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GKBRロックンロール
12:わがたつそまに
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深夜。物音、プレハブ内。
私が感じた違和を連慈も感じたのか目を覚まし起き上がった。
足音、プレハブのドアが開き人影が一つ。
連慈はギョッとする。
私も同様であった。
その人影は、豊明である。
「こんな時間に、なんでそんな所にいるんですかい?」
連慈は反射的に携帯の電源を押す。
示される時間は、深夜のど真ん中の時間。
キョロついていた豊明は、わずかに顔をしかめたが、ちょうど良い、と言うと、我々の疑問を無視し連慈に向かって問う。
「あいつはどこだ?」
「あいつ? 絵瑠と編花なら中ですぜ…… 見たと思いますが。灯さんでしたら、地下じゃないですか?」
「いや、そいつらじゃない」
「あー、遊人のことですかい? 遊人でしたら……」
「上野だ」
私の助け舟に、そこだ、と連慈は手を打つ。
「どうやって行けばいい?」
「……はぁ?」
ありえない疑問に対し、今度は連慈が顔をしかめる。
しかし、豊明もまた本気なのか、答えを待っている。
「この時間だと…… タクシー捕まえた方が早いと思いますが……」
豊明は、ふむ。と唸り、そうする。というとその場を後にした。
「なんだったんだ?」
「わからん。豊明もたまにわけわからんことをするからな」
連慈は、そうだな。とクツクツと笑うと大あくびをし、寝袋の上に横になる。
そのまま、数十分、あるいはもう少し経ったろうか。
連慈は、ガバッと起き上がる。
「やっぱ、おかしいだろ!」
その声に私の意識も明瞭となる。
私達は、ずっとここにいたのだ。
豊明がプレハブに入った記憶などない。
プレハブの中には、絵瑠と編花しかいないはずなのだ。
同様の思考だったのか、連慈は枕元の円匙を片手にプレハブに駆け込む。
中では、絵瑠もまた、顔を青くしていた。
「編花ちゃんがいないわ!」
「落ち着け! 豊明先生を見たか?」
「いえ、なぜか灯さんがいたんだけど」
「くっそ! なにがどうなってやがる!」
「とりあえず、灯と豊明に連絡したらどうだ?」
私の提案に二人はすぐさま電話を取り出す。
「灯さん? さっきプレハブにいました? ……そうですか。いえ、編花ちゃんがいないんです! はい、今そちらに向かいます」
「豊明先生か? さっき研究所に…… そうですか。すいません。はい、編花が消えました。わかりました」
二人は向かい合うとお互いに首を振る。
「とりあえず、ロビーで灯さんが待ってるわ」
緑色した非常口を示す電灯の傍を抜けると、自動ドア付近に警備員の斎藤と薄い紺のナイトウェアを着た灯が立っていた。
「斎藤さんも、あなた達と同じこと言ってるわ。私が、外に出て行ったと。私が出られるはずないのに」
それについて、斎藤はとにかく頭を下げて謝り倒している。
「誘拐ですかいね?」
連慈の疑問に灯が首を振る。
「いえ、ありえないわ。研究所に侵入者がいれば気づくから」
それについては私も概ね同意だ。
灯と私に気づかれずあの部屋に侵入するのは不可能であろう。
「なら、編花ちゃんが幻術か何かを使って勝手に出て行ったことになりますわ?」
「それについては、こちらが謝罪するわ。あの子の父は、変化の異能持ちだったのよ。とはいえ、まともな変化はできなかったらしいんだけどね。まさか、あの子が、違和感すらないほどに知人に化けられるとは思ってなかったのよ」
「違和感がなかった訳じゃないですぜ。少なくとも俺は、違和感がありましたからねぇ。ところが、それでも信じた。あの偽物を本物だと信じこんでました」
「私も。あの時私は、違和感を感じてたのに疑いは一切持たなかった……」
「灯よ、私も出くわしたから、同意見だ。考えてみろ。ただ上手に姿形を変えた所で、いないはずの人間が部屋から出てきたら流石に止める」
私の言葉に斎藤もうなずいた。
「そうね」
私の意見に、灯は少し首をひねる。
「侵入者に関してはこちらでもう少し調査するとして……」
「偽物は、俺に遊人の居場所を聞いてきましたぜ。何か気になりませんかいね?」
灯と絵瑠が、また首を捻ったときであった。
二人の思考は鳴りだした携帯によって中断される。
灯は目配せするとスマホを取り出した。
「ええ、その辺りは…… 遊人の居場所を…… そうね。二人共出すわよ。また後でかけるわ」
電話を耳から下ろすとボタンを操作する。
「二人共着替えてきなさい」
二人はお互いを見やる。
連慈は、いつも通り、奇抜なデザインのパーカーに黒いカーゴパンツを履いている。
センス抜群とまではいかないが、今すぐ出発することに問題はないであろう。
絵瑠の方もまた、戦闘向きだ。
紅色の伸縮性抜群な生地をふんだんに使用した服。
胸部は、窮屈に押し込まれ、そこには「3―2 咲上」と書かれている。
「絵瑠、いくらなんでも中学校の時のジャージじゃ行かせられないわ。ねぇ、斎藤さん」
「ええ、娘が同じ格好で寝ていたら泣くかもしれません」
「ら、楽なんだからいいじゃないですか!」
絵瑠はそういうと走りだしていた。
「全く、あの胸を持ってどこが楽なんだか。あれかしら、自慢か何かかしら」
「あれが昔は普通に着られてたんだから、成長ってのは恐ろしいもんですねぇ。ところで灯さんの成長期は」
連慈のくだらない疑問は、途中で文字通り切られた。
私が感じた違和を連慈も感じたのか目を覚まし起き上がった。
足音、プレハブのドアが開き人影が一つ。
連慈はギョッとする。
私も同様であった。
その人影は、豊明である。
「こんな時間に、なんでそんな所にいるんですかい?」
連慈は反射的に携帯の電源を押す。
示される時間は、深夜のど真ん中の時間。
キョロついていた豊明は、わずかに顔をしかめたが、ちょうど良い、と言うと、我々の疑問を無視し連慈に向かって問う。
「あいつはどこだ?」
「あいつ? 絵瑠と編花なら中ですぜ…… 見たと思いますが。灯さんでしたら、地下じゃないですか?」
「いや、そいつらじゃない」
「あー、遊人のことですかい? 遊人でしたら……」
「上野だ」
私の助け舟に、そこだ、と連慈は手を打つ。
「どうやって行けばいい?」
「……はぁ?」
ありえない疑問に対し、今度は連慈が顔をしかめる。
しかし、豊明もまた本気なのか、答えを待っている。
「この時間だと…… タクシー捕まえた方が早いと思いますが……」
豊明は、ふむ。と唸り、そうする。というとその場を後にした。
「なんだったんだ?」
「わからん。豊明もたまにわけわからんことをするからな」
連慈は、そうだな。とクツクツと笑うと大あくびをし、寝袋の上に横になる。
そのまま、数十分、あるいはもう少し経ったろうか。
連慈は、ガバッと起き上がる。
「やっぱ、おかしいだろ!」
その声に私の意識も明瞭となる。
私達は、ずっとここにいたのだ。
豊明がプレハブに入った記憶などない。
プレハブの中には、絵瑠と編花しかいないはずなのだ。
同様の思考だったのか、連慈は枕元の円匙を片手にプレハブに駆け込む。
中では、絵瑠もまた、顔を青くしていた。
「編花ちゃんがいないわ!」
「落ち着け! 豊明先生を見たか?」
「いえ、なぜか灯さんがいたんだけど」
「くっそ! なにがどうなってやがる!」
「とりあえず、灯と豊明に連絡したらどうだ?」
私の提案に二人はすぐさま電話を取り出す。
「灯さん? さっきプレハブにいました? ……そうですか。いえ、編花ちゃんがいないんです! はい、今そちらに向かいます」
「豊明先生か? さっき研究所に…… そうですか。すいません。はい、編花が消えました。わかりました」
二人は向かい合うとお互いに首を振る。
「とりあえず、ロビーで灯さんが待ってるわ」
緑色した非常口を示す電灯の傍を抜けると、自動ドア付近に警備員の斎藤と薄い紺のナイトウェアを着た灯が立っていた。
「斎藤さんも、あなた達と同じこと言ってるわ。私が、外に出て行ったと。私が出られるはずないのに」
それについて、斎藤はとにかく頭を下げて謝り倒している。
「誘拐ですかいね?」
連慈の疑問に灯が首を振る。
「いえ、ありえないわ。研究所に侵入者がいれば気づくから」
それについては私も概ね同意だ。
灯と私に気づかれずあの部屋に侵入するのは不可能であろう。
「なら、編花ちゃんが幻術か何かを使って勝手に出て行ったことになりますわ?」
「それについては、こちらが謝罪するわ。あの子の父は、変化の異能持ちだったのよ。とはいえ、まともな変化はできなかったらしいんだけどね。まさか、あの子が、違和感すらないほどに知人に化けられるとは思ってなかったのよ」
「違和感がなかった訳じゃないですぜ。少なくとも俺は、違和感がありましたからねぇ。ところが、それでも信じた。あの偽物を本物だと信じこんでました」
「私も。あの時私は、違和感を感じてたのに疑いは一切持たなかった……」
「灯よ、私も出くわしたから、同意見だ。考えてみろ。ただ上手に姿形を変えた所で、いないはずの人間が部屋から出てきたら流石に止める」
私の言葉に斎藤もうなずいた。
「そうね」
私の意見に、灯は少し首をひねる。
「侵入者に関してはこちらでもう少し調査するとして……」
「偽物は、俺に遊人の居場所を聞いてきましたぜ。何か気になりませんかいね?」
灯と絵瑠が、また首を捻ったときであった。
二人の思考は鳴りだした携帯によって中断される。
灯は目配せするとスマホを取り出した。
「ええ、その辺りは…… 遊人の居場所を…… そうね。二人共出すわよ。また後でかけるわ」
電話を耳から下ろすとボタンを操作する。
「二人共着替えてきなさい」
二人はお互いを見やる。
連慈は、いつも通り、奇抜なデザインのパーカーに黒いカーゴパンツを履いている。
センス抜群とまではいかないが、今すぐ出発することに問題はないであろう。
絵瑠の方もまた、戦闘向きだ。
紅色の伸縮性抜群な生地をふんだんに使用した服。
胸部は、窮屈に押し込まれ、そこには「3―2 咲上」と書かれている。
「絵瑠、いくらなんでも中学校の時のジャージじゃ行かせられないわ。ねぇ、斎藤さん」
「ええ、娘が同じ格好で寝ていたら泣くかもしれません」
「ら、楽なんだからいいじゃないですか!」
絵瑠はそういうと走りだしていた。
「全く、あの胸を持ってどこが楽なんだか。あれかしら、自慢か何かかしら」
「あれが昔は普通に着られてたんだから、成長ってのは恐ろしいもんですねぇ。ところで灯さんの成長期は」
連慈のくだらない疑問は、途中で文字通り切られた。
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