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39話 当て馬的モブ悪女になります③
しおりを挟む「俺を避けていたのに、どういった風の吹き回しですか?」
「避けてなんていません。今だって、フェルナンド様に会いたくて、こうして来たんです」
「寂しいから俺に構って欲しかった、と?」
「そうです。フェルナンド様が大好きだから、仕事よりも、私を優先して欲しかったんです。フェルナンド様は、私と仕事、どっちが大切なんですか?」
日本でも重めとされる痛い女の台詞を、ここぞとばかりに使う。どうです? こんな女、嫌でしょう? 離婚したくもなるでしょう?
アルルやティアの時と違い、リーゼの設定を守れている気がして、調子が出て来た。
「私に寂しい思いをさせないで下さい、ずっと、私のことを一番に考えて、優先して下さい。一日に一回、愛の言葉を囁いて下さい、私を、大切にして下さい」
フェルナンド様の目の前まで行き、彼の頬に触れながら、見つめ合うように言葉を告げる。
調子に乗って、次から次へと言葉が出て来た。
当て馬的モブ悪女になれないと不甲斐なさを感じていたけど、やれば出来る! っと、自信を取り戻しつつあった。
そしてこの後、すぐに後悔することになった――――
「成程、分かりました」
「え――」
腕を引かれ、椅子に座るフェルナンド様に跨るように、向かい合う体勢にさせられ、一気に、体温が上がる。
「な、この体勢は……」
「寂しい思いをさせてしまったみたいなので、反省しました。どうぞ思う存分、俺を堪能して下さい」
「無――」
無理に決まってる。つい最近まで男性経験が無かった私に、何が出来ると?
でも、ここで無理と言ってしまうのは、リーゼじゃない! リーゼなら喜んで、フェルナンド様と触れ合うはず!
「……っ」
恐る恐る、ゆっくりと唇を近付けると、慣れない口付けを、自分からした。
「……どうしました? もう終わりですか?」
「いえ、まだ……です、けど」
促されるまま、何度も触れるだけの口付けを変わすけど、それだけ。これ以上は、無理。もう、限界。
(やっぱり無理! もう帰る!)
そう思って体を離そうとしたら、首筋に手を回され、強い力で抑えられた。
「んっーーっ!? んっ!」
そのまま首筋を抑えられ、離れられない。さっきまでとは違う、深い口付けに、空気が足りなくて、眩暈がする。
「っぅ、やっ……!」
「……良かったですね、仕事中で。これで解放してあげますよ」
唇を離されたことに安堵して、息を吐く。
(た、助かった)
「これからは寂しい思いをさせないように、定期的に、貴女の部屋に行きますね」
(悪化した――!)
自分がする全ての行動が上手くいかなくて、絶望するしかなかった。
◇◇◇
「……リーゼは、何がしたかったのかな?」
数日後、モンセラット伯爵邸の自室にて、再度、ジークを呼び出して相談する私。
「分かんない、何で? こんなはずじゃなかったのに!」
ジークと向かい合って席についた私は、思わず、机に手の平を叩きつけた。
「もう諦めた方が良いといいと思うよ」
「駄目よ、諦めたら、小説通りに修正出来ないじゃない」
感情が高ぶっている私に対し、温度差があるジークは、モンセラット伯爵家の侍女が持って来てくれたお茶を、笑顔でお礼を伝え、受け取った。フェルナンド様とは違う、人懐っこい優しい笑顔に侍女が頬を赤らめていたけど、やっぱりジークも女性に人気があるんだな、と、再確認した。
「暫くここには、誰も近寄らせないでね」
「か、かしこまりました」
正反対に、私には怯えた反応。
転生前のリーゼはモンセラット伯爵邸でも我儘放題だったから、未だに怯えられているんですよね。グリフィン公爵邸とは違ってたまにしか帰って来ないし、払拭する機会が無い。
「また人払い?」
「話の内容を聞かれたら困るもの」
フェルナンド様のこともだけど、転生のことも小説のこともジークには話したから、ぴか一で相談しやすくなった。いや、それはそれとして、今は私のこと!
「どうやったら、フェルナンド様と離婚出来ると思う?」
フェルナンド様とティアの幸せのためにも、私達は離婚しなきゃいけない。その為に、元のリーゼに戻って、フェルナンド様とに離婚を突き付けられようとしたのに、全く上手くいかない!
「転生する前のリーゼの話は聞いたけど、今の君は、元のリーゼに戻れないと思うよ?」
「も、戻れるよ」
「じゃあ、アルルやティアを虐められた?」
「それは……無理、だったけど」
「フェルナンド様にまた迫れる? 返り討ちに合ったりしない?」
「うっ」
痛いところを的確に突いてくるジーク。そうです、全ての作戦はことごとく失敗しました。
「と、兎に角、私達は離婚します!」
「どうやって?」
「えーーっと、あ、そうだ! フェルナンド様って、世間体を気にして、私が浮気するのを嫌がってたよね? だから、私とジークが浮気しちゃえば――」
「リーゼは僕に死んで欲しいの?」
「死!?」
物騒な言葉が飛び出して来たことに驚きつつも、そんな選択肢は初めからない。
他に何も思い浮かばなくて言葉にしたけど、ジークに不貞を働かせるなんて出来ないし、そもそも私も、不貞行為を働くのは嫌だもの。
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