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しおりを挟む村娘生活1ヶ月20日目ーーー。
リーシャは、自宅にマルシェを招き、10日後に開かれる祭りの準備をしていた。
テーブルに広がるのは、自分で集めた物も含め、治療の報酬として貰った、木の葉や木の実。
それらを糸を通したり、金具をつけたりして、イヤリングやネックレス、キーホルダーを作成していた。
「うん、大分上手くなったね」
マルシェは、リーシャの作ったどんぐりのイヤリングを、眼鏡をかけ、まじまじ見た後で感想を述べた。
「本当ですか?良かった…嬉しいです!」
どうしてそうなったのかは不明だが、リーシャに顔と髪には、木の葉や木の実が所々に張り付いていた。
「ああ、頑張ったね」
微笑みながら、マルシェはリーシャの顔や髪についていた木の葉や木の実を手で払った。
リーシャは、木の葉や木の実で作ったアクセサリーやキーホルダーを作って飾り、好きな物を選んで持って帰って貰う事にした。
本来はお菓子を渡すみたいなのだが、残念ながら、リーシャにはお菓子を作る技術も、買って用意するお金も無く、考え抜いたすえに、手作りのキーホルダーの作成を思い付いた。
不器用なリーシャは、これにも勿論苦戦したが、マルシェに教わりながら、頑張って毎日毎日特訓を続けた。
「喜んでくれると良いのですが…」
初めて作った、どんぐりのイヤリング。
お世辞にも、上手とは言えない出来だが、何とか、形には出来た。
「大丈夫だよ。お菓子って銘打ってるけど、要は気持ちさ。一生懸命用意したって気持ちは、村の子供達に伝わるさ」
「…はい!」
後はここからお祭りの日までの間に、全てを作り終えればお終い。
「マルシェ、作り方を教えて頂いて、ありがとうございました。お店の事もあるのに、時間を割いてしまって……」
何とか1人で作れるようになったので、今日でマルシェに教わるのはお終い。
帰り間際、リーシャは玄関で申し訳なさそうに、マルシェにお礼を伝えた。
「いーよいーよ!たまには旦那にも働かせないとね!」
肉屋を経営しているマルシェは、普段店頭でお店を切り盛りしているが、リーシャに師事するにあたって、全てを旦那に丸投げして来たらしい。
「旦那さんにも、よろしくお伝え下さい」
「ああ、伝えとくよ。可愛いリーシャのお願いなんだから、旦那も嫌とは言わなかったよ」
そう言い残し、マルシェは手を振って家を出た。
「さて、と」
時刻はまだ昼過ぎ。
今日はお祭りの制作を全てにおいて優先したので、家の事を何一つしていないし、朝ご飯も食べていない。
「お腹空きました…」
小さな食料庫の引き戸を開けてみても、中身は空。料理下手のリーシャの強い味方、食パンの姿は無い。
「山菜もお肉もありませんね」
もう1つ言うなら、お金も無い。
祭りの準備に没頭し過ぎて、全てを後回しにし過ぎたと後悔。
「取りに行くしかありませんね…」
食べるにしても、お金を稼ぐにしても、山菜を採る、もしくは、食べられる魔物を退治する為に、村から出る他無い。
「イマルにお願いしてみましょう」
1人で外に出る事は口酸っぱく止められているので、同行者が必要になる。
サクヤも魔法使いだが、まだまだ未熟で、まだ子供。
保護者がいるなら兎も角、リーシャと2人で外に出るのは、まだまだ禁止されている。
外に出て、あてもなくイマルの姿を探す。
基本、色々な所に自由気ままに出向く彼は、どこにいるのかが不明。
「困りました…」
1日くらい食事を取らなくても平気ーーーと、聖女の時なら思ったかもしれないが、今は大変お腹が空く。
体を動かすのは、とてもお腹が減る行為なのだと知った。
力が出なければ、お祭りの作成にも支障が出るので、極力避けたい。
「せーーーリーシャ」
「……ノルゼス」
声をかけられ、リーシャは振り向いた。
「本っっ当に気を付けて下さいよ?ノルゼス」
またも聖女と言いかけたノルゼスに対して、リーシャは睨みながら再度注意した。
「す、すまない。つい…」
わざとでは無さそうなので、これ以上は追求しないでおく。
はぁ。と、リーシャは1つため息を吐いた。
「ところで、リーシャは何をしているんだ?」
一旦切り替えれば、敬語も使わないし、様も付けずに話せるようになるので、そこは安心する。
「お腹が空いたので、外に出たいんです」
「外?まさかーーー食事が用意されていないのか?!」
大袈裟に驚くノルゼスに対して、リーシャはまたも、大きなため息を吐いた。
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