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17話 もう国にお帰り下さい
こういったパーティーには進んで参加されるヤロン様が不参加だなんて、本当に体調が優れないのですね。お可哀想に、早く体調が良くなることを心よりお祈り致します。そしてどうぞ、他国との交流のある場に出て来て下さいませ。
私の力を借りないヤロン様がどのように振る舞われるか、とても見物ですもの。
「カナリアったら、まだヤロン様に未練があるのねぇ」
「あ、それは絶対にないですのでご安心下さいませぇ」
最初から好意そのものの感情がありませんでしたので、未練なんて感情は存在致しません。
「はい、また強がりね! 可哀想なカナリアー! なんか益々哀れになってきちゃうわ!」
キラリリア様はどこかに意思疎通の技術を忘れてきてしまったのでしょうか? いつかどこかで発見されればいいのですけど。
「ねぇカナリア、正装もさせてもらえないってことは、あんた、平民でただの使用人でしょ?」
「はい、そうですね。私はクレイシス公爵家レック――」
「ああ、自己紹介なんていらないわよ! どんな肩書だろうと、使用人には間違いないんだし!」
「さようでございますか」
「ルンドリアン帝国の使用人なら、客人の命令は聞かなきゃねぇ」
「……はぁ」
正確には、今日のパーティーはルンドリアン帝国の皇室が主催したものであって、招待されたクレイシス公爵家に仕えている私は関係ないものなのですが、キラリリア様の言い方だと、ここで私が断ったら他の方が犠牲になってしまう気が致します。本当に面倒臭い方ですねぇ。
「ご要望を仰って下さい、内容によっては考えさせて頂きます」
「じゃあ、私の靴を舐めなさい」
「《嫌に決まってるでしょ、馬ー鹿》」
「はい? 今なんて言ったのよ?」
おっと、あまりに馬鹿らしくてつい口から荒い口調が出てしまいましたわ。ですが、言語を変えたおかげでキラリリア様には通じなかったご様子。咄嗟に言語を変えた自分を褒めてあげたいです。大体、どうして靴を舐める必要があるのですか? 舐めたところで靴が綺麗になりますか? 水道も近くにある環境なのですから、すぐそこの蛇口で水を出せばよろしいのではないでしょうか? 『靴を綺麗にしてこい』だけなら、まだ叶えて差しあげましたのに。
「お断り致しますし、決して、他の使用人にもそのような命令はされないで下さい」
「平民に断る権利なんてあると思ってんの? 私はヤロン様の婚約者! ドレスファン国の未来の王太子妃なのよ!」
……誰でしょうか、キラリリア様を王太子妃にしようとしている馬鹿は。こんなのを国の外に出すその神経を疑いますわ。仕方ありません、本当は何も言いたくないのですが、ドレスファン国の平穏を祈る者として、一つ助言して差し上げましょう。
「無礼を承知で進言致しますが、キラリリア様はドレスファン国の代表としてこのパーティーに参加しているのですよ? キラリリア様の行動がそのままドレスファン国の評価となることをお忘れなく、節度ある行動を心掛けるべきです」
「してるじゃない、こんなに綺麗に着飾って、パーティーに華を添えてあげてるんだから」
「…………そうですか」
何を言っても無駄でしたね。さて、どうしましょう。『もう国にお帰り下さい』が本音ですが、このままキラリリア様を放置するわけにはいきませんし。
――――ここでキラリリア様の情報を一つ追加しますが、キラリリア様は自分より格下だと思った相手には見下して横柄な態度を取られますが、格上だと思った相手、特に男性には、全く異なる態度を取られるお方なのです。
「こんなところにいたのか、カナリア」
「レックナード様」
令嬢とのダンスが一息ついたのか、レックナード様は私の姿を探しておられたようです。
レックナード様の言語能力者である立場の私が勝手にお傍を離れてはいけませんでしたね。ヤロン様と違いレックナード様は一人で何でもこなせる方なので、つい離れてしまいました。
別に怒っている様子でもないレックナード様は、私と一緒にいたキラリリア様の存在にもお気付きになられたようです。
「どちらのご令嬢かな? カナリアの友達?」
「いいえ、そのような事実は一切ございません」
「は、初めまして! 私、ドレスファン国から来たキラリリア=ダイヤルと申しますわ!」
「……ああ、ドレスファン国のダイヤル公爵令嬢ですか」
それで全てを察したレックナード様は完全な営業用の笑顔を浮かべ、招待客全員に言うような定型文で挨拶を交わされました。
「俺はルンドリアン帝国、クレイシス公爵家長男レックナードと申します。ルンドリアン帝国へようこそダイヤル公爵令嬢、どうぞ楽しまれていって下さい」
「クレイシス公爵令息……!」
キラキラと輝かしい目でレックナード様を見つめられるキラリリア様。その瞳はまるで恋する少女のよう。え、まさかとは思いますが、レックナード様を恋の標的にされました? ヤロン様の婚約者になったのに? まさかですよね?
どうして私がこう思うかと言うと、キラリリア様には前科がおありだからです。
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