神からのギフトで不老不死。面倒なことはすべて消してやる。〜死から始まるムエルトの物語〜

折原彰人

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第二章

第25話 絶対優勝したい! 金金金金!!

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 誕生日から数日。エスポワール学園では、なぜか、急遽魔法大会が行われた。

 なんでも、理事長の意向らしい。

 僕は今、客席が設けられた屋外の会場に居る。僕たち生徒を囲むように観客達の視線が降り注いでいた。

 内容はシンプルで、全学園生徒200名で魔法対決。最後まで残った者の勝ち。

 ちなみに強制参加だ。

 僕は最初、面倒なので、さっさと負けて終わらせようと考えていた。しかし、優勝の品が賞金100万ゼニー(日本円で100万円くらい)と、さらに、レア物の魔導書付きだった。

 これは頑張るしかない。

 この間父さんから貰ったボーナスは、あっという間に飛んでいったし、しかも、魔導書まで付いているんだ。誰が見逃すか。

 まるで、僕のために用意されたかのようだ。

 だから、僕は絶対にこの大会で優勝することにしたのだ。

「本日はエスポワール学園の生徒達による、魔法大会にお集まり頂きありがとうごさいます! 理事長のノワン・エスポワールと申します! 是非、楽しんで行ってください! それでは、戦闘開始!」

 と、広大な広場に、理事長の声がアナウンスされた。そして、観客の歓声と共に始まる戦闘。

 ごちゃごちゃと生徒達が沢山魔法を放っていた。まあ、200人も居るんだから仕方ない。

「おらぁー!!」

 と、誰かの魔法が飛んできた。僕がそれをかわすと、奥にいた誰かに当たった。

「ムエルト! やっと、見つけたぁ! ねぇ! 賞金を山分けしない? 私を守って欲しいんだけど……!」

 人ゴミの中現れたのは、ゴミ……ではなく、クロエだった。そうほざいている。

「いや、悪いんだけどそれはできないよ。僕はどうしてもあの金が欲しいんだ!」

「いいじゃないのよ! 100万ゼニーもあるのよ? それに、ムエルトの家金持ちじゃない!」

 クロエがむくれている。そんなクロエに僕は言った。

「僕は、できるだけ楽をして金を手に入れたんだ!」

「なによそれ?」

 僕は遂には、お小遣い制度も廃止されてしまい、面倒な家の手伝いをしないと、金を貰えなくなってしまった! 

 もうそんな面倒な生活は嫌だ!

「だから、そのお願いは聞けない!」

 僕は魔法を展開した。青黒い魔力が辺りを包んでいく──。

 まず初めに、なんか文句を言っているクロエが倒れた。そして、一人、また一人と、次々と倒れていく生徒達。

 観客席からどよめきの声が上がっている。

 そして、

「終了ーー!! なんと、素晴らしい! 開始五分で優勝者が決まりました!」

 理事長の声が、会場に響いた。そして沸き起こる拍手と歓声。

「ムエルト・ヴァンオスクリタ君。表彰台へ」

 と、理事長に言われたので、僕は、金の事を想像してにやけそうになったが、その笑いを堪えて、白い台の上に向かった。

 そして、理事長が僕の前に来て笑顔で言った。

「おめでとうございます! 君なら絶対優勝すると思っていましたよ。さあ、これをどうぞ」

 と、光り輝いている輪っかみたいなのを首にかけられた。

 ──なにこれ、首輪じゃん。犬じゃないし、こんなのいらないから、金をくれよ。

 僕の首にかけられたそれは、ぴったりと僕の首を締め付けるように引き締まった。

「え? 苦しいんですけど。なんですかこれ? 優勝賞品?」

 理事長は、僕を無視して微笑んだ。

 それから、会場の観客に向き直り、

「これで、魔法大会を終わります。ムエルト君に拍手を!」

 なんて言って、犬になった僕は拍手を贈られた。

「さて、優勝賞品をあげましょうか? 私に着いてきて下さい」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 会場から離れ、僕は知らない建物へと連れてこられた。

 その間、首輪に緩く首を絞められ続けていたが、金のため、僕は大人しく理事長に着いて行った。

 そして、僕はとある部屋へと案内された。そこは、机と椅子が適当に配置された、真っ白な空間。

「理事長。苦しいので、これ外してください」

「ふふっ……ふふふふふふふふ!!!!」

 と、理事長は静かに笑い出した。

 そして、

「残念ですが、それはできません」

「は?」

「いやー、お金と本が好きだと、お兄さんから伺いましたが、ここまで上手くいくとは……。正直びっくりです」

「……」

 なにか面倒な予感はしていた。そして、先程から感じていた疑問もある。

 僕は、この首輪をはめられてから、魔力が操れなくなった。

 大金に錯乱しないようにそうされたのかな? なんて思っていたけど、どうやら違うらしい。しかし、念のため聞きたい。

「賞金は?」

「もちろん、ありません!!」

 まただ。僕って馬鹿なのかな?

「実は、ここ数日。私はお兄さんと仲良くなって、いろいろ君のことを聞いていたんです。その結果、こんな形になりました」

 そこらにあった椅子に腰掛けて、理事長は嬉しそうにそう言った。

 いつの間に兄さんと? まったく、余計なことを言ってくれたね。

「僕に何か恨みでもあるんですか?」

 僕は、そんな理事長を見下ろして尋ねた。
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