。
「《今、ルンドリアン帝国ではイグザレクト国の言葉を学んでいる最中でございます。もう少し学び終えましたら、今度はそちらで公共語であるルンドリアン帝国語を教えるために来訪する準備を進めておりますので、それまでお待ち下さい》」
「《本当にありがとうカナリア! 私達の国の言葉をこんなに簡単に話せるなんて、言語能力者って凄いのね!》」
「《恐れ入ります》」
きちんとした教師もいない中、ここまで言葉を話されるようなになったイグザレクト国の皆様なら、環境が整えば問題なく言葉を覚えることが出来るでしょう。
「……クレイシス公爵家が言語能力者を保有したという話は本当だったんだな」
「ああ、さっきは私の国の言葉で挨拶されたよ」
「凄い力だ、彼女の力さえあればどんな国とも対話が可能になるぞ」
閉鎖されていた国の言葉を流暢に話す私の姿は、このパーティーに参加した多くの国に衝撃を与えたようです。それだけではありません、私は、私に声をかける全ての人に、その国のお言葉で返事を致しました。
言語能力者として目立つように振る舞え、これらは全て、レックナード様の指示でございます。
「上手くいってるみたいだね、カナリア」
「はい、問題ありません」
「今回の親睦パーティーはイグザレクト国のお披露目も兼ねて各国を招待している。これで、君がクレイシス公爵家の言語能力者であることが各国に伝わっただろう」
あえて目立たせ改めて自分のものだと示す。
そうすることで、私に手を出させないよう牽制する思惑がおありのようです。そしてそれと同時に、言語能力者を保有していると見せつけ、クレイシス公爵家の価値を上げることが出来る――抜け目のないお方ですねぇ。
「レックナード様、一曲踊って頂けませんか?」
「ええ、喜んで」
女性からのお誘いを笑顔で受けられるレックナード様。さっきから女性のお誘いが絶えませんね。何度レックナード様が踊られている姿を見たことでしょう。
レックナード様がダンスを踊っている間、私は特にすることはありません。ただ、終わるのを待つだけでございます。以前と違い今の私は貴族ではありませんし、王太子の婚約者でもありません。レックナード様の言語能力者として通訳で参加しているだけなので、私が踊ることは出来ないのです。まぁ、ヤロン様の婚約者として参加していた時も踊ったことなんて一度もありませんけどね。
ヤロン様の婚約者として参加したはずなのに、食事をとることも誰かと会話をすることも許されない、ヤロン様の影として空気のように過ごす苦行のパーティーでしたから。
「カナリア、お疲れではないですか?」
「クレイシス公爵様」
クレイシス公爵様は、レックナード様のお父様であり、私達家族がお世話になっている家のご当主でございます。
「息子が無理を言っていませんか? あの子は優秀な子なのですが、いかんせん、強引なところがありまして……」
そうですね、暗殺者に命を狙われているのを利用して逆に捕まえたり、権力を使って私をこの家に連れて来たりしますものね。
「お気遣いありがとうございますクレイシス公爵様。大丈夫ですので、ご心配なさらないで下さい」
「そうか、それなら良かった。ミンティア――君の父上にはとてもお世話になっているから、娘になにかあれば申し訳がありません」
たとえ無理を言われても、私がクレイシス公爵様に文句を言うことはありません。クレイシス公爵様はお父様をとても大切にして下さっていますもの。心より感謝しているのです。
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