離婚しましょう、私達

光子

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40話 当て馬的モブ悪女になります④

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「はぁ、どうしようかな」

 何も良い案が出て来なくて、早々に手詰まり。
 大きくため息を吐いていたら、急に、目の前にいたジークが慌てたように、椅子から立ち上がった。

 不思議に思ったけど、その理由は、閉まっていた扉が開いた音で、すぐに分かった。

「何を悩んでいるんですか? リーゼ」

 嫌でも聞き慣れた、冷たい声。

「フェ、フェルナンド様!?」

 部屋の扉の前、腕を組みながら、笑みを浮かべているフェルナンド様。いや、笑ってるけど、目の奥が笑ってない! 怖い!

(何で!? どうしてここに!? ここはモンセラット伯爵邸の私の部屋で、フェルナンド様がここにいるはずがないのに!)

「モンセラット伯爵に用があって、お邪魔したんです。そうしたら、リーゼが部屋で男と密会していると教えてくれたんですよ」

(お父様――! フェルナンド様にチクりましたね!?)

 きっと、フェルナンド様が言うような悪意のある伝え方はしていないだろうけど、率直に、娘がジークと部屋で内緒話をしている、とでも、伝えたのでしょう。

「わざわざ部屋で二人っきりになって、何の話をしていたんですか? 俺にも教えて下さい」
「えーーっと、密会とかじゃなくて、ただ、お友達とたわいのない話をしていただけですよ?」

 貴方と離婚がしたくて、相談にのってもらってたんです。なんて、言えるワケありません!

「密室で? わざわざ人払いまでして?」
「それ、は、えーーっと」

 私が誰と何してようと興味無いって言っていたのは、どこに行ったんですか!?

「……フェルナンド様、夫人と軽々しく二人っきりになってしまい、申し訳ありませんでした。ですが誓って、僕はリーゼに指一本触れていません」

 私がフェルナンド様に詰められているのを見ていたジークは、膝を地面につけ、頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
 うう、またジークに謝らせてしまった……! ジーク、何も悪くないのに!

「大丈夫ですよ、ジーク。貴方が悪くないことは分かっています。リーゼが我儘を言ったんでしょう? リーゼは、我儘で傲慢な女性ですから」
「失礼な……!」
「気に入りませんか? てっきり、昔の貴女のような、我儘で傲慢な女性を目指していると思っていたのですが」

(バレてる!?)

「さて、俺はまだモンセラット伯爵に用があるので、これで失礼します。ジーク、妻をよろしくお願いしますね、これからも仲良くしてあげて下さい」

「はい、かしこまりました」

 本心かどうか分からない上辺だけの言葉を並べ、冷たい笑顔を浮かべるフェルナンド様。時間も無いのにわざわざ顔だけ見せに来るなんて、何の嫌がらせなの?

「ああ、リーゼ。今日、貴女の部屋に行くので、大人しく待っていて下さい」
「え……ええっと?」
「寂しい思いをさせないように、定期的に、貴女の部屋に行くと伝えたでしょう?」
「! それ、は――」
「拒んだりしませんよね? 貴女が、望んだことなんですから」

 そう言われてしまえば、何も言えない。

「では、また今夜」

 髪を撫でられ、耳に優しく聞こえた声に、ゾクリと反応する。

「……リーゼ、もう諦めたら? フェルナンド様からは逃げられないよ」

 フェルナンド様が部屋から出て行ったのを確認した後、顔を真っ赤にさせ体を硬直させている私に向かい、ジークは何度目かの同じ言葉を告げた。

 それでもどうしても逃げ出したくて、実家に泊まりたい、と、お願いした私を、お父様もジークも許さず、強制的にグリフィン公爵邸に帰らされた。
 そして何故かアルルには、今日の夜にフェルナンド様が部屋に来るのが分かっていたかのように、それはそれは念入りに、夜の支度をされた。

 フェルナンド様の言う通り、自分が要求してしまった手前、これ以上逃げることも拒むことも出来ず、部屋の扉を開け、彼を迎え入れた。

(駄目な方向に向かった気がする)

 そう思ったけど、もう遅い。

 その夜はまるで本当の夫婦のような甘い時間を、過ごすことになった。


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