離婚しましょう、私達

光子

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60話 辛い罰を③

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「……あは、あははははは! 本当に、人の心が無い、最低で屑な魔女ですね! 良かった、フェルナンド様の仰る通り、これで思う存分、恨みを晴らすことが出来ます」

「――え? 嫌ぁぁぁぁぁぁああああ! 痛い! 痛いいいぃぃぃぃい!」

 娼婦は持っていたナイフで、右手を貫通するように、突き刺した。突き刺された右手が、焼け焦げるように痛い。

「っ! これは何ですの!? フェルナンド様!」

 高みの見物をしているフェルナンド様に問いかけると、フェルナンド様は笑顔で、答えた。

「それは、光の魔法が込められた武器です。ティアに頼んで、用意しました」
「ティア様の……!」

 そう言ってフェルナンド様は、この部屋にあったタンスに手をかけ、扉を開いた。
 この部屋にある大きなタンスには気付いていたけど、足枷で繋がれた私は手が届かなかったし、気配から嫌な感じがしていて、触る気も無かった。

「光の力が施されているので、闇の魔女である貴女では、触れるだけで強い痛みが走るでしょうね」
「――っ」

 中に入っていた大量にある武器の数に、言葉を失った。

「ティアに力を封印され、闇の魔法を使えなくなったとしても、まだ貴女には一つだけ、不老不死の力だけは、残してあげました」
「不老……不死……」
「ええ、ここに貴女を閉じ込めて長く放置しましたけど、餓死で死ぬこともなかったですし、殴られてもナイフで傷付けられても、死ぬことはありませんので、安心して下さい」
「ま、待って……」

 告げられた内容を理解するのに、思考が追い付かない。
 不老不死の力だけ、わざと残した? 武器が用意された薄暗い密室、私を恨む人間達――――どういうことなんですの? 私に、何をしようとしているんですの?

「そんなに深く考えなくても結構ですよ、貴女はただ、犯した罪の分、その身に背負うだけですから」
「犯した罪……って」
「貴女に会いたいと希望する人達が、まだまだ山のようにいるんですよ。貴女に家族を奪われた者、友人に裏切られた者、愛する娘を襲われた者。ああ、貴女に操られて人生を滅茶苦茶にされた人もいますね。後は、土地を汚染されて苦しんだ人々もでしょうか」
「ひっ、嫌……!」

 これから先に起こる事象が思い浮かんで、血の気が引いた。

「貴女はまた、今回も封印されて終わりだと思っていたようですが、今回の聖女であるティアは、貴女から力だけを奪ったりすることが出来るような、とても強い力を持った素晴らしい聖女でした」

「あ……あ」

「これで本当にお終いにしましょう。ですが、最後に、ご自身の罪は償っていって下さい。死ぬほど辛い苦痛を与えることを、俺の妻も望んでいましたから」

「待って……! 待って下さいませ! フェルナンド様!」

 立ち去ろうとするフェルナンド様の背中を、左手を伸ばして縋る。だけどその手は、娼婦の女によって、阻まれた。

「嫌ぁあ! 痛い! 痛いいいぃぃぃぃい!」

 両手ともナイフで突き刺され、強い痛みが走る。

 どうして私がこんな目に合わないといけないんですの!? 私は闇の魔女で、特別で、ただ、自分に都合のいい、優しい世界を作ろうとしていただけですのに!

「では、貴女が全ての罪を償い終えたら、不老不死の力を奪って楽にして差し上げますから、それまでは精々、苦しんで下さい」
「嫌っ! フェルナンド様、お願いですわ! 謝りますから!」

 この私が、これだけお願いして謝っているのに、フェルナンド様は見向きもしなかった。

 閉じられた頑丈な扉に、長い時を生きて初めて、絶望を感じた。

 部屋の中、残されたのは、私と、キナイナの妹と父親。
 娼婦の女は、また新しい武器を取り出すと、狂気の目を向けながら、一歩ずつ、私に近付いた。

「貴女に操られ、死んでしまった姉の分、苦しんで下さい。愛していた婚約者の分……苦しんで! 許さない! 苦しめ! 家族を滅茶苦茶にした責任を取れぇぇ!」

「嫌ぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」


 ――――それから、闇の魔女は一度も牢獄から出ることなく、その生涯を閉じた。
 最後に見た闇の魔女の姿は抜け殻同然で、以前とは見る影も無く、やっと楽になれる、早く殺して、と、抵抗もしなかった。


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